ブローニュの犬
パリには隣接した森が2つある。東がヴァンセンヌで西がブローニュ。
犬を連れて夫の実家へ行くときは、ブローニュの森へよく散歩に出かける。
実家からは徒歩でも行けるが、なにせ森は広い。ほどよく開けた場所まで車で行くことが多い。
森の中でもミアのお気に入りは池のほとり。ジョギングやウォーキングを楽しむ人に混じって犬を連れた人も多くいる。
くるっと一周回って程よく運動をした後は、カフェ併設の売店へ立ち寄り、遊べそうな犬がいたら遊ぶし、コワモテ犬や吠えまくる小型犬しかいない場合はスルーして立ち去る。
カラッと天気の良い日に緑に囲まれた広い森を歩くと最高に気持ちがいい。
最高じゃん。
最高よ。
だが悲しいかな、現実のパリの天気は南仏ほど好天気続きではない。
春先秋口、いつも雨が降っている。冬は暗い雲に覆われっぱなしで地面はいつも湿っている。
そんな日に森へ行くと、当然ぬかるみだらけで足元がビックリするほどドロドロになる。散歩前と後で靴の重さが明らかに違うのは、粘着質の泥が靴にベットリとへばりつくからだ。
当然歩いているだけで犬も泥だらけになる。
まあ犬は嬉しそうに走り回っているからいいのだが、飼い主としては泥色に変色した犬を車に乗せて家に連れて帰ることを躊躇しないわけにはいかない。
うわぁ〜ドロドロやん。
ひゃ〜デロデロやん。
うわっちゃ〜やったなこりゃ。
どこでもドアで風呂場へ直行したいよぉ、ドラえも〜ん!
もちろん森で出会う犬友たちも泥だらけ。
ミアを連れていると、遊び相手が来た!と嬉しそうに近寄ってくる犬がいる。泥を蹴散らせながらウッホウッホとこちらへ駆け寄ってくる。
大の犬好きを公言する私でも、さすがにそんな犬たちからは距離を取りたい。どこかそこら辺の離れた所で、泥んこ犬同士勝手に遊んでいて欲しい。
私が頑張って近寄るなオーラを目一杯出していても、そのオーラを読みきれずに尻尾を振りながら寄ってくる犬がいる。ギリギリの距離まで近づいてきて、ヒョイっと後ろ脚で立ち上がり、ポンっと泥だらけの前足を私の膝に乗せようものなら、ギャ〜!!
オイッ、ヤメロ!
肉球スタンプでドロドロになったズボン。そして足元で嬉しそうにこちらをみつめる犬を交互に見ると、困惑粒子をたっぷりと含んだ溜息が出る。
あ〜あ〜あ〜。
私の悲哀の叫びは犬には届かない。落胆している私の気持なんか完全無視して嬉しそうに尻尾を振る犬を見ていると、泥んこになったズボンなんてもうどうでも良くなってくる。
あの屈託のない満面の笑みを見てしまうと、困惑よりも好きが大きく上回ってしまうのだ。
ずるいなぁ。
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