『闇の底にて与えられん〜発達障害の陰陽』第6話「妻の問題行動」(note創作大賞ミステリー部門)
妻の問題行動
千佳が真未さんに対し、謝罪を求めたそうだ。
ああそうか、あくまでビジネスライクに行く気か。
克己はSNSメッセージ画面を見つめた。
窓の外は気持ちの良い春の日差しだったが、目に入ることはない。
真未さんからのメッセージを読んで、妻への怒りが湧いてくる。
千佳の希望により、口頭ではなくSNSに投稿する形になったそうだ。
自分の価値観を押し付けてくるところが、彼女らしい。
いつもの悪い癖だ。
目の前に妻がいる、そうイメージして口パクで罵倒する。
「なぜ、真未さんがお前に配慮しなければならないのか!」
「千佳の都合なんて自分で伝えなかったんだから、真未さんは知らなくて当然なのに、配慮なんて出来る訳がないじゃないか!」
「それを、文章で謝罪しろ、だなんて…今までどれだけお世話になったと思っているんだ!」
「千佳は、今後、どの面下げてお会いしようと思ってるんだ?」
「赤賀さんがおっしゃる通り、先のイメージが出来ないという特性なのか?」
「社会人失格だ!」
「大人としての、知性が足りない!」
次々に妻をののしる言葉が脳裏に浮かんでくる。
そこへ、ーーーコンコンコン。
俺の部屋に妻がやってきた。
今度はイメージじゃない、本物の妻と話す。
「あのね………赤賀さんのコンサルなんだけど。」
「何だよ」
早く話せよ。イライラを抑えるのが大変だ。
「………もう止めようと思うの。」
「はぁ?」
「あなたは続けたいなら、そうしたら良いけど、………私は止めるね。」
「ダメだ!!!」
思わず叫んでいた。
「お前が前に真未さんの勉強会を停止したことがあっただろう?
あの時、俺がどんなに辛かったか、お前には分からないだろう!
お前はコンサルを止めると状態が悪くなる。
だが、お前は気づかない。無意識だ。分かってないんだ。
何も覚えていないだろう!
俺がキツくなるから、お前がコンサルを止めることは許さない!」
俺はついに言い放った。
「コンサルを止めるなら、結婚生活の維持は難しい」
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