![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/83700938/rectangle_large_type_2_d95e30b365863f55fcd3470c16508759.png?width=1200)
お金持ちになれる本?(アイン・ランド)肩をすくめるアトラス,水源を読む終えるための方法、その後どうするについても
![](https://assets.st-note.com/img/1674558057624-Tal0jmnhKw.jpg?width=1200)
創造者は何も奉仕しなかったし、誰かのために創造したわけでもありませんでした。創造者は自らのために生きたのです。
イントロ
※ この記事はレビューではなく、読み終えるための覚え書です。記事内では、ネタバレしないよう配慮しています。
アイン・ランド「肩をすくめるアトラス」を読みました。
その後、「水源」も読みました。
スティーブ・ジョブズも愛読したといわれる、
この伝説的な名著2冊を読んだものの、そりゃ辛かったですよ。
※ スティーブ・ジョブズが死を目前に衰弱していた頃、「肩をすくめるアトラス」の映画完結を彼は喜んだと伝えられています。しかし、この映像化はあまり成功とはいえなかったようです。
出会い
YouTube: 岡田斗司夫「岡田斗司夫ゼミ#151(2016.11)肩をすくめる巨大国家アメリカ・大統領選挙という祭りに興じる資本主義国家の限界と聲の形VS君の名は。は懐かしのあの闘い」
この動画で知りました。見てからは、すっかり忘れていました。読もうとも思っていませんでした。ところが、
を読んでいたら、出てきたのです。この作者たちは読まれたのでしょうか。マンガの内容と脈絡なく、本について語られることなく登場しただけです。
![](https://assets.st-note.com/img/1658814894847-MDES32HCxs.jpg)
※ 「バイオレンスアクション」が橋本環奈主演で映画化されるんですね。観ないと思いますけど。
メンタリストDaiGoさんの本棚にもありました。奥の本棚、中央下側にアイン・ランド著書が並んでいます。リンクを貼りません。奥の本棚が映る配置の動画であれば、確認できます。
この現象は確証バイアスなんですよね。
そうならば、いっそ読破するキッカケと判断しました。
そして、ようやく、
「肩をすくめるアトラス」を読み始め、
そのあとすぐに「水源」を読み続け、
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
2冊を読む終えるまで一ヶ月半費やしました。
ホント重い、いろんな意味で。
読んでわかったこと。
「肩をすくめるアトラス」は読まなくてもよかったかもしれない。
その他、いくつか気付いたことがありますので、まとめてみます。
覚書
基礎知識
まず、こちらの動画を見ましょう。アイン・ランドに関しての基礎知識を得られます。
20141029 藤森かよこ簡単アイン・ランド入門ぶっちゃけ放言編
アイン・ランドはどんな人で、作品にはどのような背景があったのかが分かります。動画にはネタバレも出てきますので注意してください。
この動画で、藤森かよこ 先生は、アイン・ランドを、副島隆彦「世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち」(講談社+α文庫,1999)で知ったと語られています。わたしもこの本を読みました。アイン・ランドについて書かれているのではなく、タイトル通りに多くの政治家・知識人が列挙されており、アイン・ランドは部分的に各所で出てきます。
書籍と出版社
出版はいずれもビジネス社。アイン・ランドの本しか出していません。ビジネス社は、アイン・ランドに詳しいのではなく、単に翻訳権利を持っているだけで、数十年間放置していました。そこに、折しも、翻訳を名乗り出た女性2人が、同時期(2000年頃、半年違い)に現れました。この経緯は、動画でも触れられています。(35:10辺りから)
「水源」 [原著出版 1943年]
文字数(概算) 22行 ☓ 28文字 ☓ 2段 ☓ 1031ページ
翻訳 藤森かよこ 先生(2004年7月)
英文科の学者さんです。アイン・ランドを研究テーマに選んだほどですから、メジャー路線な学者さんではないようです。
「肩をすくめるアトラス」 [原著出版 1957年]
文字数(概算) 22行 ☓ 28文字 ☓ 2段 ☓ 1263ページ
翻訳 脇坂あゆみ さん(2004年10月)
プロ翻訳家ではないようです。アメリカの大学からの帰国後、すぐに翻訳に着手したと思われます。東洋経済のWEBに記事を描かれていたり、現在は会社員(?)、ブログで記事を描かれているようです。
文字数でいえば、
19行 ☓ 24文字 ☓ 2段 ☓ (平均)230ページ
なので、
「水源」はは銀英伝6.0巻相当、
「肩をすくめるアトラス」は銀英伝7.4巻相当、
です。現代小説のシリーズ換算であれば、それほど長い作品ではありません。
オススメ方法
「水源」から読む。
2冊、いずれの翻訳も、比較的読みやすいように和訳されています。
しかし、アイン・ランドの小説には、独自の読みにくさがあります。語りだすと長い登場人物がいます。語りだすと数~数十ページと過ぎて、さらに、その語りが突飛すぎてほとんど理解できないのです。「肩をすくめるアトラス」では、その要注意人物が2名出てきます。この内、1人は100ページ(ノベルズ 1巻相当)の演説をします。
「水源」では初著ともあり、長大なアイン・ランド節の出番が穏やかです。1人語りは長くても数ページで終わります。全体のページ数が若干ページ少ないのも決め手です。この作品での終盤での主張の収まりが、アイン・ランド哲学の読みどころ、"核心"といえます。ここだけでもアイン・ランドを読む価値があります。この点で、藤森かよこ先生も動画で「水源」だけでいいと言われています。
「肩をすくめるアトラス」を読むのであれば、1冊本で読む。
文庫本は、通常の文庫本よりも字が小さいです。文庫での分冊であれば、5~7冊してもよかったのではないかと思います。大手出版社であればそのようにしているはずです。「肩をすくめるアトラス」の文庫本は読みにくいです。
ノートを取りましょう。
人物相関、それと出来事の要約を一文程度、簡潔に、ページ数とともにメモしておくのをオススメします。Wikipediaなどで登場人物の説明は済みますが、やはり出所箇所を知りたくなるのです。ビジネス社の書籍は大手出版社のように親切ではありません。読む側が工夫をしなければなりません。
ブックスタンドを買いましょう。
「水源」1123g
「肩をすくめるアトラス」1369g
どちらの本も1ヶ月も支えて読むには重すぎます。
このブックスタンドを1つ持っていれば一生使えます。これを機に購入してはいかがでしょうか。
イデオロギーと政治思想
アイン・ランドとイデオロギーは切り離されることはなく、共に語られる場合が多いです。作品を読むにあたって、アメリカのイデオロギーや政治思想は知っておいた方がいいのでしょうか。小説を読むにあたり、これらは必要ありません。もちろん、知っておくに越したことはありません。気になる方は、「アメリカ政治」(第3版,有斐閣アルマ,2017)、こちらの10章「思想、イデオロギー」が参考になると思います。この本に参考文献が載っており、そちらからもいくつか読みましたが、ピンとくる本はありませんでした。
読み終えたら
その1
を読みます。
「水源」を読み終え、「肩をすくめるアトラス」を未読の状態でも構いません。「利己主義という気概」はアイン・ランドによるエッセイ集です。「水源」にてハワード・ロークに言わしめたエッセンスがまとめられています。「水源」の読後、もう一度読み返すのは、数年後にしておきたい方がほとんどでしょう。この「利己主義という気概」を部分的に読み返すことで、それがなされます。
その2
読んだ勢いでニーチェ「ツァラトゥストラかく語りき」に進みます。
「水源」や「肩をすくめるアトラス」より「ツァラトゥストラかく語りき」の方が短いのです。ニーチェ「ツァラトゥストラかく語りき」は「水源」に通じるところが多いと感じます。藤森かよこ先生も「ニーチェとアイン・ランド : 似て非なるもの」(論文ページが開きます)という論考を書かれています。
ニーチェ「ツァラトゥストラかく語りき」は、解説本や要約版を読んで済ます作品ではなく、読んで感じる哲学です。このことは、「水源」や「肩をすくめるアトラス」を読まれた方には明確でしょう。アイン・ランドという一生もの小説を読んだのですから、こちらも挑戦してみてはいかかでしょうか。
その3
「ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質」のナシーム・ニコラス・タレブの著書です。「水源」や「肩をすくめるアトラス」は読み終えた、では、リアル世界の現代社会ではどのような手段を取れるのか。この本はタレブによる「リスクを生きるための指南書」です。多数決原理による意思決定は正しいと言われますし、そのように「大人」は教育します。アイン・ランドを読まれた方は、そうではなく、少数決原理を理解できているはずです。アイン・ランドの思考を実行する方法論を述べた本が他になく、ピックアップしました。ちなみにタレブさんの文章は分かりにくいです。韜晦といいますか、肝心なことをなかなか書いてくれない。核心を語りだすと、切れ味は鋭く、他書にはない着眼点を与えてくれます。
システムは部分を排除することによって、つまり否定の道によって学ぶ。
身銭を切らない連中の設計した物事は、どんどん複雑になる傾向がある(そして、最終的に崩壊する)
身銭を切らない人々は、シンプル性そのものが理解できない。
最後に
小説を読む効用は「読む体験が人を変える」ことである。小説をよく読まれる方はこの事実をご存知だと思います。「読む体験で変わる」代表的な作品として、アイン・ランド「水源」「肩をすくめるアトラス」、ニーチェ「ツァラトゥストラかく語りき」を取り上げました。これらは全員にはおすすめできませんが、求めている人には必ず糧になる本です。ぜひ手にとっていただければと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?