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必要な時に、生温い記憶を

階段を上った先にある店の入り口。
2階。防犯用の明かりだけが付いている。
バイトの帰り道にふと見つけた。

その階段の上にある扉で、大学時代サークルのみんなで行った店を思い出した。
イタリアンだったかが出てくるようなよくあるちょっと薄暗いいい感じのバル。

そこでなんかあったわけでも、特別いい思い出があるわけでもない。
でも、うわ、忘れてたなそんなこと、と思ったのだ。
そんなことも忘れてたなと。

生温い大学時代の思い出は、この先同じ空気感で再現されることはもう一生なさそうなくらい何だかんだ最高で、
上京し一人で暮らす地で擦り減ったバイト帰りの私にはとても懐かしい場所に感じた。

忘れたくないと思うことは、あの頃の記憶が離れていかないでくれと思うことは、さみしいことだろうか。
過去のことに執着せずに、新しいより素敵な思い出を更新していきなよと思うだろうか。

それもそう。
生きていくというのは正にそういうことだと思う。

でもそれだけなのは私は嫌だ。
忘れるのは無くなることとは違うと言う人がいるかもしれない。
でも無くなるということだと私は思う。
私が思い出さなければもう誰も私に思い出させようとしてくれない様な思い出なんて、忘れればもう無くなるのと全く同じだ。

いつも、なんて必要はない。
大事な時に、自分に必要な時に、大切な記憶を思い出せるようにしたいのだ。


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