目に見えぬ価値に"彩"を

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都市への旅立ち / fhána 「ユーレカ」

3月。はじまりの季節。 あらたな場所へ、あらたな自分へ一歩踏み出す。 春はよく抽象的な意味合いで「別れと出会い」の季節といわれるけれど 4月がもう目の前に迫るこの頃は 新たな世界への入り口に、どんな気持ちで立とうか? どんな靴で、一歩を踏み出そうか? そんな具体的なことを考えてしまう時期なのかもしれない。 まさに"旅支度の真っ最中"というのがぴったりだろう。 ちょうど1年前、こんな時期にぴったりの 新しい世界への旅をテーマにした fhánaの3rdアルバム「World

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      春のとまどい 揺らぎ -桜ソング-

      『花は桜 君は美し』 季節のもつ、冬と春の表情が重なり合うこの頃。 揺れ動く心を歌うこの作品のなかで かたちのない、曖昧なものについて思いをめぐらせた。 ーーーーー わたしたちの感情は、いつだって目に見えない。 "ことば"という共通のツールに従って、どうにか表現している。 わたしたちが常に ことばにできない曖昧な感情を抱えて生きているのなら。 揺れ動く感情をいつだって 自覚していることになる。 ーーーーー 人が「桜」を想い、春の歌に引き寄せられるのはなぜだろう。 蕾が花となり、散っていく。 その一連の現象に 心のなかの浮かんでは消える想いを重ねているのかもしれない。 気持ちの移ろいは春に限った話では、ないのだけれど。 それでも、「春」という季節は特別だと思う。 寒く厳しい環境から あたたかい場所にすすむことは いつだって不安が伴うものだから。 あたたかい春の花びらのように 心惹かれるものに気づいてしまったとき。 それに手を伸ばしていいのか、 どこかでとまどい、揺らぎを感じているのかもしれない。 ----- 春のとまどい 揺らぎをテーマにしたこの作品の中で、そんなことを考えていた。 あいまいな感情を、いつも感じていたい。 見えないものを無いものとしないように。 移ろいゆく季節に想いを馳せていたい。 めまぐるしい日々のなかでも 木々のつぼみに気がつけるような。 ささやかな心の内側の変化を喜べるような。 そんな人でいたいと思った。 まだ咲かない花の蕾を 心に抱きながら。 あなたとわたしの間の 見えない思いを肯定したい。 もうすぐ、春がくる。

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        YuNi - virtual singer -「透明声彩」

        ー 透明な声はきっと、からっぽじゃない ー ふと、じぶんの存在意義に悩むことがある。 意義なんて、最初からないのかもしれないけれど。 それでも生きていると、時代のなかで手探りの日々を過ごすことがあるだろう。 どんなに明るい人だって、孤独で、見えない未来に怯えるどうしようもない夜があると思う。 「透明声彩」 この言葉の意味はなんだろう。 「透明」はそこに「存在しない色」なのか? そんなことはない。透明色だって、立派な色なんだ。 透明色の声。目に見えないけれど、はっきりした名前もないけれど。 それでも今ここで、この場所で響いている。確かに奏でているのが聴こえる。 もしかしたらその声は、今は自分にしか聴こえないかもしれない。 でも、いつかきっと。届けたいから。ーーー バーチャルシンガー YuNi が歌う 「儚さ」「孤独」「未来への不安」 そして、小さくかすかな「希望」。 見えないものを見ようと、そしてそれと向き合おうとする ひたむきな彼女の表情と歌声に心を掴まれた。 「仮想的な存在」として多くの人に認識されている彼女は今、どんな気持ちなんだろう。 もしかしたら私たちと同じように、寂しくて、不安な夜を過ごす日があるのかもしれない。そんなことを考えさせられた。 小さな希望でもいい。 ここで、鼻歌でもなんでもいいから、完璧じゃなくていいから、口ずさんでいたい。 本当に叶うかなんて、今はわからない。 不確実なものだっていいんだよ。 見えなくても、からっぽじゃないんだよ。 そんなことを教えてくれている気がした。 バーチャル(仮想的)と、リアル(現実的)が 共存する世界にわたしたちは生きている。 何が「ほんとう」で、何が「うそ」なのか。 全然わからなくなってしまう場面がたくさんあるかもしれない。 でも、きっと答えは2択で選べることじゃないんだ。 明確じゃなくていい、曖昧な状態だっていい。 この不安定な世界のなかで、透明な声で歌い続けたい。 そんなふうに、「透明声彩」は、前を向く力をくれた。 こんなに素晴らしい音楽と出会えるこの世界は、やっぱりどうしても嫌いになれない。 透明な声が そっと色づくまで。 いまは口ずさんでいこう。

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          三浦大知 "Be Myself" 2018/08/22 release

          うだるような猛暑が続く8月。 涼しい風が熱いエネルギーをのせて運んでくるように 三浦大知の最新曲MVが公開された。 鬱蒼とした空間からサビに向かって 徐々に解放されていくサウンド。 ここで解き放たれるのは音楽だけではない。 自分の中に眠る意思。衝動。目に見えないナニカ。 内なるエネルギーの”目覚め”を予期させる。 その強い予感とは裏腹に、涼しげな表情で 淡々と過ぎていくストーリー。 内なる"予感"は"確信"に変わりつつあるのかもしれない。 ずっと内に秘めていた何かが目覚める-- それを確信したとき、私たちは「人生」という 本番のステージに立つことを、はじめて覚悟するのかもしれない。 今、目の前の人生を本番として生きているか。 絶えず続けられてきた自分への問いかけはある時、 花火のように打ち上がり、エネルギーを放出する。 誰のものでもない自分の本番のステージを 自分らしく終えるために。 そんなことを、この楽曲は 真剣に思わせてくれた。 つくづく、音楽という目に見えないものが 人の心を動かすということは、 不思議で、魅力的で、尊いと思う。 こんな素晴らしい音楽に出会えた時、 心が内側から潤う気がする。 今年の暑い夏も、渇き切らずに なんとか乗り越えられそうだ。

        都市への旅立ち / fhána 「ユーレカ」