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開催レポート:『冒険の書』をABDで読む

6月18日、3年ぶりとなるリアルのABD「準備のいらない読書会『冒険の書』をABDで読む」を開催しました。

最近はオンラインで1年に一度ペースでABDを実施していましたが、リアルで主催するのは本当に久しぶり。準備からファシリテーションまで全部一人で行うのはほぼ初めてでした。

準備物やら進行やらいろいろ忘れていて、個人的不手際や反省点はあったものの、実際終わってみると「やっぱり、やってよかった」と思うことはいろいろあって。

今回はそのレポートを少しだけ書こうと思います。
一人で仕切っていたら写真を撮るのをすっかり忘れていて、ほとんどありませんがご了承ください!


今回の参加者は私含め7人。
今回の「冒険の書」は、この人数でおよそ半分の100ページほどを分担して読みました。
最初に、普段の読書量などのアンケートを取ると、そこそこ活字に慣れている方がほとんど。

安心して分担できるなーと思いながら、では早速、と表紙に手をかけた瞬間、会場がざわつきました。

・・・すっかり忘れていたのですが、ABDをやるとき本を「破って」皆さんに分配する行為。これって一般的には、背徳的に見えるのでした。

中身がなくなった本のカバーだけがぽつんと置かれてます

普段の読書でさすがに本を破くことはありませんが、ABDに限って言えば私は本を完全に「ツール」として扱っているので、躊躇なく破ります。

私にとって特に大事なのが、事前に本を準備したり読んだりしなくても参加できること。
単純に気軽、というだけではありません。

事前に読み込んだり勉強したりすると、せっかく学んだ知識を使わないともったいないという意識が働きます。
私はABDのダイアローグでは、本の内容を共有することよりも「今、自分がどう感じているか」を起点に対話したいので、そうしたときに、知識を共有しようと考えてしまう「もったいない精神」は、邪魔になることもあります。


今回の「冒険の書」は、「なぜ学校に行かなければいけないのか?」という問いから始まります。
内容は社会的だけど、どちらかと言えば、社会課題を明らかにするためというよりも、これから冒険に旅立つ人に読んでほしい本として書かれています。

学校でABDをすることもある私にとっては、学校と社会のつながりには興味があります。しかし、今回の参加者は全員大人。学校経験からしばらく経った大人にとって、現在の自分と学校のつながりを感じられるか、という点は少し、不安でした。

結論から言うと、今回のダイアローグは、学校と参加者個人のつながりをはっきり見ることができました。
まず本の内容をシェアすることで、一人一人が学生だったときの思い出とつながり、そこから、自分が何を学んだかにつながる。そして学んだ結果、どうだったか?という自分の現在につながっていきました。

例えば、今回読んだ範囲に「能力信仰」の話がありました。
この「信仰」というキーワードをきっかけに、ある参加者の方が、学生時代に先生に絵を評価された話をしてくださいました。「ここまでは上手にできてるけど、ここからはあんまり上手ではないね」と言われた言葉がずっと残っていて、それから絵が描けなくなってしまった。でも、最近は絵を描くのを楽しめるようになったとも教えてくれました。
学校生活での評価がそのまま自分の能力だという思い込みになっていたけど、実はそうではなかったということは、ままあります。

ダイアローグで共有した模造紙の一部。

また、「遊ぶ」「学ぶ」「働く」は、現代社会では別々と捉えられているけど、本当に別なのか?という問いも出されました。
特に自営業の方にとっては、別という認識がないことも。しかし会社員の場合はまず生活(=仕事)が安定しないと遊んじゃいけない、みたいな印象があることを共有しました。
一方で「仕事と学びと遊び全部がつながると楽しい」という気づきを、社会人になってから得られたという方も。個人的には「全部がつながると楽しい」というワードは、今回の読書会での金言でした。

本の内容をどれだけ参加者の自分ごとにできるかが勝負だった私としては、こレラ気づきがたくさん出てきたことは本当に嬉しかったです。


当日は30分ぐらいのダイアローグを予定していたのですが、実際は時間を延長して50分ぐらい喋っていました。

それでも、終わってみると「対話の時間が短い!」「もっとしゃべりたかった!」という感想をちらほらいただいたのには、私が驚きました。

ファシリテーターとしての私は、勝手に長時間の対話をプレッシャーに感じていたのかも、と気づきました。対話が上手く流れれば良いものの、うまくいかない時間が長かったらどうしよう、という心配。
でも実際に話し出すと、ある方の言葉を受けて次へ、次へと自然に対話がつながっていきました。そういう意味で、今回は参加者の方々の語りたい、知りたいという気持ちに助けられて、充実したダイアローグになりました。

ダイアローグ中、参加者の方の次の言葉を待ちながら、「大人ってしゃべる場を欲しているのかも・・・」としみじみ感じていました。
安全で、自由で、何を話してもいい場所さえあれば、いつまでもおしゃべりできるものです。

ということで、今回のABDレポートはここまで。
実は、中学校でのABDも始まっています。そのレポートはまた後日。

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