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日々考えることのはなし

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毎日考える何か、何かが引き金になり考える何かを綴ってみました
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2022年9月の記事一覧

秋の雨

雨、あの頃は雨が嫌であった。 梅雨からまだ暑さの残る秋の長雨までジメジメした部屋にいるのが嫌であった。 クーラーなど普通の家庭にはまだなかった。 兄と一台の扇風機を取り合いケンカをして、よく母に叱られた。 並んで兄の体温を感じながら扇風機の前に座りたくはなく、首振りなどはもっての外であった。 いろんなものを取り合い、兄とはケンカしたものであった。 しかし、数あるケンカの中でもこの扇風機の取り合いは、大汗をかく本末転倒な不効率な戦いであった。 村雨、夕方、出掛けに雨が降りだし

浮世の義理

昨日の月曜日、仕事はお休み、朝から部屋にこもってやらねばならないことがあり没頭していた。 するとサラリーマン時代から大変世話になっている83歳の大先輩から電話である。 「夕方梅田まで出るから、来なさい。」と。 えっ、と思いながらも流行り病でしばらく顔を合わせていなかったのと、もうお会いすることは何度も無いのではなかろうかと思い「わかりました。」と返事をした。 そして、昼飯も食わずに片付けごとを済ませて梅田に向かった。 いつも自分の予定はありながらも、客や上司の都合でその予

秋を感じる午後

秋が来た。 空気は乾き空が高い。 駅までポツポツと歩き、考える。 人生において設計図というか、プロットのようなものを私も持っていた。 しかし、アクシデントの連続でそのままは進んでいない。 その都度の軌道修正である。 それが人生ってものなんだろう。 誰もが同じような経験をしながら、その場その場を切り抜けていくのであろう。 そして耐性を身につけていくのであろう。 生きてきたここまでを否定したくはない。 済んだことに愚痴は言いたくはない。 すべてを肥やしにして前を向いて歩きたい

『切手裏面貼付』なる言葉

62年間生きてきて初めて知った言葉。 仕事の帰りに職場近くの郵便局で書留を送った時のことである。 田舎の郵便局の午前の中途半端な時間である、そこには利用客はおらずのんびりしたゆるゆるとした時間の流れる空間があった。 そんななか、どこかの会社の大量の封筒に順番に消印のスタンプを押す私より少し若めの女性が一人忙しく働いていた。 私は郵便担当のその女性に遠慮がちに書留をお願いしたのだが、その処理作業中に女性の手元の一通の封筒に目が行ったのだ。 なんと、封筒の裏側にまでベタベタ

『野分』で思い出す

野分は秋に吹く強い風です。 台風ばかりではありません。 子どもの頃、道のすべてが舗装されてはいませんでした。 雨上がりの朝、水たまりで遊びながら登校したものです。 風雨の強い朝に原っぱの草が風でなぎ倒され、雨に濡れていたのを記憶しています。 そんな時の風が『野分』なんですね。 高校の授業で、漢文と古文が好きでした。 漢文では唐詩が好きで、岩波文庫の『唐詩選』 を一時期いつも持ち歩いていました。 杜甫の『春望』、 国破山河在城春草木深…… を一番気にいっていたか

読書の秋は深まりゆき

台風がまた来て、去ってゆく。 季節は移ろいもうすぐ布団の恋しい季節がやって来る。 子どもの頃、母が兄と私の布団を並べて敷き、寝るまでの間に本を読み聞かせてくれたり、兄と戯れる時間が楽しかった。 そして少し成長して自分の部屋を持たされた頃は布団に入ってから読む本が楽しみだった。 寒さが本格化すると布団から手を出さずに本が読めないか真剣に考えたりした。 しかし布団での読書習慣はだんだん廃れてしまい、この十年ほどだろうか、横になって3分間と起きていたことはない。 寝る時

『敬老の日』に思う

子どもの頃からこの『敬老の日』ってのに感慨がない。 お年寄りを大切にするように両親から教えられていたから、特別にそんな日があるのが不思議だった。 シルバーシートと同じである。 どうしてもシルバーシートを設置したいのならば、全車両がシルバーシートでいいのだ。 日本の人口の3割以上を65歳以上の高齢者が占める日がもう目の前に迫っている事もずいぶん前からわかっている事である。 今さら騒ぎ立てるのが不思議である。 今後、高度成長期を生きてきた私の両親達が享受したような保障

月は枯れゆき

枯れた月を見て酒を飲む 名も無い月の下で酒を飲む 月を見る用事があるわけじゃない ただ寂しそうなお前を一人打ち捨てては置けないんだよ ずっとずっとその昔、神と呼ばれるその方にお前はここで生きていけ、違わぬ道を毎日歩け、それが皆の力になる そう言われた言葉を聞いていた その日から一日たりとも違わずに、歩いたお前を俺は知る だから俺はここにいる だから、ここで飲みたいんだよ 名のある月ばかりが月じゃない それは俺と同じこと だから毎日毎日歩いてくれ 俺の先

腹も身のうち

家にいれば、長年の習慣で日経新聞に毎朝目を通している。 一面に『貿易赤字 最大の2.8兆円』とあった。 9月15日財務省発表の貿易統計速報。 1979年以降の最大の貿易赤字とのこと、資源高・円安が原因だという事だがますます物の値段は高くなり我々一般庶民は更なる生活の制限を強いられてしまう。 ますます景気が上向くことは期待できそうにない。 13日火曜日の朝は仕事を終えてその足で京都大原野まで向かう。 午前中、放置竹林整備のNPO事務所で事業内容の確認とこの先の打ち合わせを行う

月見酒で思い出す

高校時代のことである。 おかしな話だが、私の感覚でこの頃の同級生には風流を解する男が多かった。 愛知県の県立高校、住み始めた町内の田んぼの真ん中に高校は新設された。 その頃、人と話したくなかったのと家には障害を持つ兄が一人でおり、何かあれば家に近い方がよかろうと思いその新設校に願書を出し、入学した。 新一年生1クラス40人が4クラス、160人だけの高校生活を一年間送ったのである。 その中の数人が非常に個性的でいまだに記憶に残っている。 一人は私がいない高校一年の夏休みの

わが故郷

愛知県豊川市小坂井町、私が高校時代、両親が晩年過ごした土地である。 2010年『平成の大合併』で豊川市に編入したが、それまでは愛知県宝飯郡小坂井町と言った。 宝飯はその昔、『穂国』と言ったそうだ。 三河平野には奥三河の段戸山を水源とする豊かな豊川があり、米の取れる恵まれた土地だったのである。徳川家康の岡崎は隣町であり、長篠の戦があった長篠城跡は子どもの頃の私たちの自転車での行動圏内だった。 今は天下のトヨタ自動車、スズキ自動車、東隣には浜名湖湖畔のホンダ、ヤマハと大企業の庇護

昼酒を考える

先週、以前お世話になった方と難波で打ち合わせがあった。 時間は昼前、ビールを飲みながらの話となった。 不思議なもので、長く働いていた建設業界には昼酒を許す雰囲気があった。 朝から飲むのになんの支障も無かった。 体質では合った業界ではあるが続けていたら、今頃成人病のオンパレードだったかも知れない。 なんでもほどほどが一番ということなのだろう。 六十を過ぎたのだが、いまだに年上との付き合いが多い。 可愛がられていると言えばいいように聞こえるが、もう六十二の身でどんなものだろうと

中秋の名月

中秋の名月がやって来ます。 花より団子の私ですが、団子より月の方がいいですね。 私が子どもの頃、住んでた父の勤務先の社宅にはカーテンがありませんでした。 ひょっとしたら我が家の事情で我が家だけにカーテンがなかったのかも知れません。 子どもの私には昼は陽が燦々と入り、夜は今より綺麗な夜空にたくさんの星を数えることが出来て本当に楽しかったことを記憶しています。 星座も月の顔も覚えたのはこの頃です。 朝晩はやっと涼しくなってきました。 明日、十日の中秋の夜に、まん丸な

高齢者予備軍の悩み

ごくごく最近、誕生日を迎え62歳となりました。 高齢者にまた一歩近づきました。 信じることの出来ない事実ってのが、私の好きな『あなたの知らない世界』だけじゃ無いことを知りました。 若い頃にはこんな歳まで生きているとは思いもせず、若い頃に目にしていた年寄りってのはこんなものかと、只今認識しているところです。 この認識はなかなか面白いものです。 先週もありました。 現在、障害を持たれる皆さん(ほとんどが私の息子と同世代です)と夜だけをともに過ごす仕事をしています。 彼ら