
[カレリア民話] おんどりとめんどり(KUKKO DA KANA)
おんどりとめんどり
昔、おんどりとめんどりがいました。おんどりとめんどりは、石うすを持っていました。彼らが(うすを)3回まわすと、ケーキにパイ、1壺のお粥、ケーキとパイ、1壺のお粥、ケーキとパイ、1壺のお粥(が現れました)。皇帝は、彼らがそんなような石うすを持っていることを知ると、やって来て取り上げてしまいました。石うすを取られてしまうと、おんどりとめんどりはお腹が空いてしまいました。
おんどりは、皇帝から石うすを取り返しに出発しました。進みに進んでいくと、オオカミがやって来ました。オオカミは尋ねました。
―いったいどこへ行くんだい?
おんどりは言いました。
―皇帝が石うすを取り上げたから、返すよう求めに行くんだ。
オオカミは言いました。
―わたしも連れて行っておくれ。
(おんどりは)言いました。
―押し入っておいで、おいらのケツに。
オオカミがお尻に入りこむと、おんどりは再び先へと出かけていきました。進みに進んでいくと、クマがやって来て言いました。
―どこへ行くんだい?
―石うすを求めにさ、皇帝が取り上げてしまったから、腹ペコなんだ。
おんどりが言うと、クマは言いました。
―オレ様も仲間に連れて行っておくれ。
おんどりは言いました。
―おいらのケツに入るんだね!
クマはお尻に行き、(奥へと)入っていきました。おんどりは先へと出発しました。進みに進んでいくと、池に行きあたりました。おんどりはお尻を水に入れて座りこみ、言いました。
―さあ、おいらのケツよ、お水を飲むんだ!
お尻をお水に浸しにひたし、身を起こすと、先へと出発しました。進むに進んでいくと、皇宮の庭にやって来ました。
―クックレークー!皇帝よ、石うすを返しておくれ!
皇帝は言いました。
―おんどりを一晩、仔馬たちのところに入れておけ。そこで死んでしまうだろうよ。
おんどりは(そこへ)やって来ると、お尻からオオカミを下ろしました。オオカミは何頭かを傷つけ、何頭かを食べてしまいました。朝になってやって来る者たちは、何を見ることになるでしょう。朝(になると)、皇帝は言いました。
―おんどりを連れて来い、もう(すべてが)終わっているだろう。
やって来てドアが開くと、おんどりは中から飛び上がり、庭にやって来ました。
―クックレークー!皇帝よ、石うすを返しておくれ!
皇帝は言いました。
―あの害虫を雄馬たちのところに入れておくんだ!
雄馬たちの真ん中に置かれると、おんどりはクマを下ろしました。クマは何頭かを傷つけ、何頭かを殺し、何頭かを食べてしまいました。翌朝、死んだおんどりを連れに来ると、おんどりは飛び上がって庭に出ました。
―クックレークー!皇帝よ、石うすを返しておくれ!
皇帝は言いました。
―またしても害虫はやり過ごしおった。あの害虫をサウナに連れていくんだ、サウナをよく暖めておくんだ。
ところが、そのサウナは鉄でできていました。サウナに入れられると、おんどりはお尻から池(の水)を下ろしたので、サウナは冷めてしまいました。(おんどりを)連れに行き、ドアを開けるとーおんどりは中から庭へ飛び上がりました。
―クックレークー!皇帝よ、石うすを返しておくれ!
皇帝は言いました。
―おんどりを捕まえに行け、ローストして食べる以外にどうしようもない。
おんどりは捕らえられ、頭が切られ、羽はむしり取られ、洗われると、フライパンの上にのせられ、ローストされて食べられてしまいました。
皇帝がもよおし(トイレに)行くと、お尻からおんどりが頭をつき出しました。
―クックレークー!皇帝よ、石うすを返しておくれ!
皇帝は叫びました。
―なんて害虫だ、まだ生きているなんて、刀を持ってこい、害虫の頭を切り落とすんだ。
刀が持って来られ、頭を切り落とそうとすると、おんどりは頭をさっとひっこめたので、皇帝のお尻が切られてしまいました。おんどりは中から飛び上がり(言いました)。
―クックレークー!皇帝よ、石うすを返しておくれ!
皇帝はもはやどうすることともできず、石うすを諦めざるをえませんでした。そうしておんどりは元の暮らしに戻りましたとさ。
KUKKO DA KANA
Oli ennen kukko da kana. Kukolla da kanalla oli kivi. Hyö ku kolme kerdoa pyörähytetäh-kakkara da piiroa, huttuo pada, kakkara da piiroa, huttuo pada, kakkara da piiroa, huttuo pada. Čoari tiijusti, što heilä on semmoine kivi, tuli da otti. Kiven ku otti, ga kukolla da kanalla rodii nälgä.
Läksi kukko kivie tuomah čoarilda. Matkai, matkai, ga tuli hukka vastah. Hukka sanou:
- Kunna sie mänet?
- Mänen, - sanou kukko, - čoari otti kiven, ni kivie tuomah, kyzymäh.
Hukka sanou:
- Ota i miuda.
- Sydeäte, - sanou, - peržiehe.
Hukka peržiehe mäni, da kukko toas ielläh i läksi. Matkai, matkai, tuli möntti vastah, sanou:
- Kunna läksit?
- Läksin kivie kyzymäh, - Sanou, - čoari kiven otti, ni nälgä rodih.
Möntti sanou:
- Ota miuda tovarissaksi.
Heän sanou:
— Mäne peržiehe!
Möntti peržiehe i šolahti. Kukko läksi ielläh. Matkai, matkai - tuli lambi vastah. Kukko istuotih vedeh peržein, sanou:
- D'uo, perže, vettä!
Pidi, pidi peržettä veissä, nosti da läksi ielläh. Matkai, matkai - mäni čoarin talon pihalla:
- Kukareekuu, ana, čoari, kivi!
Čoari sanou:
- Mängeä pangoa kukko varžoilla keskeh yöksi, ana händä sinne tapetah.
Heän ku mäni, da hukan peržiestä i laski. Hukka kuda roaničči, kuda söi, a huomuksella tuldih - ga on midä kaččuo. Čoari huomukšella sanou:
- Mängeä ottakkoa kukko, valmis nyt on.
Tuldih, ku ovi avattih - heän sieldä furahtii, mäni pihalla:
- Kukareekuu, čoari, ana kivi!
Čoari sanou:
- Mängeä maduo pangoa hebozilla keskeh!
Pandih hebozilla keskeh, heän peržiestä möntin ni laski. Möntti kuda roaničči, kuda tappo, kuda söi. Ga huomukšella mändih hävinnyttä kukkuo ottamah, heän i furahti pihalla:
- Kukareekuu, čoari, ana kivi!
Čoari sanou: - Toas mado i peäzi, mängeä maduo pangoa kylyh, lämmittäkkeä kyly hyväžesti.
A kyly se oli raudane. Kylyh ku pandih, heän peržiestä lammin laski, kyly i d'ähty. Mändih ottamah, ovi avattih - heän sieldä i furahti pihalla:
- Kukareekuu, Čoari, ana kivi!
Čoari sanou:
- Mängeä maduo tavottakkoa, muuda hot' ei, ni žoarimma.
Kukko tavotettih, peä leikattih, sullat nyhittih, pestih, pandih riehtilällä, žoarittih dai syödih.
Čoari mäni šitalla, kukko peän peržiestä i toi:
- Kukareekuu, čoari, ana kivi!
Čoari huhuou:
- Hoi mado, vielä on elošša, tuogoa soabl'a, peän, maolda, leikkoamma.
Tuodih soabl'alla, ku rubettih peädä leikkoamah, kukko ku peän temboau, čoarilda perže i leikatah. Heän sieldä furahtau:
- Kukareekuu, čoari, ana kivi!
Čoari ei voinun enämbi kesteä, prišlos' andoa kivi. Kukko peäzi elämäh.
単語
kakkara [名] 薄焼きのパンケーキ(上にお粥をのせることもある)
piiroa [名] パイ
pyörähyttyä [動] ねじる, まわす
syvätä [動] 押す, 突く
möntti [名] クマ, 小太りな人や動物, 汚らしい人
tovarissa [名] 仲間, グループの一員, 友だち
šolahtua [動] おりて入っていく, 垂れる, ずり落ちる
roanie [動] 傷つける(ранить)
pyrähtyä [動] 飛び立つ, 舞い上がる
jähtyö [動] 冷める, 冷たくなる
šuarie [動] (食物を)焼いて調理する, 加熱調理する
sulka [名] 羽
nyhtie [動] むしり取る
riehtilä [名] フライパン
soabl'a [名] サーベル, 軍刀(сабля)
temmata [動] ひっつかむ, ぱくっとくわえる, 素早く引き抜く
出典
所蔵:ロシア科学アカデミー カレリア学術研究所(KarRC RAS)
採取地:カルフマキ(メドヴェジエゴルスキー)地区のペドロゼンヴァーラ村
採取年:1937年
AT 715
フィンランドやロシアにも同じ話型のむかし話がありますが、本採話は、この話型「半分おんどり」のもっとも古いバージョンの一つだと考えられています。
つぶやき
先日、カレリアのことば遊びとして「おんどりとめんどり」というつみあげ歌を紹介しましたが、同タイトルの民話があったので、そちらを取り上げました。内容はまったく異なりますね。
相変わらずの不思議さ満載・・・カレリアのおばあちゃん、おじいちゃんたちの独特なユーモアを感じます。ちなみにこのお話は当時80歳のおばあちゃんから採取されたものです。どんな語り口だったのでしょうか。
石うす、挽きうすはカレリア民話においては富をもたらす豊穣の魔法アイテムとしてよく登場します。以前紹介した「ひき臼のお話」はもっとも有名な民話です。フィン・カレリアの民族叙事詩『カレワラ』にも、塩、粉、お金を挽きだすサンポと呼ばれるうすが登場します。
それにしても、おんどり君のお尻は四次元ポケット並みの収納力ですね…。
さて、カレリア民話は品性に欠けるお話しかない!と思われても困るので、次回はもう少しお上品?なお話を選んでみることにしましょう。
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