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退職した社員から贈ってもらったもの

8/1に新しいオフィスに引越しをしました

新しいオフィスで初めてのランチに行くと偶然にも以前退職したメンバーに再会しました
弊社に初めて社員として入社し、エンジニアとしてiPhoneアプリ開発のノウハウをゼロから教えたうちの1人でした
あまり良い形の退職ではなかったと当時の出来事や思い出が苦々しく自分の胸に突き刺さったままであり、私の勉強の糧でもありました
金曜日の夜に一緒にご飯を食べに行って、彼女から胸が熱くなるような言葉を沢山もらったので記事を書くことにしました
先に断っておきますが、この記事は特に何も学びはありませんので悪しからず
あまり堅苦しくならないよう敬愛を込めて再開した元メンバーのことを本記事では「彼女」と呼びますがハラスメントの意図はありませんのでご理解ください
記事を書くことは彼女に了承を得ています


出会いと入社

彼女と初めて会ったのは3年前に弊社が開催しているハンズオンイベントでした

一番前の席に座り笑ってしまうくらいの小さな紙のメモとペンで一生懸命傾聴していたのを今でも覚えています
「変数ってどういうことですか?」など、わからないことを積極的に質問している姿に勉強会中に専属のコーチがついたのを思い出します
19歳でアプリ開発のエンジニアになりたい!とMac Book Proを購入し勉強会イベントに参加してくれたそうで、その後も勉強会イベントに積極的に参加してくれて、3月に社員として入社してくれました

我々マンハッタンコードはエンジニアやデザイナーなどの職種ロールがなく、全員ビジネスマンというIT業界の中では特殊な会社だと思います
他の会社とは違う点などを充分に説明し、その上でご本人に考えてもらう時間を取ってもらうように時間をかけて採用しています

自分たちで企画した勉強会に参加してもらえること自体嬉しかったですが、共に働き、学んでいける仲間が増えることは格別に嬉しかったです


成長の設計と社内への影響

当時の彼女は19歳で会社員経験もなく、プログラミングやエンジニアリング自体も当然未経験です
一方で我々がやっているスマートフォンアプリケーション開発は初心者が取り組むには覚えることも多く、彼女の成長の設計は難しかったのを覚えています
社員として採用したからには技術的なことを覚えることがゴールではありません、どんな仕事でも、どんな現場でも通用するビジネスマンになってもらうには沢山の時間が必要だと考えていました

そして何より1人の人間として仕事が楽しくなるように設計をしないと学びは続きません
続けられないことはどんなことでも大成を為しませんので、経験・年齢・環境・性別など何もかも違う彼女を理解して言葉を尽くし共に歩んでいけるように全社で環境構築に取り組んでいくと決めたのを思い出します
私だけではなく共に取り組んでくれた弊社のメンバーにも感謝しています

彼女を採用してから様々なことが発覚します
勉強する習慣や書籍を読むという習慣がないため、少し難しい言葉が出てくると会話が理解できなくなってしまうことがあります
出来るだけ理解しやすいように言葉の限りを尽くすよう工夫したことで、私や自社メンバーは説明能力がアップしたと思っています

会社は彼女の自立を応援していたので1人暮らしを始めます
今まで実家暮らしだった彼女に生活のイロハを教えたり、体調不良についてのケア方法なども教えます
幸い弊社の取締役は管理栄養士の資格持ちだったため、社内では体調管理のノウハウについて頻繁に話し合っていたと思います

彼女自身の成長が自社の成長に繋がっていたと今でも評価しています


業務と成長故の葛藤

今はApplication Development Service = ADSと名前を変えていますが、弊社の事業のメインはSES事業です
当然彼女も1人の社員として会社の事業を行ってもらいます
先輩社員と一緒に現場に出て仕事しながら勉強の毎日です
これは注意されることや怒られることの方が多いわけで自己承認や自己評価の上がりにくい環境だった思います
我々もこのリスクについては当然考えているので、積極的に仕事終わりの彼女に声をかけて、一緒に夕飯に行ったり、一緒に業後に勉強したりしていました
社内のコミュニケーションが活発になっていったのも彼女の存在が大きかったと思います

覚えたことが1つずつ増え、任せることのできる業務や作業も増えていきます
基礎的なことを覚えたら少し高度なことに挑戦する
基本的なことができるようになったら複雑なことに挑戦する
上手くいかないことが続きますが、挑戦したことが評価するように工夫をします
言葉にしてみると順調のように見えますが、その実は頭を悩ませて仮説検証の毎日でした

「スキルが足りないと思うんですが」「ちゃんと仕事してんのかわからないのです」
SESやってれば日常会話用語の登場です

弊社は他社が提供するSESサービスに比べて自社内とのやり取りが圧倒的に多いです
月に1回の帰社日、週次の自社MTGなど契約前に稼働時間の使い方を説明をした上で利用してもらってますが、商品に特性があるためお客様にご理解いただけるまでは時間を要しますし、お客様と自社の両社にとって利点が少なくなってしまうと取引は終了になります
彼女が入った数々の現場では短い期間のものも多く「自分は上手く出来ていかないのではないか」と悩むようになります


葛藤と更なる成長のため

最初に「会社を辞めたい」と言われたのは彼女が入社してから1年半が経った頃だと思います
彼女の言葉で言うと「不貞腐れてた時期」ですが、どうせ辞めるならと最後に私と一緒に現場に出ることにしました
私は仕事の楽しさや自分が成長することの楽しさを伝えたかったのです
久々に出る現場が楽しみでしたが30歳のおっさんと20歳の若者の凸凹コンビを受け入れてくれたお客様には感謝しています

入った現場で最初に取り組んだのは大炎上案件でした
計画に対する進捗のズレが発生しており、土日出勤も続いている大炎上案件で、受託案件であるためお客様も責任を果たすために全力を尽くしており、私はいつも通り情報と業務の交通整理を行い、プロジェクトの曖昧を解消していきます
エンジニアとして参画したんですがRedmineチケットのダフ屋になっており、いつの間にか現場メンバーから「ボス」と呼ばれてました
幸い大事に至らず2〜3ヶ月で炎上は終息し、リリースにまで至りました

彼女にもお客様から大変評価されてることを伝えて、更なる成長のために取り組むべき課題を伝えていたのですが不貞腐れてた時期の彼女に周囲の言葉は届きませんでした
チケット化した作業はしてくれるのですが徐々に口数が少なくなり、参加しているMTGでほぼ何も発言しないまま過ごすという状態が続きます

彼女と月に1回面談をしていたのですが「自分が上手く成長できないのは環境のせい、他人のせい」という壁を作ってしまいました
今までも上手くいかないことは沢山ありましたし、私自身も途中で見放すのも嫌だなと考えていましたが、この考え自体も彼女の成長の妨げになっているのかもしれないと考え直しました

面談でその考えだと仕事にならないよね?と聞く私に「そうですね、会社を辞めるしかないと思います」と返した彼女の顔はとても寂しそうでした


旅立ち

いろんなことで後ろ髪を引かれる思いはありました
もっと工夫できたことがあったのではないかとか、もっと彼女が動きやすい環境を作れたのではないかなど、今なら出来ることもあると思います
自分勝手な考えだなと自己嫌悪もありましたが、彼女の申し入れを受け取り退職手続きに入ります

弊社は学ぶことの多い会社です
恐らく同業種のどんな会社にも負けないくらい泥臭いことも平然とやりますし、業務範囲もかなり広大です
自社のサービス企画、計画、開発、リリースもやりますし、お客様との取引に応じてSES事業の業務で企画、運用、開発、テスト、提案、分析など何でもやります
残業するくらいなら個人の勉強や遊びを推奨してますので時間あたりの情報流通量は圧倒的に高いと思いますし、その分お給料や福利厚生や環境で社員さん達との対等な関係性を築くことができるようにと社内の仕組みを作っています
業務やSESサービスの品質維持にも様々な工夫を凝らし、他社が真似できない領域が実現できるように各種リソースの投資を行っています
弊社の社員は全員が無敵で魅力的です

こうした背景があるため弊社で仕事が出来る人は、どんな職種、どんな会社、どんな業界に行っても成果の出せる人だと私は太鼓判を押します
ずっとIT業界にいなければならないというルールもありませんし、労働を会社が強制することもできません
自己実現のための力、他人に協力してもらう力、成果を出すための取り組み方など、私が持ってるノウハウは惜しみなく全て提供しています
これだけ聞くと全てが最強みたいに思えますが、1つだけ弊社で社員をやっていると出来ないことがあります

それは他社の社員になることです
彼女は弊社が初の社員体験でしたので世の中を知ることができません
自分たちで手塩にかけて育てた社員が転職してしまうことは正直なところ大きなインパクトがありますので歓迎したくない事象ではあります
しかし同時に、我々が手塩にかけて育ててきた社員がどこに行っても通用する人であることの証明もまた、他社の社員にならないと出来ないという矛盾もあります

人間関係というのは人間同士ですから良いことばかりではありません
反面、悪いことばかり続くこともありません
私にとって悪いことでも他人にとって良いこともありますし、その逆もまた然りです

我々が彼女を追い込んでしまったのかもしれないなと心に刺さるものがいくつもありましたが、社内のメンバーと話し合い我々は彼女の旅立ちを応援することに考え方をシフトチェンジします
別れは寂しいものですが、彼女の更なる活躍を願って背中を見送ることにしました
彼女は弊社に1年10ヶ月所属して退職をしていきました


ギフト

冒頭に書き出した通り本当に偶然再会しました
我々が移転したオフィスの近くの会社に就職した彼女とランチの場所が同じで、我々に気づいた彼女から声をかけてもらいました

改めて約束して遊びに行った夜に彼女から電話を貰いました
離れていた期間は1年半あり、お互いに歩んできた時を語るのには沢山の時間が必要でした

電話口から沢山の謝罪と感謝を受け取りました
退職する彼女に渡した「自分を好きになる努力を忘れてはダメだよ」という言葉が離れていた間の彼女をずっと支えていたそうです
当たり前なのですが最初はムキになっていて受け入れられなかったそうです
離れてから上手くいかないことも続き、彼女は自分自身について考える時間や機会が沢山あったと語ってくれました

他のSESの会社に就職した際に危険な契約に巻き込まれそうになったけど、回避できた話を聞いた時は「ああ契約周りのことをちゃんと教えておいて良かった」と嬉しかったです

業種を変えて挑戦した職種においてはメールの定型文フォーマットが誤字脱字だらけで入ったばかりの自分が修正したと話してくれました
弊社に入社した当時に日本語も怪しかった彼女が、ビジネスメールの手直しを行ったという報告は嬉しかったです

新しい会社に就職して、自分のやりたいことに向かって自分で進んでいると話してくれたことは「どんな時でも自分がやりたいことを真っ先に考えて行動できるようにしよう」と教えたことを役立ててくれるのは嬉しかったです

自分のことが嫌いで、嫌いな自分を好きなれない自分ももっと嫌いで、こんな自分のことを好き好んで相手にしてくれる人なんかいないって自分で作った殻を、自分で破れるように行動してると聞きました
「ありがとう」「嬉しい」「愛されてる」という言葉を自分から使うようにしてみたら世界が変わったと報告を貰えたことが何より一番嬉しかったです

世界が変わってから我々と過ごした日々を思い出して、ずっと謝罪と感謝をしたかったんだと教えてくれました
奇跡ってのは望めば案外起こるもので、再会をした彼女から我々は沢山の贈り物をいただきました

自分の世界を作り始めた彼女から弊社が提供していた学びや環境が役に立っていたと聞けたことは私の心にずっと刺さっていたモヤモヤを解消してくれました

批判されることを恐れず自分や自分たちが信じた道を進むことの成果を、まさか退職した彼女から教わるとは私も目から鱗でしたが、5年続けてきた会社が世の中の誰かの役に立っていることが心から嬉しかったです

「離れていてもマンハッタンコードが忘れられないし、大好きです」との言葉も贈ってもらいました
きっと彼女は新しい会社でも弊社で残してくれた成果以上に、素晴らしい功績を残してくれると信じています


終わりに

今回の記事は単なる私の自己満足で、学びになることは何もないと思います
自分が信じた道をまっすぐ進んでいけば評価してくれる人は必ず現れることがまた1つ体験できたので、共有できればと思い執筆に至りました
1つ1つの出来事で思い悩んでる間は将来に待ち受けてる奇跡なんてわからないものですね

再会してギフトを貰って1つだけ惜しむことと言えば、彼女とまた一緒に仕事ができるようにマンハッタンコードという会社を潰すことができなくなった理由が増えてしまったことです

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