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平和を知っていても、戦争がなくならないのはなぜ?【考える人におすすめの本3選】

戦争が始まりました。

今この瞬間を、私は本屋として迎えました。
日本でも最近、平和の大切さを訴える本が話題になり、みんなが改めて平和について考えているんだと思います。

世界はこれまでたくさんの戦争を経験してきました。
日本でも太平洋戦争や原子爆弾の記憶は薄れはしても、語り継がれなくなることはないでしょう。
戦争の記憶を博物館や記録として繋げようと努力している人も数多くいます。

だから私は、世界中の多くの人々は「平和の大切さなんて、身にしみてわかっている」と思います。
それなのに、いまだに戦争は起こるのです。

それは、なぜなのでしょうか。

私の勤める中島書店でも、「平和と反戦の選書コーナー」を設けることになりました。それに先立って店長は言いました。
「今この時代に生きている者として、何が起こっているかよく見ていてください」。

私はコーナーの選書に関して、何が起こっているかを知り、考える本を基準に選んでみました。

どんな選書をしているかは、リアル書店の立場としてはぜひ足を運んで直接見てほしい!という思いがあります。
でも今回は、近隣の人のためだけに選んだわけじゃないな、とも思うのです。
私を含む、日本で戦争を見守る人みんなに向けて、本から学べることを共有したい。

そこで、私が選んだものに関してのみいくつかピックアップして、noteでもご紹介しようと思います。

気になった方は、ぜひ中島書店にも足を運んでくださいね。

入り口左側にコーナーを展開しています!

1.『ウクライナ・ロシア紀行』

ヨーゼフ・ロート著、日曜社

私は、ウクライナのことも、ロシアのことも、実はよく知りません。
浮かんでくるのは、「ウクライナってどんな国なんだろう」「元々ロシアとウクライナは、どんな関係だったんだろう」といった疑問です。

それに答える本として真っ先に挙げられるのは、地政学や国際情勢の本でしょう。
ただ、予備知識がなく専門的な本を読むのは少し大変そうだなとか、もう少し一市民の視点として読みやすいものがないだろうかと探したところ、ぴったりの本を見つけました。

本書は、少し昔の、1920年代ウクライナを旅したヨーゼフ・ロートの紀行文です。異なった文化や宗教が入り乱れるこの地で、第一次世界大戦が終わり、次の戦争が始まるまでの期間に、当時の人々がどのように暮らしていたかが描写されています。

島国の日本と違い、陸続きの隣国との距離が近いヨーロッパは、隣人との付き合い方も日本と大きく異なります。
東欧の複雑な背景を、暮らしている人の目線で知りたい方におすすめです。

2.『フェイクニュース時代を生き抜く データ・リテラシー』

マーティン・ファクラー著、光文社新書

「誤った情報を拡散しないようにすること」は、寄付よりも前に私たちにできる支援の一つです。

情報収集する人にとって、厄介なのがフェイクニュース。今回も、実際の戦地とは関係ない写真や情報が、あたかも今起こっていることのように拡散されてしまうという報道があります。

そもそも、なぜ誤った情報を拡散することがいけないのでしょうか。

まず、誤った情報の数が増えると、正しい情報を得ようとしている人が混乱します。
それだけでなく、状況下にある当事者にとっては、事実と違う情報に不安や怒りを抱くこともありますし、拡散した方にとっては、良かれと思ってやったことで、本来傷つける必要のない人を傷つけることもあります。

意図せずこうしたニュースを拡散してしまう恐れは、安易な「いいね」や「リツイート」をすることで誰にでも起こり得ます。
出会った情報には目を光らせて、怪しいものは安易に拡散しないことが大切なのです。

今一度、情報収集のしかたや、情報の見極め方を知っておきたいという方に、ぜひ読んでほしい本です。
新書なので、手に取りやすい長さと価格もおすすめポイントです。

3.『戦争は女の顔をしていない』

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著、小梅けいと画、KADOKAWA(コミック)

今回紹介するのは、2015年にノーベル文学賞を受賞した作品のコミカライズ版です。

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチは、ベラルーシの作家。
第二次世界大戦のとき、ベラルーシはソ連として、たくさんの人が戦争に従事しました。著者は、この戦争でソ連に従軍した女性たちの膨大なインタビューをドキュメンタリーにまとめましたが、ベラルーシではその内容から大統領にも批判され、長らく出版禁止にされてきました。

今回の戦争に際してベラルーシは、国連総会で行われた対ロシア非難決議案に、反対する立場を取りました。あえて単純な言葉でいうと、「平和を脅かす悪い国の一つ」に思われるかもしれません。

しかし戦争は、どこの国が悪かと決めることでは解決できません。

ロシア人やベラルーシ人がみな平和を願っていないというのは、あまりに一方的な見方です。最初に述べた通り、世界中の多くの人は平和の大切さを知っているし、平和を願っている人はあらゆる場所にいるはずです。

本書では、第二次世界大戦でのベラルーシで、従軍を希望した女性たちが、戦後それをどのように語ったのかということがわかります。
「平和を願う声をひろいあげ表現することが、大きな影響力をもつ」ということを思い出させてくれるはずです。

【追記】プロモーションムービーが公開されていますので、そちらもご覧ください!

今回は、私が選んだ中から3冊を紹介させていただきました。

結構むずかしめの本が多いですが、店内には他の方が選んだ絵本や小説なども並んでいます。随時追加されたり、入れ替わったりもしますので、その都度違う品揃えをお楽しみいただければと思います。

この3選で物足りない!と感じた方は、ぜひお店のラインナップもご覧くださいませ。

https://www.e-hon.ne.jp/bec/SHOP46054

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