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つぼみのついたアロエ、デッサンの途中halfway there. aloe with flower buds.

先生に、植物を描きたいといったら蕪があるので、準備しとくね。といわれて、じゃ蕪で!といろんな蕪のイメージを頭の中で泳がせていたのだが、アトリエに着いて「明けましておめでとうございます。蕪で…」と言ったら「あー、アロエあったからアロエ描こうか~」と言われ、いつもの私の席に置かれていたアロエ…ギザギザ、びよんぴよんの…アロエかぁぁ。

と思ったのだったが、他の生徒さんもドタドタ次々入ってきたのでひとまずデッサン開始。

美大や建築学科の受験生が先生に課題の相談をしたり、黙々と描いている生徒さんたちに紛れてアロエと向き合う。私は毎回一番後ろの右端のテーブルで描いているので、皆の後ろ頭と背中がみえる。

植木鉢の向きを決めて、A3画用紙に描くイメージを固めて、モチーフを見つめる。

――受験課題のテーマは「自分と向き合う、共有する」なんです。特に見本などは示されてなくて…

聞こえてくる会話をBGMに、自分は彼くらいの頃何描いてたっけ…と取り留めなく想いを巡らせようとするも記憶は漠然としている。諦めてイヤホンをつけ、音楽と描くことに没頭した。

輪郭と色付け、今日はおしまい。先生が、アロエがね、植木を買った当初は蕾なかったんだけどね、出てきたの。ほら緑だけやなくこのちょっとオレンジで。それでね。

ということで蕪からアロエに私のモチーフが変更されたのだった。私、アロエの蕾初めて見た。来週描く時に花咲いてたら面白いなぁ。蕪は、少し離れたテーブルにごろりと転がっていた。

アロエの花はねぇ、なんかすごいやつだよ確か。部屋に戻り話をしたら彼はそう言った。花が咲かない方が、今のままの方がいいのだろうか。咲いたらどうなるのだろうか。
蕾のままのアロエの鉢を、私は描き留めている。

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