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おうち時間におすすめSF本②

アルテミス(上下) (ハヤカワ文庫SF)
アンディー・ウィアー

月の都市で一人働く、いろいろ不器用ながらもうちょっと自立してお金もちになることを願う女子が、非合法な仕事から事件に巻き込まれ、足を洗った才能を使ってなんとか生き延びて、パパとも和解したりする話。

「火星の人」に比べて、主人公がどんな人物かなかなか分からなくて、作者は女性のことをこんな風に思っているのかな?と思う。ビッチなのか、思春期の情緒不安定なのか分からない、このいびつな感じは、不安定な中で育ってきた人物像なのかもしれない。ああ、こういう娘なのね、という感じがなく、最後までどんな娘なのか分からない。どこに萌えたらいいか分からない。何かが起こるかというところでは何も起こらず、え?そっち?という方向に話が進んで、あ、そういう感じ?となる。

でも月の都市のリアリティとか、障害を持つ娘のために月への移住を決めた富豪や、重力の軽い中で暮らす世界観は素晴らしく、引き込まれる。当然月の都市にも経済はあり、地球の利権から自由な場所でもない、夢と希望のないあたりもよい。月の土地は高いから、月の労働者の居住環境は劣悪なんだって。すごくありそう。

今の現実世界の月旅行って、せいぜい宇宙船に乗って、月の近くを回るくらいだろうけれど、今はまだ存在しない「月の都市」への観光旅行のイメージが沸いてなかなか楽しい。海外旅行が好きな人ならば、まだ存在しない「月の都市」への観光を体験した気持ちになれるんじゃないかな。

よくできたコース料理ではなく、贅沢な食材を並べたビュッフェスタイルみたいな感じ。どこを並べて、どんな風に楽しむかは、ご自分でどうぞ。私は主人公の文通相手のことが好きです。

※お月様の画像、ありがとうございます。


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