見出し画像

Mine&Industry #4

最初から
前へ

 そんなドタバタをしている間にも、ゴブリン達がやかましくギャビギャビと駆け込んでくる。
「くっ……気付かれるよな、そりゃ……。お前……男! 援護してくれ! ねえさんはそこにいてくれよ……キャっ!?」
 戦士さんがそう振り返るとほぼ時を同じくして、バシュン! と破裂音が響き銅の弾丸が猛烈な勢いでゴブリンの肩口を破壊した。ビギャッという叫び声とともに先頭の一体が弾き飛ばされ地に転がる。分かっていたが射程距離が短いな! 拳や剣が届く距離ではないが、現代で銃とかの距離感覚を知っていると至近距離と言って良いんじゃなかろうか。

「待ってくれ。前に出ると流れ弾が当たるかもしれないから君もここに……君が妹なの?」
「私が妹で悪いか。男」
 発射音に可愛らしい悲鳴を上げて硬直していた”妹さん”に向かってそう言いながら迂闊に首を傾げるとジト目で睨まれた。ただ、”お前”と言うのが失礼だと思ったのか”男”と呼び直すところに人の良さが伺える。
 呼び方はどうかと思うが……。

「流れ弾というとあの矢玉は実際の物質なんですか? それとも魔法? そもそもこれは何なんですか? 現象体じゃないですよね?」
「た、大砲とか銃とかって知らないか? あれは金属の礫《つぶて》で、それを高速で撃ち出して攻撃するけど、俺の意志に関係なく勝手に発射されるんだ」
 一方、魔法使いさん改めお姉さんは弾を吐き出し続ける砲台に興味津々といった様子でグイグイ来る。触りこそしないが、指がワキワキしてる。
 その様子に俺はたじろぎながら説明すると「ねえさん!!」妹さんが軽く叱るトーンでお姉さんを黙らせた。

 そしてその間も、突き進んでくる後続のゴブリンを二基の砲台《デュエット》がまさに機械の冷酷さでバシバシと撃ち抜いていく。
 うん、グロいぜ。
 どういう仕組なのか血しぶきこそ上がらないが、大穴の空いた人型という見た目だけで胃に来るものがある。

「で……ホウダイ? 勝手に……ってことは精霊でも入ってるのか? 言うことの聞かない精霊なんて大丈夫なのか」
「んー……多分」
「多分てなあ……」
 おとなしく待機してくれる妹さんに呆れたような視線を寄越されるが、仕方ないじゃないか。ゲームでは味方を誤射することはなかったが、それはそれこれはこれ。どうなるか分からないなら安全な方に賭けたい。

「私は信じるわ。アユラ」
「ねえさん」
「この”砲台”というものからは、凄い魔力を感じるわ。きっと大丈夫よ。この方を信じましょう」
 とお姉さんが妹のアユラさんを諭すようにそう言うが、さっきの興奮ぶりを見ていると台無しだ。

 いい加減名前がわからないので名乗っておこう。
「俺はアキハル。いつまでかわからないけど、よろしく」
「マユラです。こちらは妹のアユラ」
「アユラだ」

【続く】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。