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自分にとっての心地よさとは。

クリスマスメドレーに耳を傾けながら、手元にあるのはユーカリやコニファーなど自分で切り分けた葉物たち。

私の視界は花と緑でうめ尽くされていた。

どこにこれをいれてあげようか、どの場所にいれたらこれが活かされるだろうか、そんなことを考えながらただただワイヤーを片手にリースをつくっていく。

できあがったリースを眺めながら、私の心が求めていたものってこれだったのかもしれないと感情が少し動いたように思えた。

自らの手でつくりあげる、目の前のことに没頭する、そんな時間。

針葉樹の中にいるかのような緑あふれる香りに囲まれながら、リース作りに没頭する。できあがったリースの写真を撮ろうとカバンの奥底にいたスマホを取り出したら、作りはじめてからもう二時間半も過ぎていたという事実に気づかされた。

私は時間を忘れてリース作りに没頭していたらしい。

私の心が求めていたもの。それは感情が動かされるような、なにかひとつのことに没頭できるような、そんな心地よい時間だったようだ。

***

フローリストとして花屋に勤めはじめて、半年が経った。

半年、一年、一年半。そういう区切りのタイミングできっとなにかが起こる。悩んだり、問題が起きたり、立ち止まってしまったり。でもちゃんと乗り越えられたら続けられる。まずは半年、そしたら一年。壁を乗り越えながら一歩一歩進んでいく。

それが私なりの考え方。そしていつものパターンなのである。今回もきっとそうだろうと構えて、最初の区切りを迎えた。

そしてフローリストとして働きはじめて半年。

アレンジメントをつくったり、お客さんの目の前で花束を束ねたり、活けこみやウエディング装花に同行したり。半年という期間はあっという間だったけれど、その中身は過ぎた時間に反して濃厚すぎるほど。

そして想定していたとおり、半年目という区切りの月。私の日々には常に悩みが付き纏っていた。

技術のこと、働き方のこと、今後のこと、さまざまな考え事が次第に悩み事へと変わっていく。

自信のなさが接客にでる、それもいまの私が克服しなきゃいけないことの一つだった。お客さんを不安にさせないように、満足して帰ってもらえるように。スキルと経験が物を言うこの仕事において、経験値がまだ足りない私のような新人が”自信を持つ”ってちょっぴりハードルが高いように感じてしまう。

「ちゃんとできているから、自信持って大丈夫。みんな最初はできないことだらけだったんだから、まだまだこれからだよ。」

お店の人にそう励ましてもらっても、自分の未熟さにやはり落ち込んでしまう。『まだ半年なので大目に見てください』そんなネームプレートがあったらどうなるんだろう、そんな妄想もしてしまうほど。

毎日なにかに追われ、なんとなく元気がない。最近の私はまさにそれだった。頭の中は仕事のことだらけ。とりあえずいまは頑張らなきゃ、それが口癖となり夢でも職場にいるなんてことはしょっちゅうだった。

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元気のなさ、それはなにかが足りないという心の物足りなさ。

その原因は、自分にとっての心地よい時間を確保できていなかったから。

ノートに感情を書き出す時間、のんびりと考え事をする時間、読書を楽しむ時間。そんな”何かにひとり没頭する時間”が私にとっての心地よいなのに。

ここ最近はそんな時間をまったくとれずにいた。

恋人との甘い時間、友人と過ごす楽しい時間、どんなに嬉しい時間であってもそれだけでは私の心は余裕をなくしてしまう。好きな人たちと過ごす時間と一人で過ごす時間、私にとってはどちらもなくてはならない大事な時間なのだ。

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人それぞれにある”自分にとっての心地よさ”。

目の前のことに必死でつい私は自分にとっての心地よさを忘れかけていた。

柔らかな空気がまとっている小さな花屋さん。そこにいるのは店主さんと私だけ。そんな空間でのリース作りに没頭する時間が気づかせてくれた私にとっての心地よさ。

今はまだぼんやりとしたイメージでしかないけれど、もし自分で仕事をつくるのであれば特別な日ではなく日常に寄り添ったものがいい。目の前のことに没頭する、そんな時間を過ごしてもらいたい。デザインがどうこうではなくて、自らの手でつくりあげることの楽しさを提供する場でありたい。

心が動かされると感情が言葉となって溢れ出てくる。そんな久々の感覚に嬉しくなってnoteを更新してみた。

半年の次は一年。自分の心に素直に、生きていこう。

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