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IoT時代における音声体験のデザイン

#Designship2018 でお話させていただいた内容を公開します!

まずは簡単な自己紹介をさせてください。私は新卒からずっとアプリやサービスの「画面」に関わるUX/UIのデザインをしてきましたが、2018年より株式会社Voicyにて音声体験のデザインにチャレンジしています。

ボイスメディアVoicyというサービスをご存知でしょうか?知らない人はぜひ下記のCMを見てみてください!


ボイスメディアVoicyでは著名人からコアな専門家まで、幅広い分野の人たちが「声のブログ」としてご自身の声を配信する新しい音声メディアです。おかげさまでサービスがtwitter等で話題になり、順調に伸びています。

しかし、ボイスメディアVoicyで実現できている世界は、私たちが本当に叶えたい世界のたった5%くらいです。私たちが叶えたい世界のお話と、そこで「音声体験のデザイン」がいかに重要な役割を果たすかをお伝えします。

突然ですが、みなさんが思い描く「豊かな生活」ってどんな生活ですか?今はスマートフォンが普及して、いつでもどこでもほしい情報やエンタメが手に入り便利な生活が送れているなと感じます。

一方で、情報を得るために人がスマートフォンに固執しすぎているように見え、不安に思うことがあります。みんな俯いて必死にスマートフォンを操作しています。小さな箱に捕らわれすぎていないでしょうか?人がデバイスに合わせて生活しているように感じます。

私が思い描く豊かな生活。それは、朝目覚めたり、シャワーを浴びたり、車を運転したり・・・ただ“あたり前な生活”をするだけで必要な情報や快適な体験を得られる生活です。

IoTの時代になり、身の回りにあるありとあらゆるプロダクトがインターネットに繋がると、生活の各所から情報を得られるようになります。このときプロダクトと私たちユーザーはどのようにインタラクションするのが良いでしょうか?

それは、手の操作や目線の集中を必要とせず、小さいお子様からお年寄りまでが自然と使いこなすことができる「音声」なんです。

音声はライフスタイルメディアになります。

IoTでありとあらゆるプロダクトがインターネットに繋がるようになると、"あたりまえに生活"するだけで、自然に"いつでもどこでも"必要な情報を"音声"によって得られる生活時代がすぐにやってきます。

音声がライフスタイルメディアになるためには、まず仕組みとしてIoT機器に音声を配信するインフラが必要です。Voicyでは"音声プラットフォーム"を作っています。また、そこで配信された音声が、どのように聞かれているのか、データを収集しています。

音声がライフスタイルメディアになるためには、音声のインフラだけではなく、"音声体験のデザイン"がとても重要な役割を果たします。

この図はスマートフォンの普及の変遷を表しています。スマートフォン初期は加速度センサを使った面白アプリなど、プロダクトアウトなアプリが溢れていました。その頃は今のようにスマートフォンがこんなに生活に無くてはならないものになるとみんな思っていなかった。そこからUXが洗練されていって、カレンダーやSNSなどのキラーサービスが出てきて、一気に普及しました。

音声は今黎明期にあり、同じような道をたどります。

音声体験のデザインにおいては、今までのUIの考え方とは全く違うブレイクスルーが起こります。

GUIの場合、スマートフォンのメディアをデザインするとき、画面比率など、その対象となるデバイス専用フォーマットに合わせてデザインする必要があります。また、そこでデザインされたものは他のデバイスに当てはめることができません。これは"one media - one format"の関係です。

一方、音声においては、その特性上あらゆるプロダクトにアドオンできるため、各シーンに最適なフォーマットに合わせてデザインする必要があります。例えば、「ベッドでリラックスするときに最適な音声」「家事が捗るために最適な音声」等。これは"one media - multi format"の関係です。

今、スマートスピーカーが生活に馴染んでないのは、音声がスマートスピーカー専用のフォーマットにデザインされているからです。つまりまだ"one media - one format" の世界観の中での音声体験になっています。

今後は、multi formatを見据えた音声体験をデザインする必要があり、そこでUXの知見が生まれてキラーサービスが生まれれば、スマートフォンと同じように一気に普及します。

音声はたくさんの選択肢を与えるのに不向きです。1〜10までの選択肢を音声で読み上げられても覚えることができません。1つの最適解を提示することが大事です。つまり、"リコメンド"です。最適なリコメンドの体験をデザインします。そのためには、ユーザーのコンテキストを正しく理解する必要があり、データベースからユーザーの状況を読み取ってPDCAを回すスキルが大事です。

音声体験を良くするために必要なのは、仕組みとして音声を配信するためのインフラと、音声体験のデザインとしてone media - multi formatの世界観の中でデザインすること、適切なリコメンドUXが大事です。

実はボイスメディアVoicyは実証実験として運営しています。だれにどんな音声が刺さるのか、どこでどんな音声が再生されているのか、データを取得してPDCAを回しています。その中で音声に関してのポジティブな可能性に気づいたので、紹介します。

1つめ、音声には「好き」が集まります

他のSNSでは炎上していたインフルエンサーの方が、Voicyを配信しはじめたとき、一番たくさん集まった言葉は「Voicy聞いたら○○さんが好きになった」でした。活字のメディアでは適当に全文を読み飛ばしていても、要点だけを掻い摘んでその人のことを知った気になります。そこを取り上げて叩いたりできてしまいます。けれど、音声ではそうはいきません。そもそも嫌いな人の話を最初から最後まで聴くことなんてできないからです。最後まで聞いて理解した人だけが残るので、必然的にその条件がフィルターになりファンだけが残ります。

「好き」が具体的な形にもなりました。 Voicyで配信している匿名パーソナリティーがオンラインサロンを立ち上げたところ、月額およそ10,000円にも関わらず100名以上の人が集まりました。このコミュニティーは高い熱量で活動しています。

2つめ、音声は何度聴いても「好き」になる

ボイスメディアVoicyでは個人のチャンネルにスポンサーがつきはじめています。一例として、働き方についての発信をしている何人かのパーソナリティーに株式会社アトラエ様の「転職サイトGreen」がスポンサーについてくださっています。パーソナリティーが毎回自身の放送内で「この放送は『IT/Web業界に強い 転職サイトGreen』のスポンサーでお届けしています」というメッセージを読みます。

するとこんな反応がありました。リスナーにGreenの印象についてアンケートをとったところ、ほとんどの人が「良い」と答えました。また「毎朝Voicyを聴いているから転職=Greenと洗脳された」というツイートもありました。メッセージの完聴率(最後まで聴いた人の割合)はなんと90%以上です。

一般的なweb広告や動画広告はスキップされがちです。また、露出が増える毎にネガティブな印象をもたれるリスクもあります。音声においてはそのようなリスクが少ないことがわかりました。

3つめ、音声は習慣化する

40分。これはVoicyのリスナーが1日にVoicyを聴いている時間の平均です。みなさんは1日に40分も触れているメディアってありますか?結構長い時間だと思います。このように音声は生活に染み込むことがわかりました。

私の生活では、すでに音声がライフスタイルメディアになる兆しが見え始めています。朝スマートスピーカーで天気と予定を確認して、通勤中にVoicyでニュースを聴いて、お風呂でVoicyの声のブログを聴いて、就寝前にオーディオブックを聴きます。一日中耳活していますが、かなり快適です。

もう、お天気を確認するためにわざわざアプリを開かなくなりました。なん年後かには「昔は天気を確認するためにわざわざアプリ開いていたんだね」と言われる日がきます。

これは私がとても感動したツイートです。鳥肌が経ちました。私が実現したかった理想の世界の片鱗が垣間見えたからです。通勤時間に出会える素敵な景色をどうか見逃さないでほしいです。

音声体験をどんどん良くしていって、ライフスタイルメディアにしたい。そのためにはUXデザイナーの力が必要です。活躍の場所がたくさんあります。

音声市場を盛り上げるためにこれからも頑張ります!


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