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ゆううつな柴犬

ミアは今年で六歳になる。七掛けで人間の歳になると言うから、四十二歳。

ついこの間赤ちゃんだったのにもう!四十過ぎって!早すぎないか??
犬は駆け足で歳を取る。

思いっきり人間時間で生きている私はすっかり忘れていたけど、実はミアには子供を産んで欲しいと思っていた。だから避妊手術をせずに毎年一回やってくるヒートを一緒に乗り越えてきた。

そう、普通半年に一回と言われている犬の周期、ミアは年に一回だった。

ヒート中のミアは、気分の上がり下がりが激しくなる。生理痛があるような気だるい様子だったり、クルッと丸まって一日寝て過ごしていたかと思えば、ギンギンな目をしてハッスルしたり。

ムラムラ発情してます!!ってな状態で外へ出ても、オス犬が近づくと尻尾を丸めて逃げ腰になってしまう。

そんなこんなでタイミングを逃して、あっという間に月日が経ってしまった。

人間同様、高齢出産はリスクが伴う。どうしようか迷っていた今年の春、友達の知り合いで去勢していないオスの柴犬がいたのでお見合いをさせてみることにした。


二歳年下のそのオスは、ミアを見るなり腰をギュンギュン振って飛び跳ねて迫ってきた。ヒャッホー!!って声が聞こえてきそうなくらい、高揚感が直球で伝わる喜び方だ。

些細なことでビビるミアは、奇妙な動きで迫りくるそのオス犬に、秒で心のシャッターを閉ざしてしまい、あからさまに嫌な顔をして椅子の下に隠れてしまった。

いやいくら犬でも、もうちょっとムードを大事にしてさぁ、仲良くなってからやってくれないもんかね。。。ってウワッフウワッフ飛び跳ねて興奮するオスに何を言っても無駄のよう。何も聞いてやしない。

挙句の果てには私の腕や足にしがみついてギュンギュンやったり、しゃがみ込んだ私の後ろから攻めてきたり。。。オイオイ、相手がちゃうねん。私やないねん。

めげずに何度か面会をしてオス犬の飼い主さんに懐いた頃に、あちらのお宅へお泊りに行かせてみた。

だけど結果は同じだったようで、ミアは心を開かなかった。人間家族とは楽しく仲良く出来たようだけど、オス犬に対しては始終塩対応だったそうだ。
むむむ。やっぱり第一印象が悪かったのかな??


お泊りから家に戻って暫くは、私に対してもかなりの塩、と言うか、憂鬱全開でため息をついたりわがままがエスカレートしたり、めっちゃ扱い辛い犬になっていた。

斜め下から見上げる瞳が、いつもならキラキラとしてかわいいのに、ギラリと反逆者の鋭さを放っている。

スケバンかよっ!!


最近やっと添い寝をしてくるところまで仲良さを取り戻したけど、でもなんだか前のミアとは少し違う。子供っぽさが抜けて、大人っぽくなってる?

時々見せる憂鬱そうな横顔。つまらなさそうに床でゴロゴロする姿。前は箸が転がっただけでもキャッキャと喜んでたのに。。。

今でも外でボール遊びをする時や、虫やトカゲ、近所の猫に遭遇した時にはいつもの調子で全力だけど、家にいる時の態度がちょっとだけ大人しくなった気がする。

もしかしたら、お泊りをして大人の階段を昇っちゃったのかな。。。
ほんの少し寂しい気もするけど、七掛けで四十過ぎだと考えると、それもまた自然な流れなのかもしれない。


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