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恐怖よりも、好奇心

最近、エリザベス・ギルバートの『Big Magic』を読み返している。アーティストであるかどうかに関わらず、自分らしく生きたい人には必読の一冊だと思う。

この本に出会ったのは2020年の夏。コロナをきっかけに時間ができ、好きなものを見失っていた私は、いろんな趣味を試していた。その中で絵を描いてみた時、心が癒されるような感覚を久しぶりに感じた。それからは休日などに細々と絵を描く生活を続けていた。そして、次第に仕事よりも絵に重きを置く生活を送りたいな、と思うようになった。

絵はとても楽しかった一方で、このまま中途半端に続けていいのか、という不安もあった。私は長年優等生をしてきて、決めたことはどんなに辛くても、上手くなれるように努力してきた。何もかも本気で極めるべきだという価値観に浸かっていて、次第に絵に対してさえも、そのようなプレッシャーをかけ始めていた。そんな迷いと焦りの中で手に取ったのがこの本だった。

エリザベス・ギルバート
(source: Cosmopolitan)

著者の主張は、アートは本来、人生を豊かにするもの。一日に少ししかできなくても良い。祈りをささげるように、生活の一部とすれば良い。いずれはアートで稼げるようになるかもしれないし、ならないかもしれない。それが大事なのではなく、どんな形であれ、クリエイティブに生きていく方が豊か。完璧主義に囚われず、創作を続けていくことが大切。アートと健康的に付き合い続けるための、様々なヒントで溢れていた。

力まなくていいんだ、今のまま絵を生活の癒しとして、できる範囲で続ければいいんだと思えるようになった。価値観が180度変わり、肩の力が一気に抜け、よりリラックスして絵に取り組めるようになった。

成功を求め、頑張ることで生きがいを感じる人もいる。私もそのような価値観に囚われ、今まで努力してきたけど、そのようなハイストレスな生き方よりも、風通し良く、楽しく続ける方が自分に合っていた。もし最初から、絵で成功するというプレッシャーを過度に自分に与えていたら、途中で心が折れ、絵を見失っていたかもしれない。冒険できる余地を残していたからこそ、結果的にデンマーク行きにつながったんじゃないかな、と思う。

デンマーク行きを控えている今、少し怖くなることがある。これからはしばらく自由の身だけど、いざ瀬戸際までくると、実はとても怖い。安定を手放し、見知らぬ土地に行き、自分で自分を支えながら道を探っていくのは、面白そうでもあり、足がすくみそうになることもある。

そんなときにいつも帰ってくる、『Big Magic』の言葉がある。それは「恐怖よりも好奇心を選ぶ」という言葉。

これからの旅をドライブに例えるなら、運転席には自分、助手席には好奇心、後部座席には恐怖を乗せる。ハンドルを握るのは自分で、好奇心と共に地図を見ながら道を決めていく。恐怖は後ろからいろいろと叫んでくるけど、行先を決める権利はない。

恐怖とはすべての動物に備わっている原始的な感覚で、無くすことは難しい。自分の身を守るために必要な感覚でもあるので、そばにいさせてあげて良い。ただ、人生の道という重要なことに関しては、恐怖よりも好奇心に従って決めた方が、より自分らしい道に辿りつけられる。そのことを、この本で学んだ。

今回の新作で描いたのは、まさにそう生きよう、という決意。今までいた世界や、行ったことのない世界を見渡し、好奇心に従い、引き寄せられる方向へ飛び込んでいく龍たち。直観に従う勇気、創造への情熱、将来への希望が、今までとは違う派手な色使いとしてあらわれた気がする。

この作品は、6月に開催予定の「Thank you 東京」展で展示予定です。ぜひお越しいただき、直接ご覧いただけますと幸いです。

Flight
(Size: S4, 33x33cm / Wood Panel / Acrylic Paint & Ink)

【展示情報】
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Thank you 東京
(みやはら もえ 個展)

✴︎会期: 2023年6月16日(金) ~ 20日(火)
✴︎時間: 11:00-18:00 (最終日: -16:00)
✴︎場所: 下町ギャラリー ダイジロ (@gallery_daijiro )
✴︎アクセス: 東西線 門前仲町駅
 5番または6番出口より徒歩1分
✴︎住所: 東京都江東区門前仲町2丁目9−11
✴︎URL: https://www.gallerydaijiro.tokyo/
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