科学が「奇跡」と呼ぶ物質

人は誰しも、気分の塞ぐ時がある。
そんな時に効果的なのが「運動」である。
特にランニングやサイクリングのような有酸素運動

 うつ状態やストレスを受けた時に脳の扁桃体という部分が反応を起こす。人の身体にはHPA軸というシステムが存在し、何かしらの外的刺激を受けるとH=視床下部が反応しホルモンを放出し、P=下垂体が刺激を受け、別のホルモンを分泌する。そのホルモンが血流に乗り、A=副腎を刺激し、「コルチゾール」というストレスホルモンを放出するという流れだ。
 ここで厄介なのが、副腎から放出されたストレスホルモン「コルチゾール」の刺激を受け、さらに扁桃体が反応してしまうのだ。これが悪化するとパニック障害となってしまう。

 そこで重要になってくるのが、先ほどのストレスの負のスパイラルにブレーキをかける脳の部位「海馬」である。海馬というと記憶の中枢で知られているが、感情を暴走させないためのブレーキも担っている。
 しかしこの海馬、ストレスホルモンであるコルチゾールの刺激を受け続けると死滅してしまうのだ。衝撃的な事実である。
 そのためにも海馬を強化することが大切となってくる。そのようなことが可能なのか?答えは可能である。
しかも簡単である。それは運動をするだけで良い。

 週に3回以上、ランニングまたはサイクリングなどの有酸素運動をすることにより海馬は強化される。有酸素運動をすると、運動中はコルチゾールの値が増加する。そして、運動を終えるとコルチゾールは減少し、元の値に戻る。ここでコルチゾールが増加するとダメなのでは?という疑問が浮かぶ。次が面白い部分である。
 定期的にこの有酸素運動を続けていると、運動以外でのストレスを受けた時に、コルチゾールの分泌量がわずかしか上がらなくなるのだ。いうなれば運動はコルチゾールのワクチンである。

 そして、その運動で生成される奇跡の脳内物質「BDNF(脳由来神経栄養因子)」だ。BDNFは、脳細胞が損傷や死滅するのを防いでくれる。それだけではない、新たに生まれた細胞を助け成長を促してくれたり、脳細胞のつながりを強化し、記憶力を高めてくれたり、脳の老化を遅れさせてくれたりもする。そんなBDNFを生成するには、有酸素運動ほど簡単で効果的なものはない。
 おすすめの運動は30分~1時間のランニング、サイクリング、HIITである。

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