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『闇の底にて与えられん〜発達障害の陰陽』第6話「妻の問題行動」(note創作大賞ミステリー部門)

妻の問題行動

千佳が真未さんに対し、謝罪を求めたそうだ。
ああそうか、あくまでビジネスライクに行く気か。

克己はSNSメッセージ画面を見つめた。
窓の外は気持ちの良い春の日差しだったが、目に入ることはない。

真未です。

今回、信頼が揺らぎ不快なきもちになる投稿、申し訳なかったです。

正直に言って、
夫から聞いた千佳さんの日々の負荷や努力や工夫は、想像を遥かに超えたもので、
知らなかったため、配慮もできなかったと思います。

千佳さんがどう受け止めるかはわからないけれど、
様々含め配慮が至らず、結果として傷つけてしまったと思います。

ただ、千佳さんのことを半人前だと思ったことは一度もありません。
むしろ、“十分やれる“と思っていました。

そして、私自身が他人から“十分やれる“とみなされて子供の頃から経験してきたことがそのまま出ていました。
(次々と指示や確認がくる、分かっているという前提で強い表現で伝えられる等)
私自身これからもしっかりと学び続けていきます。

おうちの環境サポートに入ると判断した当時の状況は、
片付け等一生懸命やっている結果だから、本当の意味で家が整い、
ご家族それぞれが本当にすべきことに集中していけるよう手伝おうと思ってやってきました。

結果として配慮が至らず申し訳ありませんでした。

真未さんからのメッセージを読んで、妻への怒りが湧いてくる。

千佳の希望により、口頭ではなくSNSに投稿する形になったそうだ。

自分の価値観を押し付けてくるところが、彼女らしい。
いつもの悪い癖だ。

目の前に妻がいる、そうイメージして口パクで罵倒する。

「なぜ、真未さんがお前に配慮しなければならないのか!」

「千佳の都合なんて自分で伝えなかったんだから、真未さんは知らなくて当然なのに、配慮なんて出来る訳がないじゃないか!」

「それを、文章で謝罪しろ、だなんて…今までどれだけお世話になったと思っているんだ!」

「千佳は、今後、どの面下げてお会いしようと思ってるんだ?」

「赤賀さんがおっしゃる通り、先のイメージが出来ないという特性なのか?」

「社会人失格だ!」

「大人としての、知性が足りない!」

次々に妻をののしる言葉が脳裏に浮かんでくる。


そこへ、ーーーコンコンコン。

俺の部屋に妻がやってきた。
今度はイメージじゃない、本物の妻と話す。

「あのね………赤賀さんのコンサルなんだけど。」

「何だよ」
早く話せよ。イライラを抑えるのが大変だ。

「………もう止めようと思うの。」

「はぁ?」

「あなたは続けたいなら、そうしたら良いけど、………私は止めるね。」

「ダメだ!!!」
思わず叫んでいた。

「お前が前に真未さんの勉強会を停止したことがあっただろう?
あの時、俺がどんなに辛かったか、お前には分からないだろう!

お前はコンサルを止めると状態が悪くなる。
だが、お前は気づかない。無意識だ。分かってないんだ。

何も覚えていないだろう!

俺がキツくなるから、お前がコンサルを止めることは許さない!」

俺はついに言い放った。

「コンサルを止めるなら、結婚生活の維持は難しい」

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