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Candy

皆さん、こんにちは!💫

星<star>になる可能性を秘めた女の子っ!未星です!

今回は Candy と言う曲で1つ書かせて頂きました。
ざっくり言えば、happyでその名の通り 可愛い💕💕 曲です。


Can you calling my name? darling!

私ごとではありますが、昨年姉が結婚を致しました!それも世に言う
「ダーリンは外国人!!」(言わないかなぁ?)

身内で最初に彼(現旦那さん)に会ったのは私でした。
「姉の彼氏に会うのも初めてなのに、しかも外国人て、、緊張する」と思っていましたが、彼がオタクで、とてもフレンドリーだった上にカラオケでアニソン歌ったので、意気投合して兄妹になりました!🤜🤛⚡️(オタクは裏切らん!😠✨)

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そんな中で気になったのが、姉夫婦の呼び方です。最初聞き間違いかと思ったのですが、間違いなく姉は旦那さんのことを ”honey” と呼んでいます。旦那さんは旦那さんで姉の名前を呼ぶらしいのですが、冬の間湯たんぽを使っていたそうで、”僕の湯たんぽちゃん”と一時期呼ばれていたと姉本人から聞きました。

日本ではなかなか聞き慣れませんが、海外だとよくある「愛する人を別の名前で呼ぶ文化」。 honey、sweetie、baby..etc。この曲はその愛称を ”candy” と言ったんですね。

私も歌ってる時は愛❤️が溢れそうでした笑

私にとっての湯たんぽじゃなかった。candyをいつか見つけられたなぁと願っております☆

同小説は、下記pixiv様にも載せております。↓↓

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15418527

そちらの方が慣れている方はpixivもよろしくお願いいたします。(個人的には途中出てくる友達が好きです😉💫)

※本作品は一部虐待表現が含まれております。読まれる際にはご注意ください。また、一部制度のことも含まれております。法律や制度など調べた上で創作活動はしておりますが、もし違う点がございましたらフィクションということで多めに見ていただけると幸いです。


Candy 歌詞と和訳(未星的)

Candy,I call my sugar Candy
Because I’m sweet on Candy
And candy’s sweet on me

He understands me
My understanding Candy
And candy’s always handy
When I need sympathy

I wish that there were four of him
So I could love much more of him
He has taken my complete heart
Got a sweet tooth for my sweetheart

Candy, It’s gonna be just dandy
The day I take my “Candy”
And make him mine all mine

未星's 解釈

Candy、私は愛する人をCandyと呼んでいる
だって私はCandyに夢中だし
Candyだって同じだ
彼(女)は私を分かってくれる
私の理解者なんだCandyは
Candyはいつだってそばにいる

私が分かって欲しい時
私は彼(女)が4人にならないかと願う
そしたら私はもっと彼(女)を愛せるし
彼(女)は私の気持ちを完璧に受け取れる
あなたのせいで口の中で甘くなってしまった

Candy、
私があなたと一緒になろうとする素敵な日
私の全てはあなたのものになる

Candy 小説本編

ゴトンゴトン。
「ふわぁー」倉門稔は、午前8時の満員電車の中で欠伸をした。昨日振られたときにもらったビンタの痛みを左頬に感じているとふと扉の方で何か不審なものを感じた。少し体を動かしてみると、金髪の女子高生の下半身を別の乗客が触っていた。

ははーん、これは痴漢ってやつですな。全く、よりにもよって俺の前でするとはねぇ。まぁここは1つ助けてあげて女子高生からの株を上げますか。
稔がそんなことを思い、声を掛けようとしたその瞬間、女子高生に触っていた手が勢いよく掴まった。
そして

「いつまで人の尻、触ってんだよ!きめぇんだよ!テメェ!!」
と触られていた女子高生が男の手を力強く握り叫んだ。
車内は女子高生の叫びでざわめき、男は「違う誤解だ。私はやってない!」とうろたえ出した。
「最近登校中に痴漢されてるって子が何人もいたけど、それもあんたがやってんじゃないのか?」
女子高生は男の腕を強く握りしめながら、睨み付けていった。
「違う!だいたい、今だって私がやったという証拠でもあるのか!」
男が強い口調で言い始めると、稔は手をあげ答えた。
「はぁーい。俺その人がその子のこと触ってたの見てましたー」
「な・・・」
「無罪を主張して裁判沙汰になったとしても、弁護する側が目撃者じゃ俺も弁護しようもないわー。」
倉門稔は、弁護士だった。
電車が駅に到着し、ホームには駅員が待ち伏せしていた。
「とりあえず駅に着いたことだし、誰かが呼んでくれたのか駅員さんも待っててくれてるみたいだから、駅でお話し伺いましょうか。」
倉門がそういうと男はくそっと言って女子高生の手を振り払い逃走を図った。しかし、乗客数人がホームで男を取り押さえた。稔と女子高生もホームへ降り、痴漢犯を見た。
「痴漢された被害者と、目撃者もいる。あとは警察かな?君も悪いけど事情聴取を・・・ってあれ?」
稔が女子高生の方を見ると、女子高生はスタスタと階段を降り、改札へと向かっていた。声をかけようと思ったが、自身の足の元に何かが落ちているのに気がついた。稔が拾うとそれは生徒手帳で、裏を返すと、そこには彼女と思わしき写真と身分証明が書かれていた。

「西ヶ丘高等学校 古屋杏奈・・・」

稔は彼女の立ち去った方向を眺めていると駆けつけた警察官に声をかけられ、そのまま事情聴取のためその場を後にした。


「あれ?」
週末、稔は図書館で本を借りようかと歩いていると、中央に置いてある大きな机で、あの女子高生を見かけた。稔が内心<金髪こけし>とあだ名をつけていたほど目立つ金髪のおかっぱヘアで、一瞬で分かった。女子高生は俯き、教科書のページを捲りながらノートに文字を書き記していた。そんな彼女に興味を持ち、稔は彼女のもとへと歩いていた。

「こんにちは。」
稔の声に女子高生は顔をあげた。生徒手帳よりの時よりも感情のない目をしていた。
「この間は大変だったね。あの後学校間に合った?事情聴取もせずに歩いて行っちゃったけど。」
稔のその言葉に、女子高生は表情を動かすこともなく、口を開いた。
「あんた誰?」
少しの沈黙の後に、稔は笑顔のまま言葉を続けた。
「この間、君が電車でトラブルに巻き込まれた時に、助けた者だよ。あと、君が落とした生徒手帳を駅員に渡した」
女子高生は少し考えると「あぁ」と口にした。
「生徒手帳無事帰ってきた?というか大丈夫だった?あの時自分で対処してたけど。すごいね、あんな大きな声出せるなんて、普通なかなかできないよ。あ、ちなみにあの犯人、君が言ってた通り、最近起きてる痴漢事件の犯人だったってさ。お手柄だね。」
稔がそういうと女子高生はノートに見ながら言った。
「別に大したことないよ。気持ち悪かったから、気持ち悪いって言っただけ。それ以上でもそれ以下でもない」
自分がされた痴漢行為に全く興味がないというほどに淡々とした言い方に、稔は少し疑問と、女子校生に対する興味がして増していった。

その後、何度か彼女を見かけるようになった。基本的に1人でいて、勉強をしていた。たまに何か本を借りに席を立つことがあり、その隙に稔がちらりと見ると高校の教科書とともに簿記関係の本や冊子なども置かれていた。読みたい本が高いところにあり届かず奮闘している彼女を見かけて取ってあげたり、大量の本を抱える彼女を見かけて持ってあげたりしているうちに彼女は稔を認識し、時々図書館帰りに下の喫茶店でお茶をするほどの仲になった。

「そういやさ」稔が口を開くと、目の前でストローでアイスティーを飲んでいた彼女の顔が上がった。
「なんて呼べばいい?一応生徒手帳拾った時に名前は確認したから名前知ってるけど。」
彼女は特に気にする様子もなく、アイスティーを飲み続けた。
「別に。呼びたいように呼べばいい。私は気にしない」
すると、稔は少し考えて口にした。
「candy」
「は?」
「君、いつも飴舐めてるじゃん。飴好きなんでしょ?でも『飴』って呼ぶの、なんか可哀想だし、可愛らしく"candy"でどう?ほら、今も金髪で髪の毛も丸い感じでレモン系の飴みたいだし。」
女子高生はストローから口を外してぽかんと口を開けた。
「あんた、見た目とか職業とかちゃんとしてそうなのに、ネーミングセンスクソだな。別に呼び捨てで『杏奈』でいいよ。何だってそんな恥ずかしい呼び方。欧米の血でも入ってんのか?」
杏奈の言葉に稔は少し口を尖らせた。
「えー。いいじゃーん。candy。甘そうな感じがして可愛くない?ほら言ってみな?candyて」
杏奈は黙ってアイスティーを飲んだ。
「で、俺は・・・」
「おっさん」
「へ?」
杏奈はまっすぐと稔の顔を見て行った。
「見ず知らずの女子高生に話しかけてくる点、さっきの私への呼び方。見た目から感じる胡散臭さ。変態かジジィって呼びたいところだけど、か・わ・い・そ・う・だ・か・ら、おっさんにしといてやるよ。」
「えー、俺まだ20代なんだけどー?」稔は眉をへの字にして笑顔で言った。すると、杏奈は嫌そうにアイスティーを飲みながら「20代だろうと何歳だろうと今までの全てにおいてきめぇし、ウゼェし、胡散臭ぇ。でもま、頭はいいんだろうと思う。」と言った。
稔は少し左の口角を上げながらコーヒーを啜った。
「いい度胸してんじゃねぇか、この金髪こけしが。ま、この間の勇気と俺の優しさに免じて、許してやるよ。でもいつか撤回させて呼び方変えさせてやるからな、覚悟しとけよ、candyちゃん?」
「言ってろ、おっさん。」
「そう言えば」稔が思い出したように口を開いた。
「お前なんでその髪の毛なの?西ヶ丘って結構自由な校風とは聞くけど、にしてもそんな奇抜な色。しかもおかっぱだし。」
稔のその言葉に杏奈は少し沈黙を置いて「色々あんだよ」と俯き、稔とは目を合わせずに言った。稔は少しその反応を疑問に思ったが、これ以上は答えないという姿勢を感じ、それ以上の追及はしなかった。

「おっさん、これ。」
またいつも通り、図書館帰りに2人でお茶をしていた。今回はいつもの図書館下の喫茶店ではなく、少し離れたパンケーキ屋のテラス席でのお茶会だった。稔の前にはホットコーヒーと取り皿、杏奈の前には杏奈の手よりも大きなパンケーキとホットティーがあった。
杏奈は、稔に名刺状のものを返すと、左手にフォーク、右手にナイフをもち、パンケーキを切り始めた。
「何これってあー、俺の免許証!なんだ失くしたと思ったのにcandyが持ってたのか」
それは稔の運転免許証だった。杏奈はパンケーキの1/3を稔の取り皿にのせながら話した。
「私が取ったみたいに言うな。この間別れた時にあんたのポケットから落ちたんだよ。どうせコンビニでタバコでも買う時に身分証明で出してそのままポケットに入れてたんだろ。」
「ちょっと待て、なんで俺が喫煙者だって分かった?俺無臭だろ?」
稔はクンクンと自分の体を匂いだした。杏奈はしけた目で稔を見ながらパンケーキを口にした。
「前に仕事帰りで図書館来ていた時、ワイシャツの胸ポケット四角く膨らんでたの上着の隙間から見えたし。それにこの間トイレの帰りに喫煙所でタバコ吸ってるあんた見た」
「えーやだ。candy見てたの?エッチ!どんだけ俺のことが好きなの!もう」稔が胸の前で手をクロスさせて言うと、杏奈はより面白くなさそうに顔を顰め、「うざっ」と吐いた。
「今時の付き合う子達さー、煙草の匂いやだって言うんだよ。くさーいって。candyどう思う?candyもタバコ嫌い?」稔が自分のワイシャツの腕をかぎながら言うと、杏奈はパンケーキを切りながら言葉を返した。
「好きもどうも、別に個人の自由だし、吸いたきゃ吸えばいいんじゃない?それに、あんた私がタバコやめろって言ったらやめんの?」
杏奈のその言葉に稔は少し考えると「うーん、よっぽどのことがない限り辞めないかなぁ。」
「よっぽどのことって?」杏奈は稔の顔を見ながらパンケーキを口に運んだ。
「うーん、本当に好きな人ができたりしたら?あと、自分の子どもができたら?」
稔のその言葉に杏奈は少し笑うと「なら、あんたが本当に好きな人と子供ができるように私は祈ってるよ。」と言った。冷静に「あれ?これって辞めて欲しいってこと?」と思ったが、初めて見る杏奈の笑みが何故か心にきて「まっ、楽しそうだしいっか。」と心の中に閉じ込めコーヒーを口にした。

「じゃ、ありがとう。私こっちだから。」日が暮れ出した頃2人はいつも通り、駅の近くで別れを告げた。
「気をつけて帰れよ。あとこれやる。」そう言って稔は持っていたレジ袋を杏奈に渡した。杏奈が受け取り、中を見るとそこにはベーグルサンドとのど飴が入っていた。
「さっきのパンケーキ屋で売ってたんだ。どうせお前あんましっかり夕飯食べてねぇだろ。あと飴。最近お前声が枯れてる気がするからちょっと高めのいいやつ。そういやいつも、お前閉館時間ギリギリまでいて帰るの遅いよな。あんなに遅くまでいて大丈夫なのか?親御さんとか心配したり怒ったりしねぇの?」
稔のその言葉に杏奈は少し言葉をつまらせながら、斜め下を見た。
「大丈夫。それに・・・あんまり家に居たくないから。」
「へ?」稔が言うと、杏奈は「これありがとう。もらっていくよ、それじゃ」と早口で言ってそのまま稔の顔を見ることなく踵を返し走って行った。
置いていかれた稔は不思議そうに首を傾げながら、去っていく杏奈を見ることしかできなかった。

「あんたってさー」
「ん?」声のする方へ稔は顔を向けた。
「私昔からあんたのこと羨ましいなと思う反面、可哀想だなとも思ってたんだよね。」
声の主はテーブルの上で両手で頬杖をつきながら真っ直ぐに稔の方を向いて言った。
「どういうことだよ、姉ちゃん。」
すると姉ちゃんと言われた声の主は、表情を変えず話を始めた。
「あんたってさ、昔からなんでも卒なくできて、見た目もそこそこいいから老若男女問わずチヤホヤ褒められてさ。姉の私なんて何度比較されたことか。『弟くんの方が要領いい』とか『弟くんならもっとできた』とか。こどもの時は辛かったし苦しかった。なんであんたばっかって憎んだこともあったけど、大人になってやっぱり思うけど、あんた可哀想なんだよね。何でもできちゃうから本気になる前に飽きちゃって、努力しなくてもできちゃうから頑張るってことを知らなくて。私は努力して今があるけど、あんたの今は天性で成り立ってるようなもの。天才だけど秀才じゃない。素晴らしいものを持ち合わせて生まれてきたけどその代償として<努力するという場面>を奪われた。がむしゃらになって何かを得るって経験があんたにはないのよ。だから、頑張るってことが分からない。頭では理解できてても経験がないから体で理解することはできない。本当の意味での生きる楽しさをあんたは知らない。」
「この世で唯一の弟に、はっきり言うなぁ。」稔は少し姉の言葉に引きながら言った。
「唯一の弟だからよ。女性関係だってそうよ。ま、別に子どもできたり、病気にならなければ特に言うつもりはなかったけど、女性に対してだって本気じゃない。常に一線引いた遊びで、自分の本性を明かす気はない。だからフラフラして、毎回相手が本気になる前に相手から振られるように仕向けて。自分から振る覚悟も無いくせによくやるよ。」
稔は少し眉を顰めた。

「相手がさ、本気で来てるんだよ。それこそ命や人生かけてあんたと一緒にいるのかもしれないじゃん。それを飄々と遊びのように返してたら可哀想じゃない。本気で来てるなら本気で返すのが人としてもマナーってもんじゃない?あんたは、自分が本気になるのが怖いのよ。自分がどうなるかも分からないし、本気になってフラれることが嫌で怖いから。あんた、無駄にカッコつけだしね。でもさ、そんなこと続けてたらいつまで経っても本当に欲しいものは手に入らないと思うよ。」
稔は少し姉を睨んだ。

「私は自分が結婚をして子供ができて幸せだと思ってる。あんたにとって結婚が幸せかどうかは知らない。ただ、あれだけ女性関係があるってことは、あんたすごく寂しがりやだと私は思うの。だから、ありのままのあんたをちゃんと見てくれて、あんたが本当に好きな人に巡り合って、本気でぶつかって、それで、その先にある何かを掴んでほしい。私はあんたに幸せになってほしいのよ。この世で唯一の弟だからね」
姉はそうしてニッコリ笑った。

目覚ましの音で、稔は目が覚めた。目覚まし時計を止めると、そのまま背伸びをした。懐かしい夢を見たものだ。あれは前に姉に第二子出産祝いを渡しに行った時のことだ。姉は昔からズバッと核心を突いてくるところがある。あの人は自分が難なく出来たことにひどく苦労していた。何でこんなことも出来ないんだろうと思ったことあったし、比較されていた姉を見下していた時期もあった。でも心のどこかでは何事もひたむきに頑張ることのできる彼女のことを羨ましいと思ったこともあった。

{飄々としていて何を考えているのか分からない}

他者から言われたそれは、裏を返せば

{自分の本当の中身を知られたくない}

ということに等しい。
誰かに分かられたくないと思う自分と、それでもこんな自分を分かってほしいと願う自分。自分の中の矛盾に気づきつつも、見て見ぬふりをして表面上の笑顔を振り撒いた。
変わりたいと頭で思っても、今までのプライドがそれを拒絶する。結局何も変われないまま、真に欲しいものが何かも分からないまま、歳を重ねていた。

稔はコーヒーを飲みながら、テレビをながら見することで夢の内容から意識を遠ざけた。

その日は突然やってきた。稔はいつも通り杏奈と会い、家へと帰った。そして、風呂でも入ろうかと思った時、インターホンがなった。こんな時間に何だろうと思ってみると、そこには血の気の引いた杏奈が立っていた。稔は慌てて通話ボタンを押した。
「おい!どうした?何で俺んちが・・・」稔がそう言うと、杏奈は泣きそうな顔で言った。
「お願い・・・・助けて。」

稔は、急いで家を飛び出し階段をおりた。そしてエントランスに行くとそこにはひどく怯え泣きそうな杏奈が稔を見た。稔が近づきオートロックが解除されると、杏奈は勢いよく稔に抱きついた。稔は何とか踏ん張って受け止めたが、抱きしめた杏奈は震えが止まらず呼吸も乱れていた。「とりあえず家に入ろう。大丈夫だ」稔は杏奈を抱きしめたまま、エレベーターに乗り込んだ。

稔が家に入り鍵をかけると、杏奈は勢いよく倒れ込み、その勢いに負け、稔は「うぉ」と言いながらそのまま廊下へと勢いよく倒れることとなった。杏奈に上に乗られた状態となった稔は、少し困って横を向いたがふと胸のあたりに冷たさを感じた。稔が胸の当たりを見ると、勢いよく顔を杏奈が顔を上げた。
怯え、震えそしてボロボロと涙を流している杏奈がやっと口を開いた。
「お願い!おっさん、、、たすけて」
「お前、だから何があったんだ。助けろって言ったって。それに何でお前俺んちが」
「たすけて、お母さんが、、」
「お母さんが?母さんが何?」
「お母さんが、、、」
「だから、お母さんが?」


「お母さんが包丁持って追っかけてくる、、、」
杏奈のその言葉に稔は絶句した。杏奈はそのまま下を向いたまま、涙を流しながら言葉を続けた。

「今日、おっさんと別れた後、いつも通り家に帰ったんだ。それで、ご飯作ろうと思って台所に立ってたら、いきなり後ろの部屋の電気がついて。振り返ったら、お母さんが俯いて立ってて。『何してるの?』て聞いたら、いきなり顔を上げて。右手を上げたと思ったら、右手に包丁持ってて。『何であんたばっかり。あの男は誰よ。私から男奪っといて、なんであんたは男といるのよ!!!』て奇声をあげながら私の方に走ってきて、、、。慌てて逃げてきたの。誰かに助けを呼ぼうにもあっちが追っかけてくるから頭回らなくて・・それで急に前に見たあんたの運転免許証の住所を思い出して、無我夢中で走ってきたの、、、」
稔はようやく杏奈の震えと衣服や体の乱れの理由を理解した。

「おっさん。お願い。怖いよ、、、私どうしたらいいの、、、」
「、、、とりあえず警察に言ってお母さんの捕獲とお前の保護をしないと。」稔がそう言って携帯を開くと、勢いよく杏奈が稔の腕を掴んで止めた。
「やめて!警察に連絡したら知らないところに連れてかれる!!」
「はぁ?お前何言って」
「嫌だ。嫌だ!嫌だ!!また何かされる!!もうヤダ!!誰も信じられない!!!!」
杏奈は頭を強く左右に振りながら稔の腕を握る力を強めた。
「お前どうした?何でそんなに・・・・」
杏奈は腕の力を弱めると、ぽそっと言葉を吐いた。


「中二の時に義父が私への強姦で捕まったの」


稔は杏奈のその言葉に驚愕した。杏奈はそのまま自身のことを話し出した。

「私が小1年の時にお父さんが事故で亡くなって、その後お母さんと2人で暮らしてたんだけど、小6の時にお母さんが再婚したの。その人は優しそうな人でお母さんも幸せそうだった。中学になって、部屋で1人で寝てたら何か物音がして目が覚めたの。そしたら足のほうにその男がいて『何してるんですか?』て聞いたら、『失くし物を探しに』て。あの男はヘラヘラと笑ってた。お母さんに相談しようにもせっかく手に入れたお母さんの幸せを壊したくなかったから、誰にも相談できなかった。そして、不安を感じていたある日。夜に目を覚ましたらあの男が私の上に跨ってたのよ。声をあげようかと思ったら口を塞がれてあの男は私の耳元でこう言ったのよ。『初めて会った時からヤリたいと思ってた。お母さんの幸せを壊したくないだろう。なら静かにしてろって』て。痛みも苦しみも恐怖も全部グチャグチャになって。絶望で記憶が飛んで目が覚めたら朝になってた。夢だと思いたかったけど、朝食後にすれ違った時にあの男が『昨日は最高だった』て言われてそれが現実に起こったことだと理解した。」
「…」稔は黙って聞いていた。

「その後も何年にも渡って襲われた。抵抗すれば殴られる。男は勝てない存在で、抗えず従うことでしか自分を守れない。無力な私には、ただ耐えて心を殺し、あいつが満足してこの行為が終わることを願っているしかなかった。そんなことが続いていた中3のある日、学校から帰宅した途端、あいつに玄関で襲われた。突然の出来事で私が暴れていると殴られた。そして私がいろんなところから血を流していた時に、玄関の扉が開いたの。隣の住人が突然起きた大きな音を不審に思って強盗か何かかと思って警察に通報したらしくて。男はそこで現行犯逮捕された。そこからだった。お母さんが廃人のように家に籠るようになったのは。家の中をフラフラするようになったり、私を認識しなくなったり。私もそんな環境にいるのが辛くて、家には寝る時だけ帰るようになったの。あんたが前に聞いてきた閉館まで図書館にいる理由もそのためよ。図書館に籠もって勉強して。あの時金髪だったのは、お母さんにちょっとでも関心を持ってもらいたくて。結局視界にも入れてもらえなかったけど。」
「お母さん、どっかで私とあんたがいるところを見たらしい。それで押さえていた何かが弾け飛んで、、、それで、、、」
「そうか」稔は左手で自然と震える杏奈の肩に触れた。何とかしてこの目の前の女の子の恐怖を和らげてあげたいと思った。
「このままお母さんとも暮らせない。でも知らないところで知らない誰かと過ごすのは嫌。また誰かに勝手に身体を触られるかもしれない」
稔はふと疑問に思ったことを聞いた。
「保護者がいないとなると施設になんだろうけど、その前にお前の親が犯罪者であろうとも血のつながりがある家族や兄弟には扶養義務がある。施設の前にまずそっちじゃないのか?祖父母は?」
すると杏奈は首を降った。
「私の本当のお父さんとお母さんは駆け落ちで家族の縁を切って結婚したの。だから、祖父母には会ったこともないし、連絡先もどこにいるのかも知らない」
「なるほど。そう言うことか」稔は納得をした。
「お願い、おっさん。助けて。何でもするから。」杏奈は大粒の涙をこぼしながら言った。
「何でもって、、、俺がさせろっていったらお前するのか?」
稔のその言葉に杏奈は勢いよく顔をあげた。顔は涙でグチャグチャで赤くなっていた。
「すまない。今のは冗談でも言うべきではなかったな。・・・・。」
稔は少し考えると、杏奈から手を離しそのまま携帯で電話をかけ始めた。杏奈が慌てて止めようとすると、稔から「静かに。大丈夫」と人差し指を前に出された。そして相手が出ると稔は話を始めた。

「あ、お疲れ。あのさ、突然で悪いんだけど、お前の知り合いで学生に家を貸してくれるところないか?ちょっと事情があって正直今日明日にでも貸して欲しい。詳しい事情はまた今度になるんだが卒業まで。・・・うん。通学手段があるなら文句は言わないし、そっちの要望にも答えられる範囲で答える。悪い。食堂?・・うん、曙町の?あーそこでいい。うん、ありがとう。手続き終わったらまた連絡する。悪いな。また今度おごるわ。おう、ごめん。また連絡する。」稔はそう言って電話を切った。そして、起き上がり、杏奈を自分の体の上から離してゆっくりと床に座らせた。そして自分も正座になると。話を始めた。

「いいか。警察には連絡する。多分お前の母親はお前を探しているし、もしかしたら他者に危害を加えていて警察もお前の行方を探しているのかもしれない。でも、施設には行かないようにする。今、俺の友達に頼んで住まいを見つけてもらった。ここから1時間半くらい掛かるけど、曙町という所で食堂を経営されているご夫婦が家の一室を貸してくださるとのことだ。家賃はないがその代わり、食堂を手伝って欲しいとのこと。お前の今の高校にもバスと徒歩で通えるとのことだ。だがお前が転校したいならそれで手続きする。これから相談にはなるがご夫婦にお前を養子してもらえるように頼む」
「!」杏奈は目を見開いた。
「多分、お前の母さんは殺人未遂で家に戻るというより、精神科の病院へ入ることになる。15歳超えてるお前に特別養子縁組はできない。かと言ってこの状況で未成年のお前の親権はもはや飽和状態だ。家族と離縁して結婚してるあたり、祖父母を含めた親族に連絡は取ってみるが、正直どう出るか分からない。以上の状況から、ご夫婦にお前と普通養子縁組をしてもらうようお願いしてみる。実母との縁は法律上切れないが、高校卒業までの親権と衣食住はこれで確保できる。ご夫婦には親代わりという役だけやってもらい、実質的なことは俺がやる。」
「・・・・おっさんが?」
「そうだ。この国の法律は子供の利益を考え、子供がちゃんと成長できるような権利が設けられ、大人にはそれを守り、果たす義務がある。今の状況でお前の身体及び精神だな。お前が精神的に負担なく生活し、成長させる義務が大人にはある。だから俺は大人として、お前にとっての最善を尽くす。ただし、条件がある。」
そういうと稔は杏奈の目の前で人差し指を上に向けた。

「1、高校卒業までに掛かる諸々の金は俺がお前に貸す。高校卒業したら働いて返せ。2、オレの命令には絶対逆らわない!そして3!!」
杏奈が唾をゴクンと飲み込むと、稔は少し眉を下げて言った。
「俺と一緒に携帯を契約すること。お前今時の高校生のくせして携帯も持ってなかったんだろ。そのせいで連絡も取れなくてこんな傷だらけになったんだ。携帯代も貸しにしといてやるからいつか返せ。いいな」
杏奈は「分かった」と頷いた。
「よし、なら話もまとまったところで、警察にかけるぞ」
稔がそう言って携帯を触ると、杏奈はビクッと身体を震わせた。それを見た稔は、ため息を一つついた。
「ここまでするんだぞ。俺も一緒に行ってやるし、途中で放り出したりはしない。これはお前と俺の契約だからな。後でしっかり書面にて取り交わす。俺だって大人だ、乗りかかった船をそう簡単に下船しない。それと」
稔は杏奈の目を見て行った。
「お前が今話したことを俺は、警察に求められれば話す。お前はもう精神状態的にもよくないし、無理にいう必要はない。だけど、言わないと先に進めないことも多いし、先に進まないのはお前にとってもよくない。だから俺はお前の言葉を代弁する。言いたいことがあれば言えばいいし、直接言いにくかったら俺に言えばいい。俺から伝える。いいな。」
杏奈はうなづくと、稔は携帯で警察へと連絡をした。すると警察からは包丁を持ってフラフラと歩く女性を捕獲し、警察署の方で事情聴取をしていること、捕獲した女が執拗に言う”アンナ”という女性を探しているとのことだった。稔は、杏奈という女子高生を匿っていること、彼女とは知り合いで、実母から包丁で刺されかけ、傷だらけで自宅に助けを求めてきたため、匿っていたこと、杏奈は実母から包丁を向けられたショックで心身ともに疲れ果てているため、自分と共に警察署まで出向くことを話し、杏奈と二人、実母がいるという警察署まで行った。向かう道中、杏奈は人の気配を感じるたび震え上がっていたため、その度に稔が「大丈夫」と言って自分の近くへと肩を寄せた。案内され、杏奈は稔に支えられながら、実母と数時間ぶりの再会をした。
「匿っていた彼女の知人ですー」と警察官に後ろで稔が挨拶していると、実母は杏奈を見る度血相を変えて襲いかかってきた。

「誰よ!その男!あんたばっかり!!あんたばっかり!!」
「落ち着いてください!!」警察官2人が実母を取り押さえた。実母は屈することなく、杏奈に向かって言葉を吐き続けた。
「あんたが!あの時通報さえしなければ!私は龍一さんとずっと一緒にいられた!!あんたが我慢してれば!!」
「落ち着きなさい!!」
「お父さんだって!あんたがどうせ殺したんでしょ!うざかったのよ、あんたは!生まれた時から!!ずっとあんたにばっか目がいって!出張から帰ってきてもあんたの様子がどうだ?とか、いっつもあんたのことばっか。」
「違うよ、お父さんが亡くなったのは出張帰りの飛行機事故に巻き込まれただけじゃん・・・」杏奈が震える声で言った。
「あの人だって、私が好きで結婚したくせに、あんたの顔見た瞬間、あんたに乗り移って・・・。耐えてればよかったのよ。あんたなんか。あの人とするとき、いつも何かと比べられてるような気がした。あの人がいなくなったあの日、ようやく分かったのよ。あんたが全部奪ってるんだって。なのに、あんたは私から何もかも奪うくせに自分は別の男と一緒にいるなんて!ふざけんじゃないわよ!!!」
実母の支離滅裂な暴言にその場にいた全員が絶句した。そしてそれを直で浴びていた杏奈が震えながらまっすぐとした目で言った。

「じゃぁ、お母さんは生まれた時から私のことが嫌いだったんだね・・・」

その言葉に実母は顔色一つ変えずに言った。

「あんたなんて、生まれてこなければよかったのよ。」

杏奈はその言葉に項垂れ放心状態となった。それを後ろで抱きとめながら、稔が話を続けた。
「もうあんたに娘を育てる資格なんてない。その人を殺人未遂及び保護責任者不保護罪で逮捕してください。それと今後は精神科の病院に入院させた方がいいと思います。彼女の話では後夫が逮捕された2年ほど前から精神を病み、ネグレクトが始まっていたと聞きます。彼女自身の今後については私が手配をします」
「あなたが?」警察が言った。
「私の職業は弁護士です。法的手続き等はお任せください。それに、先ほどからの話にもある通り、義父の逮捕の件、実母からの虐待及び殺人未遂、彼女の対人恐怖はひどく、今一体誰を信じればいいのか分からないほど困惑し、精神負荷が異常にかかっています。この状況の中で1人で知らない誰かといることは、彼女の精神崩壊に直結します。現状、助けを求めてきたように、私には何かしらの安心感を得ているようですので、このまま彼女の身体かつ精神の安定を図るためにも、彼女の今後は私に一任させていただければと思います。・・・今日はもう大丈夫ですか?そちらの方の罪状も決まりましたし、何より。彼女をいい加減休ませてあげないと。あまりにも可哀想です。」
稔はそう言って杏奈を見た。1人の警察官が他の2人を見てうなづくと、「では外へ。ご案内します」と言って扉をあげた。稔は杏奈に声を掛けたが返事がなかったため、そのまま肩をゆっくり押して部屋を出た。

「明日以降に家宅捜索等入ると思います。またご連絡をしたいのですが連絡先は・・・」
部屋を出た警察官は稔に話しかけた。稔は杏奈の手を握りながら、ポッケに持ってた名刺を警察官に渡した。
「これ、私の名刺になります。裏に個人用の携帯書いておきましたので何かありましたらこちらへ。」
「ありがとうございます」
「彼女のこともあるので、明日もしよろしければ私も立ち会わせていただければ」
「あなたが?」
「彼女の明日以降の生活のためいるものは全て移動させようと。もちろん警察の方の許可を得た上で。可能なら彼女も同席させた上で行いたいのですが、もはや自宅に帰るのもトラウマを呼び起こすでしょうし、あまり良策とは言えませんね。」
「確かに。」
「それと。」稔が言い切ると、警察官は稔を見た。
「この子の話から実の両親は双方血縁家族と離縁して結婚しています。今後連絡は取ってはみますがあまり期待できない上に、仮に何かしらの支援があったとしても関係を持つのは今の彼女にとっていいものなのか悪いものなのかは正直なんとも言えません。あの女性の引き取り先にも難しいと思います。なので、あの女性はもちろんのこと今後一切、この子に関する個人情報の開示、主に所在地などの開示は誰であってもやめていただきたい。もし開示が必要なことがあれば私に一度了承を取ってからにしていただきたい。」
「え・・・あ・・・はぁ。それはもちろんですが・・」
「よろしくお願いいたします。ほら、行くぞ。歩いて」稔が少し引っ張ると倒れるように杏奈は歩き出した。
「しかし、弁護士さんも大変ですね。助けを求められるなんて・・・」警察は少し困ったように言った。
「いやぁ・・・まぁ。私も初めてでしたけど・・・」
「口振り的に親族ではないし、恋人って訳でも弁護士さんだとないだろうし、どんな関係で?」警察は少し疑い深く聞くと。
「単なる知人ですよ。恋人なんてもっての外だし、友人と言うには距離があります。保護者・被保護者。そんなもんです。僕はあくまでも子どもの味方なので。大人として子どもの健やかなる成長を応援したいだけですよ。」とキラキラした胡散臭い営業スマイルで稔は返した。

家についた稔はそのまま杏奈を自分のベッドで寝かせることにした。稔は隣のリビングのソファーで眠るため何かあれば声をかけること。着替えを渡すので、着替えて寝ること。反応は薄いものの杏奈は服を受け取り、寝室へと入っていった。稔が風呂から上がり、寝室の様子を見てみるとよっぽど疲れていたのか杏奈は肩まで布団を被りスヤスヤと熟睡していた。ふと目を落とすとベッドの下には制服や靴下が脱ぎ散らかされて置いてあった。おそらく、着替えて寝ろと言われたため着替えたものの、脱いだ服を畳んだりするほどの精神的余裕はなかったのだろう。正直稔の言葉さえ聞こえているのか定かではなかったため、着替えて寝たという事実に少しホッとした。稔は、寝室の扉をゆっくり締めると椅子に腰掛け、パソコンを開いた。明日は有給をとって、杏奈のことに専念しよう。カタカタとパソコンを触りだした稔は、何故知り会って日も浅い女子高生にこんなにも自分は尽くしているのか、何故仕事でもないのにこんなをしているのか。普段の自分は他人と深い関係になることはなく、プライベートで他人のために動くことなどほとんどしないのに、なぜ今の自分は、”最近出会ったばかりの女子高生という”他人”の人生に大きく関与しようとしている”のか。心の奥底で疑問を感じながらも、明日以降の段取りや仕事を確認した。


「家宅捜索?」
次の日の杏奈は、昨日よりかはマシな顔をしていた。顔に疲労感や泣き腫らした跡など依然残るが、昨日に比べると顔に血色も戻り、普通の会話をできるようになっていた。杏奈が目覚めるとスーツ姿でネクタイを締める稔と目が合い、今朝食を作っているためその間に洗面所で顔を洗うように言われた。洗顔後、リビングに戻ると、机の上にトーストとバター、それと入れ立てのホットコーヒーが置いてあった。杏奈が席につきトースターをかじりじ始めると、向かい側に稔も腰掛け対峙した。そして今後の話を始めた。

「そうだ。今日、昨日の現場確認のため警察がお前の自宅に家宅捜索に入るらしい。母親もそうそう戻れないだろうしお前自身もう1人では暮らせない。解約等手続き等も今後しなくてはならないし。俺はとりあえず、その前にお前の家からお前の生活に必要なものを警察立ち会いの元、今日取ってこようと思う。お前も一緒に来てくれれば、いるもの一緒に持って帰れるけど、お前、あの家にはもう行きたくないだろう?」
杏奈は稔の顔を見ながらトースターを咀嚼した。
「学校にはしばらくの間、休む旨をこちらから連絡しておく。お前に今必要なのは休むことだ。とりあえず、今日ゆっくり俺の家で休めばいい。俺も今日は有給取ったし、お前のことに専念することにした」
ここで、杏奈は口を開いた。
「どうして・・・」
「ん?」
「どうしてここまでしてくれるの?」
「は?」
「確かに昨日動揺してあんたんちに来ちゃったけど、私はただの高校生で、あんたにとっては何のメリットも・・・」
杏奈の真っ直ぐな視線に稔は少し考えて、ニッコリ笑って言った。
「俺の未来への投資だよ!candy」
「は?」
「俺がなんかあったときに、お前の存在がプラスに働くかもしれないだろう?怪我して入院になったらその手伝い、俺が金銭に困ったとしても俺にはお前に貸した金があるから返してもらえる。昨日は口頭契約だったけど、今日明日で契約書に署名捺印させるから!お前は俺の命令に逆らえなくなるし。それに」
「?」
「俺、子どもの味方だから。未来ある子どもの将来を潰すだなんてこと、優しい俺にはできないよぉ。そういうわけだから深い意味はないよcandy。あくまでも、お前は子どもで、守るべき対象で、俺は大人としてお前を助けているだけだから。」
杏奈は少し笑うと、「分かった」と言ってコーヒーを飲んだ。
「家宅捜査、私も立ち会いよ」
杏奈はマグカップを机に置いて言った。
「確かに怖さは消えない。昨日あの場所で殺されかけたから事実だから。でも、あんたがいるし、それに。先に進めないのは困る。いるものだけ持ってきてあとは全部捨てて、次に進むよ。」
「強いな。」稔は少し驚いて笑うと、
「それほどでも。」杏奈は迷いのない笑みを浮かべた。

その後、杏奈と稔は家宅捜索に立ち会った。家は包丁の刺した跡や破られた大量の紙の破面、物が酷く散乱していて、昨日の状態はまざまざと残っていた。杏奈は思い出したのか少したじろぐと、決心がついたのか凛々しい顔となり自宅へと足を踏み込んだ。
警察に確認を取るつつ、15分ほどすると杏奈はバッグを持って戻ってきた。
「そんだけでいいのか?」稔が聞くと、
「うん。とりあえず学校でいるものとか服とか下着とか貴重品とか。後のものはまた解約する前に時間とって仕分けするよ。また付き合ってくれる?」杏奈が少し困った声で稔に聞いた。
「別にいいけど、、、これも時給換算してもいい?」稔がニヤッと笑って言うと、杏奈は目を一瞬見開くと安堵したのか「いいよ。その代わり、時給10円な」とニヤッと笑っていった。「それじゃ駄菓子もほぼ買えねぇだろうが!!」稔が大きな声を出すと、杏奈はケタケタと笑い始めた。

家宅捜索が終わり、稔は杏奈を自宅において出かけていった。食料をコンビニでいくらか買ってきたことや帰る道中で図書館により時間潰しの本を借りてきたため、杏奈は休息を取りつつ、稔の自宅にて時間を潰すこととなった。

稔が車を走らせて向かったのは昨日連絡をしたご夫婦の元だった。交渉してくれた友人ごしに今回の経緯と養子の話を伝えていた。実際にお会いするとご夫婦は70代程度の老夫婦で、自宅一階が地域の人がよく立ち寄る老舗の小さな食堂で、2階の自宅スペースの一室を間借りさせていただけるとのことだった。

「昔、息子たちが使ってた部屋なんですが、もう皆家を出て家庭を持っていましてね。話をしたら特に問題はないと言っておりました。」夫人がゆっくりと言った。
「こんな急にも関わらず承諾していただき、誠にありがとうございます。」稔は深々と頭を下げた。
「それと養子の件ですが、息子たちからも我々の好きにすればいいと。それに三國ちゃんのご友人と伺いましたので、そう変なことにならないだろうと、息子たちも了承してくれました。」
「ありがとうございます。」
「ただ、」夫人が言うと稔は勢いよく顔をあげた。
「私どもも見ての通り、もう老体です。今も地域の方々に支えられて、細々と自分たちのできる範囲で食堂続けさせてもらっております。住まいや食事など生活の面はお手伝いできますが、どこかに出向いたり金銭的な援助に関しては少し厳しいのです。養子に関して、お預かりさせていただくわけですから、息子たちもそこだけはとても心配しておりましたが、大丈夫でしょうか?」
「その点に関してはご安心ください。あくまでもご夫婦にお願いしたいのは彼女の衣食住に関することです。保護者会等の学校行事に関しては本人の意向も聞き、私の方で対応いたします。また金銭面ですが、彼女とは高校卒業後就職すると言う条件で、高校就学中にかかった金銭については私から借り、卒業後返済すると言う契約をしております。彼女の両親の親族にも先ほど連絡をしましたが、やはり協力的ではなく、関わらないで欲しいとまで言われる始末です。今の彼女にとって関わる人数が増えることがいいわけではありません。であれば、最初から無きものとして本人の可能な範囲で収めるのが得策かと。」
「なるほど。それもそうですね。」夫人はお茶を飲んだ。
「三國の方から家賃に関しては頂かないと伺ったのですが、本当によろしいのですか?」
稔の言葉に夫婦は顔を見合わせてニッコリ笑った。
「若い女の子をお泊まりさせるだけですから、そんな大層なものではありません。ただ、学校の終わった後やお休みの時にできる範囲で食堂や私どもの手伝いをしていただければ。それをアルバイトの代金として家賃として変えると言ったようなものです。ご飯を一緒に食べていただければ。私たちも久々に若い子と一緒にご飯が囲めると少し楽しみにしております」
「温かいお心遣い、本当に感謝いたします。ありがとうございます」
稔はまた深々と頭を下げた。

「では、また後日。本人と共に伺います。そのときに書類関係も一緒に持ってきます」
稔が車に乗ろうとすると、ご夫婦は少し笑いながら話を始めた。
「三國ちゃんからとても打算的で冷たい方と聞いてましたので、どんな方かと思っておりましたが、とてもお優しい方なのですね、倉門さんは。」
「はい?」稔が夫人の顔を見た。
「三國ちゃんも言ってましたし、私どもも話していて感じましたが、倉門さんあまり他者の中に深く入ることもなければ、自分の中に他者を入れることもないのでしょう。それなのに、その女の子のことに関しては自分が守ってあげないと、と言うくらいの気迫を感じます。まるで護衛か騎士のよう。」
「・・・・・」稔は黙ってしまった。
「打算的で未来への投資と言えばそうなのかもしれませんが、本当にそれだけなのかと言われば何か別のものも感じるような気がします。不思議ですね」
「・・・・そうですね」稔は夫人に何か見透かされたような気がして少したじろいだ。
「女の子、楽しみにしていますね。それとこれ。その子に渡してください。うちで作った天ぷらの余りです。素朴な味かもしれませんが、味に慣れてもらうためにもどうぞ。三國ちゃんはよくうどんに入れて食べにきますけど」
そう言って、夫人は稔に天ぷらの入ったビニール袋を渡した。稔はお礼を言うと、車を走らせた。運転中気晴らしにタバコを吸ったが、そのモヤモヤが消えることはなかった。
「ただいま戻りました。ってあれ?まだ営業中でしたか?申し訳ありません」
杏奈がご夫婦のいる食堂の扉を開くとそこには眼鏡をかけた若い男性が1人うどんを啜っていた。
あの後、杏奈はご夫婦の2階に間借りする事となった。正式な契約を交わし、ご夫婦とは養子縁組を、稔とは金銭的な契約を交わした。学校に関しては転校はせず、残りの学校生活も元の高校で過ごす事となった。バスが1時間に一本と言う頻度ではあるものの通学時間や待ち時間に本が読めると言うことで学校には住所変更のみ提出し、そのまま変わらない学校生活を送った。稔とは状況確認ということで月に1回会食をしていた。また、転居する前に契約した携帯電話で頻繁に連絡はしており、月1の会食も会うたびに本来の彼女らしさが出てきて、よく笑うようになっていた。
今日も杏奈は家に戻り、いつも通り平日は裏口からではなく食堂の扉から帰宅をした。杏奈が入り口で立っていると、男は「ん?」と言いながら杏奈の方を見た。奥の方から夫人が出てくると「おかえりー、杏奈ちゃん。ご飯できてるから手を洗って食べなさいねぇ。」と言ってきた。男は夫人の方を見るとうどんを飲み込み口を開いた。
「あれ?ばあちゃんちって誰かいたっけ?息子さんの娘?息子さん帰ってきてんの?」
すると夫人は男の前に立つと肩を竦めて言った。
「何言ってんだい。三國ちゃんのお友達の知り合いの子でしょ?この間、ここでご飯食べるときに突然その友達から電話かかってきて私に聞いたんじゃないか。『学生に宿貸してくれないか』って。三國ちゃんの友達だから二つ返事でOKしたし、息子たちだって『三國さんの友人なら』って言ってくれたんじゃないか」
夫人のその言葉に三國と言われた男は顎に手を当て「友達・・・宿・・・女子高生・・・」としばらく考えると何か思い出したのか、杏奈の方を指差して大きな声で言った。
「あー!!ミンの!!!」
「指を刺すんじゃないの!失礼な!」と夫人は三國の頭をポカッと叩いた。
三國はそうすると急に笑顔になって「なんだー、初めましてかー。君、炭酸飲める?」と杏奈に聞いてきた。急な展開に杏奈はついていけなかったが、とりあえず「の・・飲めないことはないですが・・・」と言った。すると、三國は調理場に戻っていた夫人に対して大きな声で「ばあちゃん、ビールとコーラの瓶とコップ二つちょうだいー!これもあとでつけといて!!」といった。そうこうしているうちに杏奈はその男の目の前に座らされた。男の食べていたうどんは片付けられ、目の前の机の上にはビール瓶とコーラの瓶とコップが二つと、三國が買ってきたのであろうコンビニの酒のつまみが並べられていた。
「ナッツとかサキイカとか食べたことある?うまいよ。あとピスタチオとか、夜俺が食べるはずだったけど、特別に食べていいよー。なんだったら、君の夕飯持ってきてもいいよ。どうせ天ぷらでしょ?俺がさっき食べてたから。レンチンしたら俺もつまむから。はいどうぞー」矢継ぎ早に三國はコーラとビールの瓶を開け、杏奈のコップにはコーラを、自分のコップにはビールを注ぎ出した。聞きつけたのか、夫人が杏奈の夕飯を温めて持ってきた。そして三國には「この子すごくいい子なんだから、あんまり意地悪したり嫌なことはしないであげてよ。あとあんまり遅くまで付き合わせないこと、つけの代金割増にするよ」と忠告をして奥へと帰っていった。

「へーい。はい、じゃぁ乾杯ー!あぁウマ!!ビール超うまい!でさ」
杏奈はチビチビとコーラを飲んでいると、急に話を振られてビクッと震えた。
「名前なんての?そういや俺詳しくミンから聞いてないんだよね。」
杏奈は少し黙ってからぼそっと「古屋杏奈」と答えた。
「古屋杏奈ちゃんね。杏奈ちゃんって呼んでいい?他になんか呼んでほしい名前とかある?」
三國のその言葉に杏奈は即答で「杏奈ちゃんでいいです。別の人に奇妙な名前で呼ばれているので、あなたがまともな感性していて良かったです。」と三國の目をまっすぐ見て言った。
「お・・・おおう。何か強い意志を感じるよ。まぁいいや。改めましてこんにちは。私、三國煌河と申します。みんなからはよく三國ちゃんとか呼ばれているのでお好きにどうぞ。ミンは三國って呼んでるわ。あ、ミンって稔のことね。あいつ幼稚園からの付き合いだからその流れで。仕事でも世話になってるし。」
三國は杏奈に自分の名刺を渡した。


「NPO法人の代表、地域コーディネーターにソーシャルワーカー?」
「んな大それなこと書いてるけど、やってること何でも屋に近いから。」
「何でも屋?」
「そう。屋根の瓦が吹っ飛んだから助けに来いだの、親戚の葬式に出るから数日飼い猫の預かれだの。あ、あと近所の子どもたちと時々サッカーしたりとかしてる。この間あいつら試合に勝ったらしくて飯奢らされたー。」三國は買ってきた焼き鳥を食べながらブツクサ言い始めた。杏奈は名刺の裏を見るとそこには株式会社の名前と役職が書かれていた。
「会社経営されてるんですね、しかも副社長・・・」
「それ元嫁の会社ー。会社立ち上げるから名前貸せって言われて、共同経営者になったの。一応載せてるけどほぼ名ばかりだよー。」
「奥さんと別れたのに共同経営って・・・しにくくないんですか?」杏奈は不安そうに聞くと、「まぁ別に嫌いで別れたわけではないから。お互い結婚に全く興味なかったんだけど、あちらさんの親がうるさくて彼女がブチギレて籍入れたの。でも冠婚葬祭とか夫婦で出なきゃいけないことが多発してさ。付き合ってる当初からお互い恋愛っていうより思想が似てる仕事のパートナーとしての気持ちが強くて、お互い無駄なもんに出てるより仕事したかったんだよね。俺んちは俺だけ出席してても何も言わなかったんだけどさ、相手方が俺が出ないと説明もめんどくさくてさ。彼女が、”結婚する代わりに今後私の人生に口出ししない”ってことを親に約束させてたから、結局早々に離婚。円満離婚だし、俺の仕事の都合もあって家分離したけど、今でも仲良いし、よく飲みに行くよ。元嫁と」と三國はビールを飲みながら言った。
「本職は表のNPO。最近じゃ市とかから委託されて地域おこしとかそういうことをさせてもらってる。ここ、曙町もその一つ。前はもうちょっと寂れてたんだけど、いろいろ工夫したりして前よりか住みやすくなったし、子育て家庭も少しだけど増えたよ。法律関係はミンにお願いすることもあるし、税務関係は嫁の会社の税理士さんに気持ち安くやってもらってるし。人に恵まれてるよ。あ、ミンといえば」
三國はそういうとナッツを取る手をやめて、急に顔をあげた。

「杏奈ちゃん。ミンとどういう関係?俺、あいつと付き合い長いけど、あいつに女子高生の知り合いなんか聞いたことないし。昔から女関係ひどいけど、絶対年下とは遊ばないし、未成年なんてもってのほか。なのにあの日、すごいありえないくらい焦ったトーンで電話してくるからさ、あんなに余裕のないあいつ初めて見た。しかも話聞いてみれば、女子高生の宿決めに、養子問題でしょ?面倒な仕事だったとしてもあいつなら困りはしたとしても、焦りはしないだろうし。基本、他人に心を開かないあいつが君のことに関してはあんなに真摯にやるなんて。すごい子だなぁと思ってたんだよね。どういう関係?あいつの弱みでも握ってんの?杏奈ちゃんそんな悪そうな子には見えないけど。」
それは杏奈自身も不思議に思っていることだった。稔の心がわからない。なぜ自分にここまでのことをしてくれるのか、そしてそれはどうやら一番知っているであろう目の前の幼なじみでさえ、教えてくれないようだった。杏奈は少し間を置いてから答えた。

「わかりません。お・・倉門さんとは図書館でよく会ってました。私が勉強していると話しかけてきたり、本を取ってくれたり。最初は何なんだろうと思ってましたが、博学で話も面白くて、一緒にいるのが楽しかったので、次第にお茶をしたり、本の感想を言ったり教えてもらったりしてました」
「えーあいつそんなロマンチックなナンパ方法しだしたのー?何それ、ナンパ行き詰まってんの?ナンパスランプ?今度ドンマイって言お。」
三國は特に気にする様子は無くバクバクとつまみと食べ尽くした。杏奈は三國と話しているうちに船をこき始めた。三國は笑いながら、晩酌に付き合ってくれたお礼を言い、杏奈を2階の自室へと送って行った。


次の日、月に一回の稔との対面の日だったため、杏奈が出かけようとすると夫人から三國が昨日のお礼に車で待ち合わせ場所まで送ってくれると声をかけてくれた。しばらくすると、昨日よりもラフな格好をした三國が家の前まで来て、杏奈を乗っけて走り出した。
道中、いろいろな話をした。三國は倉門とはまた違った意味での面白さがあった。話しやすく、反応も話に応じて変えてくれるため、どんどんと話が進んでいく。これが三國の人の良さでもあり、仕事で成功しているわけでもあるのだなと杏奈は実感した。
待ち合わせの駅に着くと杏奈はお礼を言って車を出ようとした。すると三國は杏奈に”連絡先を交換しよう!”と自身の携帯を杏奈に向けてきた。杏奈が少し考えたのち頷くと、三國は「やったー」と言いながら連絡先を交換した。
「俺、人との出会いは大切にしたいんだよね。だからこれも何かの縁。杏奈ちゃんは俺の友達だから。なんかあったら連絡して!面白かったことでもいいし、困ったことでも何でもいいよ。あ、ばあちゃんの弱点見つけたら教えてね!あの人頭いいし、口が立つから勝てないんだよね。それとこれ貸してあげる」
三國は杏奈に1冊の本を渡した。杏奈がそれを受け取ると、三國は笑って言った。
「いつかまたそっち顔出したときにもらうから返すのいつでもいいよ。その本、俺と元嫁がいたゼミの先生の本でさ、俺らの師匠なの。だから少し俺らがやってることわかると思うんだよね!じゃ!ミンに早いうちご飯奢れって言っといてねー!まったねー」
そういうと三國は杏奈を降ろして、颯爽と車を走らせた。

チョコレートケーキを食べていると、何やら目の前の稔の様子がおかしいことに杏奈は気がついた。今日会った瞬間からそうだ。会った途端に何か顔を曇らせ、今に至る。杏奈にとっては理由も分からないし、とりあえず話を進めようと思い、行きたかったカフェへと行くことにした。
「ねぇ、何かあった?」
杏奈の言葉に稔は「は?」と返した。
「いや、なんか。今日いつもと様子が違うからなんかあったのかと。」
杏奈の言葉に稔はハッとなると、少し考え「匂い・・」とボソッと言った。
「は?」杏奈は食べるのをやめて言った。
「お前、なんかいつもと違う匂いがする。その何というか・・・男物の香水みたいな・・・それに会った時、買った本持ってたけど何か内容お前らしくないというか何というか・・」
「弁護士のくせにはっきりしねぇな。あー、車にいたから匂いうつったのかも。これ、三國さんの」
「三國?」稔は意外な名前に眉を顰めた。
「そう、三國さん。昨日食堂にご飯食べにいらしてて初めてお会いしたの。それで一緒に話してたら夜遅くなっちゃって。付き合わせたお礼にここまで送ってくださったの。あとこの本も。三國さんと元奥さんのお師匠さんの本だそうで、勉強で貸してくださったの。おっさんの友達とは思えないほど優しい人だね。後早くご飯奢れって言ってたよ。三國さん」
「何そのトゲのある言い方。まぁでも三國か。奢れって言ったって、あいつの予定あわねぇじゃねぇか。そっか。ならいいや。ケーキ食べよ!camdy」稔は何かに納得するといつもの胡散臭い笑顔でニッコリ笑いチーズケーキを食べ始めた。その時だった。杏奈の横から若い女が稔の名前を呼んだ。稔と杏奈が声のする方を見ると宝飾品をキラキラつけた綺麗な女がそこに立っていた。稔は女性に面識があるのか、「あぁ」と言った。女は杏奈を気にすることなく話を始めた。

「この間はディナーをありがとう。とても美味しかったわ。」
「それはどうも。こちらこそ綺麗なものを見ながらのご飯は格別だったよ」稔はお得意の笑みを浮かべて言った。
「今度はいつ誘っていただけるのかしら?」女はぐいぐいと稔に迫ってきた。
「それはまた後日。それと申し訳ありませんが、今、仕事中でして」
稔がそういうとやっと女は杏奈を認識したようで稔から離れた。杏奈は気まずそうにチョコレートケーキをチビチビ食べていた。
「あら、お休みの日なのに?それにこんなにも若い方なんて。まだ学生でなくて?」女は手を口に当てて驚いた。
「休日返上してですよ。それに後見人とか、若い方でも契約者になる方はいますよ。というわけで申し訳ありませんがまた後日。」稔は丁重ながらも女に退場を促していた。女は納得すると「じゃ、また連絡待ってるわぁ」と言って立ち去って行った。
「はぁ。あぁ、ごめんな。なんか変なことに巻き込んじゃって」
「別にいいよ。それにしてもあの人とは飯に行くんだな、あんた。私にはケーキとかなのに」
「は?」
杏奈の予想外の反応に稔は杏奈を驚いてみた。すると杏奈は少し膨れた顔をしながら言った。
「私もディナーで高い肉食べたい!!!!」
杏奈のそのセリフに稔は少ししてから笑い出した。
「お前、肉食いたいのか、そうかそうか。でもな、あの人は大人だから食べれるけど、お前は未成年だからそんな高い店で夜には食べれない。もっと大人になってからだな。ヤバイ、食べ盛りの子怖い。面白すぎて腹痛い」
稔は腰を曲げて笑いを堪えていた。杏奈はそんな稔を見ることなく、横目で何かを考えながらパクパクと残りのチョコレートケーキを食べて行った。

「乾杯ー。おめでとう20歳。ほら念願の高いディナーだぞ、良かったな」
それから数年経ち、杏奈は20歳の誕生日を迎えた。高校も無事卒業し、曙町から少し都会にある町で杏奈は就職と1人暮らしを始めた。卒業とともに夫婦との養子縁組は切ることにしたが、月に1回は顔を出し、未だにいい関係性と保っている。
稔とは卒業後、しっかりとした返済と状況確認ということで会う頻度が月2回に上がった。前に比べて家も近くなったので、会いやすくなったというのも原因の一つだった。そして20歳に何が食べたいと稔が効くと、「高いディナー」と即答で返ってきたため、稔は笑いながらホテルの最上階の店のディナーを用意した。初めて見る光景に杏奈は驚きつつもバクバクとディナーを食べ尽くし、稔は成長を感じ微笑みながら、ワインを口に含んだ。
食べ終わった2人は外に出た。稔は「お前これからどうする?いつも通り電車で帰る?」と聞くと、杏奈は「もう一軒来て欲しいところがあるの。」と言った。
「一緒に来てくれる?」
杏奈は何かを決めたような目で稔を見た。いつもとは違う杏奈の様子に、稔はうなづいてついていくしかなかった。
杏奈がついて行ったのは近くにあるホテルだった。
チェックインしてあったのか、そのままフロントをスルーしてエレベーターへと乗り込んだ。そして階に止まると杏奈は「降りて」と稔に言うと、何の迷いもなく、部屋へと行き、扉の施錠を解除した。
「入って」杏奈に促され、稔は言われるがまま入ることしかできなかった。稔が困惑していると、杏奈は部屋の鍵を閉め、稔の方を振り返った。

「お前、これは一体どう言う。ホテルまで取って・・・」
稔が杏奈に説明を求めて言うと、杏奈は目に強い意志を宿しながら、稔の目をまっすぐ見て言った。

「”倉門さん”。あなたに今日、私との今後の関係を決めて欲しいの」

杏奈のその言葉に稔は驚きを隠せなかった。
杏奈は呆然とする稔を無視し言葉を続けた。

「倉門さんは私のことが好き?」
「え、急になんだよ」
「それは私とできるってこと?」
「は?お前何って・・」
「もう一回聞く!倉門さん!あなたは私のことが好きですか?その好きは、私とできるって意味ですか?」
杏奈はだんだん声が震えてきた。
「・・・お前一体何を」

「あの絶望的な状況の中から私を助けてくれて、過去にあんなことがあったのに変な目で見ないで接してくれて。誰を信じたらいいのか分からない中で貴方だけが信じられた。そんな人を・・・好きにならないなんてそんなこと・・どう考えたって無理でしょ?」
稔は呆然と杏奈の言葉を聞いていた。

「私は倉門さんが好き。今まで男は勝てない存在で、抗うことのできない恐怖の対象だった私が。あの行為が恐怖でしかなかった私が、あなたとならその行為をしてもいい。したいとまで思うの。・・これっておかしなことなの?」

2人の間に沈黙が流れた。稔が何と言おうか言葉を選んでいると、またしても杏奈の方から言葉を発した。


「ねぇ、私はいつまであなたのcandyなの?」
「え・・・」
「そりゃ、常にモテ続けるあんたのことだから!今までの付き合ってきた人だってみんな大人っぽくて、綺麗で。確かに私は出会った時は高校生で、子どもで。あんたにとっては守るべき保護対象だったのかもしれない。でも私も20なんだよ・・・!もう守られるだけの子どもじゃない!なのにcandy、candyって。私はいつまであなたに転がされるだけのcandyなの!?いい加減にしてよ!!!」
「お前・・・」
俯き、握り締めた両手を腰の隣で震わせて涙を流す杏奈に、稔は手を伸ばした。
「お願い。もう子どもじゃなくなった。限界なんだよ。私と関係を続けたいと思うなら、この場で私の全てを奪って。でもそう思えないのなら・・・」
「・・・・・」
「あなたの言葉で全てを壊して。私ももう傷つきたくないし、あなたも傷つけたくはない!だから今ここで決めて!」
「!!」

一体自分は何をしているのだろうと稔は頭の片隅で思った。そして、あの時言われた言葉を思い出した。

「本当の意味での生きる楽しさをあんたは知らない」
「相手がさ、本気で来てるんだよ。それを飄々と返したら可哀想じゃん。本気で来てるなら、本気で返してあげるのが人としてのマナーってもんじゃない?そんなこと続けてたらいつまで経っても本当に欲しいものは手に入らないと思うよ。」
「寂しがり屋なあんたをちゃんと見てくれる人と巡り合って、本気でぶつかってその先にある何かを掴んで欲しい。私はあんたに幸せになって欲しいんだよ。」

目の前の杏奈を見た。震えて泣く彼女を見るのはあの日以来だった。でもあの時と違って彼女は自分の足で立っていて、自分の意思で人生を選択しようとしていて。高校生だった頃とは違う、金髪のおかっぱだった髪の毛は今は彼女本来の落ち着いた髪の毛となり、長さも伸びて会うたびに大人の女性になっていくのを感じた。ケラケラとよく笑うようにはなったが自分といる時の目は変わらなくて、横でご飯を食べることに優越感を覚えたこともあった。


そう思ってはいけないと思っていた。
だって、彼女はそうじゃないかもしれないから。
だって、そうだと自覚してしまったら。
そのことを彼女に知られてしまったら。
そして、それで彼女に拒絶されたら。


自分はどうやって立ち直ればいいのか分からないから。


自分がこうして臆病でうじうじと内なる戦いをしている際中、10歳以上年が下の彼女はひたすら悩み、苦しみ、考え、そして、決断した。

振られるかもしれない覚悟を決めて。
相手に拒絶され、もう2度と会えなくなるかもしれないリスクを抱えて。

「本気で来たなら、本気で返す」

「関係を続けたいなら全てを奪って!そうじゃないなら全てを壊して!!」

もういい加減、腹を括らなくてはならない。だってそうじゃないか。
本気で来たのなら、本気で返さないと。

稔は俯いて震えながら泣く杏奈をゆっくり抱きしめた。そして、杏奈の耳元で震えるような声で囁いた。


「ごめん・・」
「へ?」
「ずっと逃げててごめん。自分のことばっか考えてて。お前のこと全然見えてなくて」

稔のその独り言のような反省の言葉に杏奈は困惑した。

「それはどっちのごめん?これは何のハグ?見れないってこと?慰めのハグなの?そんなの要らないよ。切るんだったら勢いよく切ってよ。優しくされると未練がましくな・・」
「俺はこれからもお前と一緒にいたい。」
「は・・・」

稔は杏奈の言葉を遮るように言った。

「初めて会った時からそうだった。危なっかしくも強くて、強そうに振る舞っているけど内心ボロボロで、助けてあげたい、守りたいと思った。だけど、お前は未成年で、俺は大人で。かっこ悪いところを見せたくなかった。お前に幻滅されたくなかった。お前だけは失いたく無かった。だから・・・」
「相変わらずごちゃごちゃうっせぇな。テメェの人生の反省文聞くために勇気出して告白したわけじゃねぇんだよ、こっちは。で、結局何?やれんの?やれないの?生殺しはやめろ、傷口が開きまくって跡残んだろうが、アホ。」

胸の中で泣きながら暴言を吐く杏奈に、稔は諦めたように口角を上げると、そのまま横のベッドへと杏奈ごと倒れた。杏奈はベッドの上とはいえど突然の出来事に驚き、「痛っ」と言いつつ上に乗っかった稔の顔を睨みつけた。
「いきなり何しやがんだよ。てかどけろ重い!!」
杏奈が下でワーワー騒いでいると稔がクスクスと笑い出した。
「何だよ、さっきから気持ち悪りぃ。何がしたいんだよ、一体」杏奈は怒りながら言った。
すると稔はやっと起き上がり、杏奈の顔の両横に手をつくと勇敢な彼女に笑顔で白旗をあげた。


「好きだよ、杏奈。離れたくないほどに」

杏奈は初めて呼ばれた自分の名前に驚いた。そして、しばらくして言葉の意味を理解したのか動揺し出した。
「え・・マジで?嘘。予想してなかった・・・」
「は?」
稔は驚いて杏奈は顔を赤くして手を口にやるとワタワタと慌て出した。
「いや・・・だって。さすがに無理かなぁって。子供としてしか見れないとか言われるかと思って。しかもこんな強引な状況での告白だし。でも、え・・。好きって言われてしまった。どうしよう・・」
杏奈の普段見たことのない動揺っぷりに稔は嬉しさと喜びのあまり声に出して笑ってしまった。
「お前、さっきの威勢はどうしたんだよ。え、何?奪えばいいの?俺、お前のこと」
杏奈はハッとなると、落ち着きを取り戻した。
「本当にいいの?後日また落ち着いてからでもいいよ、俺は。別に無理にすることでもないし。今日はもうこのまま寝ても。」
「いやもう、どっちにしろ寝れないから。ドキドキして寝れないくらいなら一思いにやって欲しい。」
杏奈の発言にまた稔は大きく笑った。そして2人は見つめあうと、杏奈は右手で稔の顔を触ると少し照れ臭そうに笑った。

「とりあえず、ファーストキスから奪ってくれる?」
杏奈のその言葉に稔は驚いた。

「は?お前ファーストキスしたことなかったのか?!だってお前・・」
「あんな強制的に奪われ、口から血も吐いたようなやつ、私のファーストキスにカウントしてたまるか。冗談じゃない!!」
杏奈は強く吐き捨てた。稔は言葉の内容に引きながらも、前から思っていたことを杏奈に伝えた。

「お前はっきり自分の意見いうなぁ。そういや、初めて会ったときも。お前は何も無かったかのように立ち去るし、図書館で会っても興味なさそうだったからさ、何でか疑問だったんだけど。お前、自分のことはどうでも良かったんだな。友達から聞いたのかクラスで噂になってたのかは知らないけど、他の子達のために自分が犠牲になったんだろう。だから、報復されることを恐れず正義感で騒ぎ起こしてあいつ捕まえたんだろ。ほんと・・・すげぇよお前。」
すると、杏奈は少し考えて話し始めた。

「私、男って怖くない。だって、怖いという感情すら失わざるをえなかったんだもん。男は従うべき存在。だから何をされてもそれをただ受け入れることしか、私には自分を守る方法がなかった。でも貴方は違った。守ってくれた、支えてくれた、どんな気持ちであれ私を大切に愛してくれた。だから、何があっても貴方だけは信じれたし、信じたいと思った。そして何があっても受け入れようと思った。だから、私。今、幸せよ」

杏奈の嬉しそうに泣く顔を見て、稔はその美しさに心を惹かれ、そのまま杏奈の唇にキスをした。離れて見つめあった2人は少し笑った。
「どうでした?ファーストキスのお味は」稔が照れ隠しで言うと、杏奈は少し考えて
「さっき食べた肉の赤ワインソースの味がするー」と言って、2人で顔を見合わせて笑った。

雪が降りそうな夜、クリスマスのイルミネーションが町中に灯りを灯していた。皆白い息を吐きながら、帰路に着くため走るものやデートを楽しむカップル、様々な人が行き交う中で稔はショーウィンドウを眺めていた。すると後ろから小走りで走ってくる女がいた。女は稔の元に着くと「お待たせー」と言ってくしゃみをし赤い鼻に指を当てた。稔はそれを微笑ましく見ると、「行こうか」と言って女をショーウィンドウ側にし、自分は車道側を歩いた。

「欲しいもの買えた?」稔が歩きながら女に聞いた。
「うん、まぁね。これで明日三國さんたちちゃんと迎えられるよ」
「迎えられるって、三國と澪さんだろ?何を買って」
「おつまみ屋さんの高級おつまみ3種。三國さん、明日お酒持ってくるからどんちゃんやりたいんだって」
「あんのアホ!人んち何だと思ってんだよ!」稔が憤慨している、女はケラケラと笑った。
「お姉さんも真希ちゃんも理生君も遊びに来てくれたし。従兄弟ができるのが楽しみみたい。そういや毎回、私お姉さんに『あんなんだけど、何卒どうか・・』て頭下げられるんだけど、あんた一体お姉さんに何したの?」
「・・・あのやろぉ、と言うか何で俺の周りってそんなハキハキいう女多いの?怖いんだけど」
「あんたが斬られたいドMだからじゃない?」隣の女は言葉通りバシッと斬った。
「うぅ!」稔は胸を押さえた。
「あんた弁護士のくせにプライベートすっごい曖昧なものの言い方とかするのよね。弁護士って白黒はっきりつける仕事じゃないの?減刑とかの同情するポイントはあったとしても。で、ウダウダしてるから相手にバシッと言って決めて欲しい、切れ味よく斬られたい。情けない自分を斬って欲しい」
「うぅ!もう勘弁してください・・・」稔がまたしても胸を強く押さえると、女はふーとため息をつき、「君はこうはならないでねー。お姉さんや私を見習うのよー。」と女は自身のお腹をさすった。

「そういや、お姉さん、フラワーアレンジメントの資格取ったんですって。私もやってみようかなぁ、産休中家で暇だし。」
女のその言葉に稔は体を上げると、ある提案を始めた。
「そういやさ、candyまたあれしないの?金髪こけし 」
女は「はぁ?」と勢いよく稔の顔を凝視した。
「これから当分出産と育児で仕事とかしないじゃん。なら、また金髪こけしヘアにしたら?今度髪切るんでしょ?バッサリ」稔は半笑いで女に言った。
「そんな露骨に笑われることが分かっててするわけねぇだろ!!人なんだと思ってんだよ!」
プンスカと怒る女を見て「えぇー、可愛いのに〜。」と稔はニヤニヤと笑った。
「それと!」女は稔の腕を引っ張った。稔が女の顔を見ると、女は怒ったような声で言った。
「その”candy”って呼び方いい加減やめろ!もう子供じゃねぇんだから!いつまで呼ぶ気だよ!」
すると稔は何の躊躇いもなく「え?一生」と言い出した。その発言にまた女は怒った。
「子どもが真似したらどうする?というかなんて説明したらいいんだよ!」
「別に母親のあだ名って言えばいいし、何なら洋画でも見せれば?」
「洋画とこれとは、意味がちげぇだろ!!とにかく!子供が生まれる前にその呼び方直せ!」
「えぇー。」
「それか!」
「ん?」
「2人の時だけに徹底してくれたら、2人の時だけ呼んでもいい。特別に。」
女が稔の顔を見ず、進行方向を向いて言った。マフラーで鼻の下は隠れているものの、寒さのせいか自身の発言のせいか、その顔はまるでりんご飴のように赤くなっていた。その姿を見た稔は、
「やっぱり、君は永遠にcandyだ」
と言った。
「あ?何だって???」女は睨みつけるように言った。

コロコロと口の中で転がるキャンディは甘い。簡単に口に運べて、最終的には溶けてなくなるか、噛んで砕いて飲み込むのか。どちらにせよ、口の中での存在感は大きく無くなった後でさえその味を残して行く。
コロコロと表情や姿を変えて行くキャンディに、転がされ、振り回されていたはどっちだろう。
変わる表情、増して行く魅力。初めて見た時からもう心は奪われ、虜にされ、自分ですらずっと出来なかったことを何の躊躇いもなくやってのけられた。
本当に助けられたのはどっちだろうか。

Candy

「そういや、金髪で思い出したけど、あんたタバコ吸わなくなったね。何?ついに健康診断ででも引っ掛かったの?」少し落ち着いた女がまた話を降った。
「いや、よっぽどのことができて、辞めざるを得なくなったから?それに元々そんな吸ってなかったしね」稔は目を閉じながら言った。
「ふーん」女はそう言うと、左手で稔の腕を掴み、右手で自身のお腹を触って声を出した。
「どうかお腹の子が、女子高生に手を出し、剰えcandyと呼ぶような変態になりませんように!!!」
「おい、語弊をある言い方するな!出してない、飯を一緒に食べてただけだ!!」

稔は大きな声で否定すると、女はケラケラと大声で笑った。それを見てつられて稔も笑い始めた。

「candyはずっと俺の中ではcandyだよ、辞める気はないね」

稔が愛おしそうに”candy”に呼ぶと、”倉門杏奈”は諦めたように「勝手にしろ、このおっさんが!」と言葉を吐き捨てた。2人は左手の薬指に同じ指輪を輝かせ、2人の帰路をゆっくりと歩いていった。


表紙:https://pixabay.com/ja/users/nietjuh-2218222/ 様

内部画像:https://pixabay.com/ja/users/m_tanzid-3910068/ 様

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