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Mine&Industry #6

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 砲台を増やすにも手持ちが払底しかけているので、まず取り掛かる作業は決まっている。「資源集めだ!」
「資源……? ってなんだ。何か手伝うことはあるか」
「ああ、少し待ってくれ」
 妙に高いテンションを戻し、アユラさんの言葉にそう返して俺は時を鈍化させる。ドリルを建てられる箇所を探るのだ。

(うーん、銅だけじゃなくて鉛もあれば良いんだが。というか見た目で判別する方法が欲しい。まあ今のところは棚上げしとくしかないが……)
 そう内語している間に、少し敵側の場所に鉱脈を発見。設置。残念ながら銅だが。
 更に、その新旧二基に隣接して【ベルト】を1マス分だけ設置する。これは銅1個で作れる運搬系の基本施設だな。

「うわぁ!? 何だその……魔法か?」
「ほとんど一瞬で三回、術を行使した気配がしたわ……あ、あっちにもなにか出来てるわね」
 そして時を戻して一気に建設した結果、不意に背後から響いた設置音に驚いたアユラさんと何かを察したらしいマユラさんがそれぞれ口を開く。やっぱ魔法扱いなのかなこれ。

「アユラさんにして欲しいのはこれだ。向こうでも同様に銅の塊が吐き出されるから、俺のとこに運んでほしい」
 早速採掘された銅インゴットがベルトに吐き出される。ドリルに限らず、物体を搬出するときのルールとして搬出可能な先へ均等に物体を搬出する。この場合先に設置した方は砲台:砲台:ベルトで三等分ずつだが、後に設置した方はベルトのみだ。

「あー……わかったけど、さんはつけなくていいよ気色悪い」
「私はどちらでも結構ですよ」
 と、アユラさんは心底気持ち悪そうにそう言った。え? そんな感じ?
「お貴族様でもあるまいし、男に柔らかい声で名前にさんてつけられると、ゾワっとする」
「私はどちらでも結構ですよ」
 そ、そんなに? 逆に呼び捨てにするのが気が引けるんだけど。まあいいか。
 あとマユラさんはなんなの?

「あー……じゃあ、アユラは運搬の手助け。マユラは、他の気配が無いか気をつけててくれ」
 おう、と、はい、というそれぞれの返事が返ってきて、俺はベルトから銅を回収する。手にした途端、予想通り俺の身体の中に吸い込まれていった。よしよし、次は手に取らないで直接回収を試してみよう。

 そう思った刹那、きゃあ! とアユラの声が響いた。

「どうした!? モンスターか!?」
 俺は急いで彼女の方に向かうと、そこには空っぽの手を凝視してグーパーグーパー開け締めしている姿があった。
「銅は?」
「銅……なのか? 掴んだ瞬間身体に吸い込まれて、マナが完全に回復したんだが。というか……溢れそう……」
 そう言いながらワナワナと震えるやら顔を赤らめるやらの姿を見て、なんか見ちゃいけない感がすごい。あ、溢れちゃったらどうなるんだろう……。

「プ……【プロミネンス・ゼロ】!」
 だが俺がそんなヨコシマな……じゃなくて杞憂を抱いたのもつかの間、アユラがそう叫んで身体が一瞬ブレたかと思うと、紅い結晶状の何かがその身から飛び出した。
「【セルフヒール】【セルフヒール】! えええと……【ストレングス】! 【アジリティ】! あー……【クリーン】! 【ウォーター】! 【ライト】!」
 そして続けざまにそう叫ぶと、アユラの身体が三度、四度と発光し、コップ一杯ほどの水と小さな光球が生まれ、地面に落下した。目がチカチカする。凝視しててすみませんでした……。

「お、落ち着いた……なんなんだよこれぇ……魔石か何かか?」
 へたり込んでしまったアユラを追いかけるようにして、先程の結晶体が少し遅れて身体に溶け込むように収まる。そうしている間にもベルトには銅のインゴット(?)がどんどん流れていき、俺は追加でベルトを此方側に伸ばす。どうやらアユラに運んでもらうのは無理そうだ。
「わからん。けどこれが、俺の建てる施設の材料だ」
 どんどん掘り出される銅を元にそれを運搬するベルトを伸ばしていく。そう時間も経たないうちに、ベルトラインで資源を集めるレイアウトができた。

「で、さっきの紅いやつ、なに?」
「現象体の事ですか?」
 答えは、背後のマユラから来た。緑色の小人のような者を浮かべた。

【続く】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。