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夕闇魔法同好会

夕方、茜色の世界。夜の闇で編んだ様な漆黒の”けもの”が爆散する。

少女が、けものと共に砕けたアスファルトから赤色の大剣を引き抜き、振り向きざまに別のそれを水平に二分する。
巨大な狼のようなけものは、空気に解けるように消え失せた。

――すごく綺麗だ。

遠巻きに彼女へ対し、動きあぐねていたけものの頭に穴が不意に生じ、思い出したかのように身体が散華する。蒼い槍を持った違う少女が、重力を無視したようなステップを空中で踏んで、地面へと降り立った。

周りに彼女ら二人のほかには、黒ずんだ葉が十数枚。けものの居た場所に落ちている。

――胸が、ドキドキする。

この短時間でもほんの少し傾きを増した陽の光が、彼女らの顔の陰影を変じさせていた。

それが、学校の帰り道の角を曲がった少年が目撃した風景であり、
「え? なんでここに」
これが、彼と目が合った赤の少女、カオリの一言であった。

.../続く

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。