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秋の雨

雨、あの頃は雨が嫌であった。
梅雨からまだ暑さの残る秋の長雨までジメジメした部屋にいるのが嫌であった。
クーラーなど普通の家庭にはまだなかった。
兄と一台の扇風機を取り合いケンカをして、よく母に叱られた。
並んで兄の体温を感じながら扇風機の前に座りたくはなく、首振りなどはもっての外であった。
いろんなものを取り合い、兄とはケンカしたものであった。
しかし、数あるケンカの中でもこの扇風機の取り合いは、大汗をかく本末転倒な不効率な戦いであった。

村雨、夕方、出掛けに雨が降りだした。
秋湿りがさせるそんな思い出とともに駅に向かった。

秋霖、秋の雨はしとしと降り、私の記憶に雨音は無い。
出掛けの雨は重い気持ちを連れて。
帰りの雨は気持ちは軽い。
そんな雨が私の秋の雨。

秋の雨、以前よりは雨は嫌いではない。
一人部屋にこもって本を読む。
考えごとをするにはいい時間なのである。
静かな部屋で独り本を読む。
必ず邪魔にやって来る愛猫ブウニャンの身体を撫でる。
このゴロゴロはいつまで聞くことが出来るのであろうか。

これから一雨ごとに寒さが忍び来るのであろう。 
何かをしていてもしてなくても、季節は巡りもうそこまで冬は来ている。
秋が渡すバトンを待ってすぐそこにいる。

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