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バーン・ザ・ユナイテッド 第一話 アバンタイトル

「はっはぁ! 逃げろ逃げろぉ!」
様々なゴミと空調の室外機の排気で煙るほど臭気の漂う路地裏。OL風の女性が必死で逃げ、それを異形の男がわざとゆっくり追いかけていた。
「まずは足をもらう。今テコテコ走ってるその裸足の足を指から一個ずつもいでいく! 次は肩から千切って、それでお前を縛ってやろうか。痛みで気絶するかなぁ、起きるかなぁ」
がなるような、言い聞かせるような様子で、その異形は楽しげに言う。7腕12脚、頭だけは1つ。身長……もはや体高と言うべきか……は成人の倍ほど。全体のシルエットは、爛れ落ちた三角形に近い。
その不揃いに増やされた手には、誰とも知らぬ人間の太ももから先が握られており、異形が端から齧って咀嚼する。

――その姿を闇に見出してしまったところから、彼女の不幸は始まったのだ。

「そして最後は全身を……ギャプッ!」
そしてついに追い詰めたのはビル間に広がる狭小な方形の空き地。その時、異形は上空から落下してきた何者かに蹴り飛ばされ、地を転がった。異形の巨体が、空き缶の様に。
「だ、誰だァ!? てめえ」
跳ねるように体勢を立て直し異形がその影に問う。一方落下の衝撃を殺しうずくまっていたその影は、女性を守るように立ち上がり、再度異形を拳打!
「ギャピッ!」
「フレイム・ユナイテッド。変身」
その影が燃え上がる! その人物が、身体が、本当に燃えているのだ。吹き溜まりに突如出現した小火球は周りを照らし出し、空気を焦がす。
「貴様も、ユナイテッドか!? なぜエサを庇う! さては横取りか」
「違う」
炎を戯画化したような意匠の、全体的にくすんだ朱色のスーツ様の姿。不思議なことに、そのスーツに上下の切れ目はなく、まるで”元からそういう生物だった”かのような一体感。
「ユナイテッド、俺はお前らが嫌いだ。俺自身も嫌いだ。だからお前らを滅ぼして俺も燃え尽きる」
言い放ち、腰を落とす。
「まずはお前だ。燃えろ、化け物」

――これは、自分と共に世界を燃やし尽くす物語。

【バーン・ザ・ユナイテッド】

【続く】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。