はるかなる航海のはじめに
人生が大きく変わろうとしているとき、自分の「名前」もまた、変わる。
「野原海明」と名乗るようになったのは、2009年のことだった。親戚も友達も、誰ひとり知る人のいない鎌倉の街。まるでリセットボタンを押すみたいに、私はこの街に越してきたんだ。
誰も私のことを知らないから、ずっと名乗りたかった名前を言ってみた。野原海明(のはらみあ)。それは、中学生の頃の私が自分に与えた名前だった。あれから10年が過ぎて、もはや自分の本名が、遠い他人のもののように感じる。
そして今また、自分