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[読書感想]手塚治虫「ジャングル大帝」を読む。すべてはここからでした。

※ この記事では、作品のネタバレをしないよう書いています。

イントロ

先日、つぎの動画を見ていました。

この手のマンガ紹介動画は、メディアだと出版社の兼ね合いで、「あーそうですねー、よく聞きますね」っていう少年誌などのマンガしか挙げてくれません。この動画ではそんな忖度が一切ありませんでした。女優 杏、凄しです。

TVでは紹介されない作品ばかり。さらに、森薫「乙嫁語り」(エンターブレイン,2009)が1位なんて、通ですよね。

※ たとえば俳優さんや歌手さんって売れると、読んでいる本などの紹介を一切しなくなりますよね。杏さんはこのような業界関係性がないのでしょうか。

手塚マンガといえば

この動画で、手塚治虫の作品も紹介されていました。

皆さんは、どの手塚治虫の作品をオススメしますか?

『火の鳥」、『ブラック・ジャック』、『ブッダ』、『アドルフに告ぐ』、『ファウスト』『三つ目がとおる』、『鉄腕アトム』

たくさんありますよね。
わたしは上記であれば、『三つ目がとおる』、『鉄腕アトム』以外の作品を読んでいます。しかも、それらは数年ごとに、何度も、読んでいます。

さて、杏さんの動画で、『ジャングル大帝』が挙げていました。

えっ、『ジャングル大帝』って子供向けじゃない?

アニメがあるし、マンネリ化して、「ハズレな」手塚マンガなのでは?
Disneyや劇団四季「ライオンキング」のパクリ?

杏さんが推すので、読んでみました。

手塚治虫漫画全集版「ジャングル大帝」1~3巻 をポチりました。
※ 『ジャングル大帝』は3部構成のため、全3巻になっている、この手塚治虫漫画全集版がオススメです。

やばい、面白い。

ざっと説明すると「もののけ姫」と「おおかみこどもの雨と雪」のいいとこ取りした、 「インディ・ジョーンズ」なお話でした。

ジャングルという壮大さだけでなく、時間軸でも長大な「教養小説」な作品です。

※ 「教養小説」とは、主人公がさまざまな体験を通して内面的に成長していく過程を描く小説のこと。(Wikipedia)

『ジャングル大帝』は1950年~1954年に渡り漫画雑誌に連載されました。当然ながら、「もののけ姫」(1997)、「おおかみこどもの雨と雪」(2012)は存在していません。Disney「ライオンキング」(1994)さえ生まれていません。

そう、ライオンが王として生きて、苦悩する物語は手塚治虫がオリジナルだったのです

手塚治虫は、日本にアニメ文化を広めた第一人者でもあります。用いた手法やテーマは、当時アニメ技術で先んじていたアメリカDisneyのものです。いってみれば、Disneyのパクリをしていました。

それが、「ライオンキング」(1994)にDisneyからパクられるまでになったのです。手塚治虫としては感無量だったはずです。

ちなみにわたし、Disneyや劇団四季「ライオンキング」を見たことがありません。パクリなんでしょうか?

1巻の原稿は失われた

3巻収録のあとがきに書かれていたことです。ある事件があり、手塚治虫漫画全集版「ジャングル大帝」1巻にあたる原稿は失われてしまいました。このため、新たに単行本を作成する際に、1巻部分は書き直されました。確かに、『ジャングル大帝』の初期1950年の頃の絵にしては、出来上がっている絵柄なのです。マンガ連載の初期と後期で、キャラクターなどの絵柄が変わっていることがよくありますよね。『ジャングル大帝』は初めから終わりまで、絵柄の統一感があります。事件が幸となったのでしょうか。これに加えて、さらに、あとがきには、ほっこりする思い出話も語られています。
※ これらの逸話はWikipediaに記載されています。しかし、Wikipediaにはネタバレもたくさん書かれているので、リンクを貼りません。

『ジャングル大帝』の終わり方は、想像もできない締め方をします。そこには、手塚治虫が後に「ブッダ」で描く宗教観に通じるものがあります。初期作品である『ジャングル大帝』に、その兆候が現れているなんて、やはり手塚治虫は書くべきものを書き続けた作家なのでしょう。

最後に

杏さんは動画で、次のように『ジャングル大帝』を紹介しています。(6:38~)

人種(の違いから起こる衝突)だったりとかを、動物たちを通して、社会のつながり、そして争いなどで描いている作品で、結構深いです!

YouTube: 女優 杏さんのチャンネル「我が家にあるイチオシ漫画を紹介します!」

当初、わたしは『ジャングル大帝』に期待をしていませんでした。普通に面白ければいいと手を付けました。その期待を越えるどころか、この記事を書いてしまうほどに、感動しました。

子供向けどころか、『火の鳥』と同じよう読めます。そして末長く、読むたびに学びを得られる作品です。

「自分が読む、そして人に勧める、手塚治虫作品」に、新たに『ジャングル大帝』も入れるのはいかがでしょうか。


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