おねショタ108式の108『廻り逢う星』
遠い遠い昔。未だ天に星々は少なく、星も微睡む時代のはなし。
主人公は珪素を基盤とした知性ネットワークを獲得した惑星の”おねえさん”と、ガス雲により知性ネットワークを獲得した彗星の”少年”。
同じ恒星に生まれ、数百年ごとに廻《めぐ》り逢瀬を楽しむ”二人”であったが、何度目か分からない接近の時に少年が悲しげに重力波を震わせて言った。
「もう会えないかもしれない」
おねえさんは驚き戸惑うが、即ち、彗星の構成物質であるガス雲の揮発により彼の知性ネットワークが維持できなくなり、次に会うときはもう物言わぬ岩塊に成り果てているだろうと言うのだ。
私のからだの水でも、なんでも、君にあげる。だから、お願い。消えないで。
そう彼女は嘆くが、少年は違う最終的解決を提案する。
「僕を受け入れて、おねえちゃん。一緒になろう。宇宙が燃え尽きるその瞬間《とき》まで」
彼は残っていた揮発性物質を爆発的に噴出させ、その軌道を変える。
何度近づいても、何度近づいても、決して触れ合えなかった二人は、衝突し、交じり合い、互いの知性が消失するその最後の瞬間、一度きりのキスを/セックスを/触れ合いを/した。
そして40億年。
”少年”の抱合していたアミノ酸は”おねえさん”の中で複雑に、複雑に交じり合い、いま。
姉や母、教師や政治家、お金持ちからユーチューバー。悪ガキやときに過酷な運命に立ち向かう少年兵。アンドロイドや機械知性の基幹。世界は変わりオークや邪神や天使や悪魔。
そのすべてに、二人は、為った。
【おねショタ108式 おわり】
資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。