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姉、妹、私。【ケムリクサSS】

まえ あと

 赤い木を倒してから、【ひと月】が経った。
 もう、そこで私達は終わりかと思っていたけれど、りんとわかば君のふたりが帰ってきたときは、りなちゃんと抱き合って喜んだものだ。
 私はりつ。みんなのお姉ちゃん。にゃ。

「じゃあ行ってくるにゃー」
「行ってくるのナ!」
 昨日りんとわかばくんがお互いの名前を呼び合いっこする遊びをして以来、二人共俯いて黙ってしまったので、私たちは代わりにお水を取りに行くことにした。二人が昨日のうちに道を大体整備してくれたから、私とりなちゃんとでも安心して歩ける。

「どーこかナッ! どーこかナッ!」
「森? の中。良い音がするにゃー」
 りなちゃんが跳ねるように前を歩き、風が私の耳を撫ぜ森を吹き抜ける。
「あれ? りつねえね、服変えたのナ?」
「うん、自分の足で歩かなきゃだから、ちょっぴり短くしてみたのにゃ」
 みどりちゃんは因縁の赤い木……赤い木ちゃんと相打ちになって、無くなってしまった。残念だけれど、しようのなかったことだと思う。私はそれから、ちゃんと足で歩くことにした。

「なんかわかばみたいナ」
「そうかもにゃ。すねがくすぐったいにゃ」
 そう言いながら、私は裾のあたりを眺める。確かにわかばくんと同じ様な足元だ。その下の、私だけみんなとはちょっと違う造りのくつの下は、ふかふかと土が柔らかい。

 そうか、上だけじゃなくて下も。この世界すべてが、見たことのないものなのだ。

 ふと、心のなかでそんな思いが芽生える。これが……

「ナナー! おみずの味がするのナー!」
「にゃにゃっ!?」
 りなちゃんが嬉しそうな声を上げる。ちょっとびっくりした私の耳にも、水の音が聞こえ始めた。確かに聞いたことのないほどたくさんの水が、次から次から流れゆき、その流れも上層、下層、それぞれ異なる軌跡を描いているようだ。

「これが川……」
「うん……」

そして目の前に広がったのが、目の端から端まで広がるそれが、全部水だということが理解できず呆けてしまう。

「ちょっと入っていい……?」
「だめにゃ」
「ナっ!?」
 りなちゃんが信じられないものを見る目で私を見つめる。
 私は、ちょっぴりりく姉っぽく……少なくともそのつもりで……にんまりと笑いながら走り出す。

「私も、一緒に入るにゃー!」

【おわり】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。