「良い質問」がすべてを変える
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はじめに
エムハンドでは、社員のスキルアップを図るため、さらなる品質向上に向けて月一で勉強会を開催しております。今回の題材は『「良い質問」をする技術』(粟津恭一郎氏の著書)です。シニアクリエイティブディレクターの民野(@Shogo_Tamino)の視点から要点を抜粋しつつ、ご紹介いたします。
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01. 質問はなぜ重要なのか?
「良い質問」とは何か?
問われた人が思わず答えたくなる、新しい気づきを与えてくれる質問こそが「良い質問」とされています。それは、自分の頭の中になかった視点や考え方にたどり着くきっかけとなります。
良い質問は、Webディレクターの仕事の中でも以下のような場面で役立てることができます。
▶対チームメンバー:社内会議・面談
▶対クライアント :ヒアリング・提案・キックオフMTG
最初から自分の中にある顕在化した思考のみで制作するのではなく、チームメンバーやクライアントが抱えている課題の本質を引き出し、これまでになかったアプローチで制作を進めるためには、「良い質問」が必要なのです。
人は「質問」に支配されている
人間は行動する前に、頭の中で必ず自分自身への問いかけをします。質問が行動の原点となるため、『質問を変えれば、行動も変わる』と言えます。
質問は「内在化」する
質問には3つの性質があります。
他人から押し付けられたアドバイスや定義されたものは、なかなか受け入れられないものです。
それよりも、自分の中から生まれた新しい気づきの方が心に強く残り、納得感があるので、自発的行動にもつながりやすくなります。
例えば採用サイトの企画を考えるとき、「そのコンセプトは間違っている」と上司に言われたとしたらどうでしょうか。きっと簡単には納得できないでしょう。
では、「そのコンセプトはどういう意図で考えたの?」「クライアントの強みと、ターゲットに見せるべきコンテンツをつなぐためには何を押し出すべき?」などと聞かれたらどうでしょうか。きっと今まで考えてきたことを頭の中で整理するでしょう。そして、企画に矛盾点や弱い部分があることに気づくと、自発的に改善案を考えられるようになります。こうして、自分の中に質問が内在化したとき、新たな気づきが得られるのです。
02. 質問は四つに分けられる
質問の四分類
質問は「軽い質問」「重い質問」「良い質問」「悪い質問」の四つに分けることができます。それぞれの質問の性質については以下の図の通りです。
(1)軽い質問
相手の情報を整理して「良い質問」につなげるための下地となります。
このタイプの質問は、もともと自分の頭の中にあって、すでに認知していることを改めて言語化することとなるので、情報の整理には役立ちますが新たな気づきが生まれません。
(2)悪い質問
核心に迫る質問ほど悪い質問になりやすいので、伝え方に注意が必要です。
質問の意図や目的の共有がなく、質問者の価値観や思い込みを押し付けたり、相手を追い詰めるような質問は悪い質問となってしまいます。
(3)重い質問
悪い質問に目的の共有を加えたものが「重い質問」となります。質問された人が「できれば向き合いたくない」と思っていることに目を向けさせ、課題の本質に迫る質問です。
この質問を成立させるためには、「こんな厳しいことを聞いてくるのは、自分が目標を達成するためなんだ」と思わせる必要があります。そのために質問の目的を共有し、一緒に掘り下げていこうという気持ちを持って話をすることが大切です。
その結果、心のどこかで他責にしていたことを「自責」として捉えることができ、新たな気づきを得ることにつながります。
また、重い質問は、自分自身に向けることもできるので、自分自身にも問いかけて質問を掘り下げてみるのがおすすめです。
(4)良い質問
「軽い質問」を気づきや行動をもたらしてくれるように変え、「重い質問」を答えたくなるように変えたものを言います。
良い質問の特徴
著書内では、良い質問の特徴として7つ取り上げられていますが、今回は3つをピックアップしてご紹介します。
💬「本当に手に入れたいもの」を聞く質問
常に相手の目標、本当にしたいことは何なのかを考え、なるべく早いうちに明確にしておくことが大切です。
ほとんどのクライアントは、「集客を増やしたい」「採用を強化したい」「営業ツールとして使いたい」といった要望を抱えています。要望を掘り下げる際、まずは最終的に目指すカタチを正確にとらえるための質問をすることが重要です。言い換えると深掘りするべき場所を特定するイメージです。
💬仕事の大義を聞く質問
自分がこの仕事に取り組むことは、世の中に取ってどういう意義があるのか、一企業の「儲け」を超えて、社会にどのような価値をもたらしているのかを聞く質問です。本当に手に入れたいものをさらに深堀りしていくと見つかります。この「大義」の考え方は、Webサイトのコンセプトメイクにも関連しており、その重要性を理解しやすくします。
💬今と未来について聞く質問
現在や未来のことを聞くと「軽い質問」「良い質問」になりやすく、過去について聞くと「悪い質問」「重い質問」になりやすくなります。
03. 良い質問をするコツ
(1)質問は流れに合わせてその場で考える
個人的にディレクションの現場において、質問項目のリストアップは必須だと思っています。ただし、それだけに留まらず、本項に書かれている以下の点にも意識を向けることが非常に重要です
あらかじめ用意しておいた質問A-1を深堀りする過程で、予想していなかったキーワードや追加で聞きたい質問が出てくることがあります。できる限りそれらをテキストとしてメモすることで、打ち合わせ中に重要なキーワードをつかみ取り、それについて質問を繰り返しましょう。
(2)質問はしても、アドバイスはしない
社内での面談・相談・会議の場では、「質問はしても、アドバイスはしない」というスタンスで臨むことも大切です。これには、以下のような理由があります。
アドバイスは他人の考え方の参考にはなりますが、その通り受け取るだけだとアドバイスをしてくれた人の考えの域を出ません。
クライアントに対しては、もちろんプロとしてアドバイスすることもありますが、社内でアイデアを出す際は、できるだけ「質問」に焦点を当てることが重要です。
(3)「あなた」について質問する
業界の状況や周囲を取り巻く情報をしてくる人に対して、質問相手自身がどうしたいのかを聞いてみましょう。自分の考えを整理し内面と向き合わせることにより、他責から自責へと向かわせる効果があります。
(4)「私」を主語にしてフィードバックを返す
「私」が「あなた」に質問し、「私」が「あなた」にフィードバックする。
\ Not アドバイス!!! /
あくまで主語を「私」にし、私の目から見た事実や感想を伝えることで、相手は否定できなくなります。ここで大切なのは、「客観的な事実」と「主観的な事実」を分けて伝えることです。これにより、自責で捉えて考えさせることにつながります。
04. 良い質問の作り方
CASE STUDY:10分でわかる個人の質問の傾向
以下のテーマに沿って、10分間で自分自身に対する質問を書き出してみると、自分自身が漠然と感じていた不安や課題感が整理できます。時間がある方は、ぜひやってみてください。
この勉強会の後、実際にチームメンバーにこのCASE STUDYを試してもらいました。すると、今まで考える機会がなかったことまで改めて言語化できたことで、仕事の取り組み方や目標に変化が生まれ、自分自身でも新たな気づきを得られたという声も上がりました。
CASE STUDYの後、出てきた質問に対してさらに質問で深掘りしていくと、自分自身に「良い質問」を投げかけることになるため、新たな気づきが得られます。
▶質問例
「良い質問」は内在化した質問の近くにある
『良い質問をする=気づきを与えたい』なら、2つの質問が大事です。
本人がぼんやり考えてはいる(内在化している)けど盲点のように見逃しているポイントを、質問することで探しましょう。
内在化した質問を探るための「三つのV」
「内在化しているけど盲点のように見逃しているポイント」を探すための切り口となるのが、三つのV(ビジョン/バリュー/ボキャブラリー)です。
ここで使われている「ビジョン」「バリュー」は対企業で用いられているものではなく、個人にフォーカスしたもののことを言います。
【ビジョン(手に入れたいもの)】
ビジョンは、その人が目指している理想や本当に手に入れたいもの、心の底からやってみたいと思っていることを指します。何がしたいのか、その根本的な目標です。
【バリュー(価値観)】
バリューは、その人が物事を判断するときに大切にしている価値観を指します。「お客様の期待に応えたい」「売上達成を継続したい」「プライベートを重視したい」など、仕事をするうえでベースとなる考え方です。
【ボキャブラリー(よく使う言葉)】
ボキャブラリーは、その人が普段の会話の中でよく使っている言葉を指します。人は無意識のうちに心の状態が言葉に現れる生き物なので、それをキャッチすると課題を見つけやすくなります。
「三つのV」のキーワードと疑問詞を組み合わせて質問を作る
「三つのV」から集めたキーワード(単語)と5W1Hを組み合わせて質問を作ると、良い質問になります。「Why:なぜ?」という質問以外の質問をしていないのであれば、他の疑問詞を使用して質問を作成するとよいでしょう。
▶質問例:架空の人物「Kさん」に対して
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このように、Kさんの「三つのV」に対して5W1Hで質問を展開することで、Kさんの中にいままで考えたことがなかった問いがたくさん生まれます。
これはKさん自身が今まで考えたことのないものであり、それらについて考えることは新たな気づきを得るチャンスとなるでしょう。
05.「良い質問」を自分にも投げかけよう
今回ご紹介したCASE STUDY、三つのV×5W1Hの組み合わせを使って、自分自身に「良い質問」を投げかけてみてください。うまくいったとき、きっと霧が晴れたように「これだ!」と思うものが見つかるはずです。
06. 質疑応答
実際に社内勉強会でされた質疑応答をご紹介します。
自分に「良い質問」をたくさんすると様々な効果が得られるとのことでしたが、「質」と「量」、どちらを優先するべきでしょうか?
個人的には量を優先するべきだと思っています。質にこだわりすぎると、質問自体がでない可能性もあるので。「量」を優先させ強制的に考えることで、なぜ質問をしたのか等、さまざまな気づきを得られる機会が増えるはずです。まずは「量」を優先させ、自分の成長の糸口をみつけましょう。
質問をどういう順番で組み立て、どういう流れでしていますか?(実務)
質問の順番をお客様によって変わるので一概には言えませんが、ひとつの例として、サイトをリニューアルしたいお客様を例に説明します。
①どうしてリニューアルしたいのか
②発案者は誰なのか?
③温度感はどうなのか?
等々、そもそもの質問をまずはしています。一番時間がかかるところです。本質的にサイトをリニューアルをしなければならない原因等は社内の中であがっているはずなので、そこを確認します。会社の強み、事業の仕組みなどを確認にするのはその後です。
オープンクエスチョンが大事だと言われてますが、実際は難しいのではないでしょうか?
クローズドクエスチョンは「悪い質問」になりやすい。オープンクエスチョンをしてみて、答えづらそうにしていたらクローズドに切り替えするのもありだと思っています。「悪い質問」等、他の質問から「良い質問」につながる糸口を見つけましょう
質問を繰り返して深堀っていくことは大事だと思いますが、どのようにしてますか?
瞬間的なラリーは必ずしも必要ではなく、メモを見たうえで質問しても大丈夫です。対面でのやり取りの場合「ちょっと内容を整理させていただきます」と一言告げ、時間を10秒ほどいただいて質問を考えるのもよいでしょう。
読んだ本をどのように血肉化していますか?
<方法>
①本の目次を読んで、重要そうなページを読む
②自分の読書の目的を満たす項目を洗い出し、メモをする
③対象項目をざっと読む
<血肉化のコツ>
人に説明することで自分へ血肉化されると思っているので、自分自身に対し、他人に説明するようにセリフ口調でアウトプットしてメモを書いています。メモはiPhoneのデフォルトメモを使用。
民野さんが「これだけは覚えて帰ってほしい」と思うものは何ですか?
『「10分」でわかる個人の質問の傾向』です。
自分に対する質問はやり続ける価値があるので、是非ともみなさんやってみてください!
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07. おわりに
「良い質問」とは何だろう?……と無意識に考えておりました。私自身、脳の瞬発力がない自覚があり、「あの時、どんな質問をしておけばよかったのだろう?🤔」と振り返ることも多々あります。
今回の勉強会を通して、「良い質問」とは何か、どうすれば「良い質問」となるのかを知ることができ、今後の仕事やプライベートに生かすことができると感じました。また、質疑応答の際に実務でどのように活用したらよいのかの質問もあり、参加者側も自分の知識にしようと熱心で良い影響を受けた思います。
「良い質問」をしてを自己と向き合うことは、自分の行動を変えていくことにつながるとのこと。
まずは『「10分」でわかる個人の質問の傾向』を実践してみて、自分自身と向き合い、行動を変えていきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。