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タイプのネタ

ちょっと前、池袋でかなり面白いコントを見た。

親知らずを上下2本抜いていて口が開かない。
鎮痛剤も3時間置き飲まないと痛すぎて仕事にならない。
そんな状態なのに、そんなことはどうでもいいと思えるくらい笑ってしまった。

明点からの秒数カウントで伝わる緊迫感。
明点1秒後のカウントから見て取れるシチュエーションのわかりやすさ。
緊迫した冒頭から、緊張感のない「あざした」で観客の緊張の糸がほぐれるあの感覚。
ずっと言動が怖い対戦相手に翻弄される3分間。
シチュエーションを生かし切る言葉遊びの豊富さに加えて、展開の読めない加減と各オチの突拍子のなさ。
妥協や安心した笑いがなく、常に新しい笑いが押し寄せてくるネタの盛り上がり方。

なんというかもう、タイプのコントだった。

ネタの持ち主であるデンコーセッカの柳木さんからこのネタでキングオブコントの2回戦に挑むと聞いた。

「絶対いけます!頑張ってください!」
と思わず声をかけた。

8月2日、キングオブコントの2回戦。
私は会場である船堀タワーホールの小劇場にいて、大好きなネタを見ていた。

…音響のブースからだった。

この流れだったら「会場に見に行った」が普通の流れだと思うし、私もその予定だった。
だから気持ちはわかる。

でも、私はあの日間違いなく明点1秒後、
緊張しすぎて震えまくって冷えきった人差し指で音響の再生ボタンを押し、
音が流れたことに安堵し、音を切り、
音響ブースに座ったオペレーター史上1番爆笑していた自信がある。

数日前に柳木さんから
「2回戦のオペレーターをやってほしい」
という連絡をいただいた時は「人選ミスだよ…」と思ったけど、いつも助けてくれるこの人達の役に立てるならと引き受けることにした。
引き受けてからはネタ動画をセリフが大体覚わってしまうくらい見て、あらゆるシチュエーションで音響ミスをする夢を見て…とにかく当日に備えた。

当日、私が緊張していると移るかもしれないから、と思いつつソワソワしてしまったが、
「移らないし緊張しなくて大丈夫」と柳木さんに言っていただき、
生田さんに開口一番「ちゃんとやれよ?」と言っていただいて益々安心した。

こんな大事な賞レースのときに他人に構う余裕なんかない気もするのに、お2人がすごく気を遣って下さっていたことが申し訳なかった。
もっとできる人になりたいと思ったし、もっと安心して頼める裏方になりたいと思った。

舞台上のお2人はめちゃくちゃカッコ良くて、面白くて、いつもウケている所も、日によると不安視していた所も全部ウケていて、トータルで言うと語彙力が欠けるくらい良かった。
このお2人に張り付くことができて心から光栄だと思ったし、今日で終わらせたくない、絶対次もあってほしいと思った。

折角だから展望タワーに登りたいという私のわがままに付き合っていただき、船堀を(?)一望したが、あの瞬間のあの景色は人生で一番清々しかった。
修学旅行のスカイツリーなんか比にならないと思った。お母さんごめん。

「頑張ってください」って言った時、
「3人で頑張ろう」って言ってくれて嬉しかったし、2回戦が終わった時、当たり前のように
「準々決勝のスケジュールも空けといてね」
と言ってもらえて嬉しかった。

デンコーセッカさんがカッコ良過ぎた一方で、私の課題も痛感した。
もっと頼れる裏方になれるように頑張りたい。

先日、キングオブコントの2回戦の結果発表があった。
私はデンコーセッカさんが「準々決勝に勝ち進む」に給料3ヶ月分かけていた。
絶対に進んでくれないと私は家賃が払えなくなる。

結果、準々決勝進出だった。

また、デンコーセッカさんと1本多く経験を重ねることができる。
私にできることは当日のオペレーターと神頼みくらいしかないからこそ、出来ることを確実にこなしたい。

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