マガジンのカバー画像

ノベルマガジンロクジゲン

129
むつぎはじめの書いた小説が読めるマガジン。 メインはSFというかファンタジー。
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

むつぎ ノベル 総合目次

オリジナル断章 灰色の浜辺にて ニーナ・ザ・ミストガン 【1】 【2】 【3】 【4】 少女ファイル 満ちぬ街のムメイとクーニグンデ 【1】 【2】 【3】 黎明亭の核爆発。 【1】 まいこ・ザ・ジャンパー(完) 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【あとがき】 【完全版】 商人と海。あと亀とエルフとレールガン 【1】 【2】 【3】 黒の機械兵 【第一話】たびだち(完) 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 Mine&In

ヤクザの鉄砲玉は悪魔を撃ち抜けるか?

「こいつ消せ。報酬は五千万。前払いで千万。サポートもつける」 「ヤスさん、すみません。この写真だと本人確認がちょっとなんですけど……」  任されている古本屋のバックヤード。パイプ椅子にどっかと座ったヤスさんが前置きも無しに僕に差し出したのは、滅茶苦茶気合の入った特殊メイク姿の女の写真だった。撮影の角度的に、盗撮されたもの。  バチっとした細身のダークスーツ姿はまだしも、露出した肌は真っ青。目の白目部分が黒い所謂黒白目で、瞳孔は赤。側頭部から角。歳の頃は僕と同じ20代半ば程。

聖女、血の魔法、勇者。

『……市内の中学校に通うKさんは全身の血液が抜かれた状態で発見され……』 「随分老けたね」 「は?」  悪口でしかないそのセリフが自分宛てだと理解したのは、少女が泣きそうな笑顔で俺に抱きついて来たからだった。俺は妙なニュースを表示していたスマホを取り落としそうになって慌てる。 「ユキ……! ユキアキ……! やっと……!」 「だ、誰!? 俺は雪秋だけど……誰!?」 「12年も……かかったけど……ようやく会えた!」  帰宅ラッシュ前で人が少ないとは言え、駅前である。  来

レザレク

 時間が無い。早く殺してあげなければ。  俺の全身を包む特殊作業服を、その思いと熱気とが満たしていた。  満島六郎。79歳。推定、ベッドで急死。  満島栄子。74歳。同、転倒し頭部を強打、死亡。  問題なのは、寄り添う様に死んだ彼らに隣人が気付くまで半日要したことだった。 「白化、始まってますね」 「ああ。マズい」  俺は六郎氏の頭部にスキャナを当てる。死後17時間。危険域だ。頭全体を白い光が覆い始めている。残念だが死を悼む暇はない。 「夫さんは緊急処理を行う」 「

おねショタ三題噺 1 雨の向こうのくに

遠い未来。人型機動兵器……モビルスーツの存在する世界でのはなし。 ファイ・フォウフォーンは美しい女性であった。 近親者の相次ぐ急死で若くしてユーラシアの一画の領主となった彼女は、多くの人々の予想を覆し、領内の産業を振興して能く発展を成し遂げさせた。 憂鬱なとある雨の日、仕事をやっつけたファイが窓から所領を眺めていると、ふと思いつき近侍の少年 ベッタ・ニッカを呼びつける。 そして命じたのは、彼女を雨と虹の向こうへ連れて行くこと。 混乱する少年に言い含める様に語った言葉に曰

12月!おねショタの季節!「年末はおうちで」

←11月 1月→ 「珠湖おねえちゃん……なにしてるの」 「ブレ〇イ」 「それはわかるけども」  大晦日! 寒い季節!  少年 射場りょうが、年末年始のため帰省した女子大学生 師走珠湖に会いに行くと、彼女は炬燵に潜り込み、なにか鬼気迫る様子でゲームをプレイしていた。  見た目は黒ロングに眼鏡とクールな雰囲気を漂わせているが、そうではないことは少年は昔からの付き合いで良く知っていた。 「こんな面白いことある? こんな面白かったのこのゲーム」 「まあ、それは有名なゲームだから

Unlocker! 美女の扉と少年の鍵 #パルプアドベントカレンダー2021

 バーの照明が消えたのかと思った。 「貴方がミカルね」  店の最奥部で油臭い水を啜っていた少年……ミカルは、遥か頭上から降る低い声を聞いて初めて、自分を呼びつけた女性によって灯りが遮られているのだと気付く。  女性という前置き無しに、巨きい。200cm近くあるだろう。  加えて、羽織ったロングコートから漂ってくる乾いた木のような芳香に、無意識に少年は緊張していた。  彼女は紛れもなく美女だった。 「私はヴィオラ。【事件屋】ヴィオラ。呼び出しておいて、遅れて失礼。座って

11月!おねショタの季節!「まだ、青い」

←10月 12月→ 「まだ、青いねえ」 「うん……」  11月中旬。とある自然公園。駐車場。  見頃と予想されていた遠くに眺める紅葉はまだ色づいておらず、せっかくの遠出をした霜月さおりと左曽利秀人は落胆していた。  年上の幼馴染であるさおりが免許を取得し、ようやく人が乗せられる心境になったので遠出をしよう。とのことで秀人が企画した計画だったが、初手から躓き凹んでいる。 「ネットとかで確認すればよかった……ごめんね、さおねえ……」  と、今更手元のスマートフォンで確認し

プロメテウスの蜘蛛の糸

 ゴブリンたちを長柄の斧でぶった斬る。斬るのはこいつの頸ぐらいが限界だ。それ以上は反対側で撲殺することにしている。斬る、斬る、撲殺、斬る、斬る、撲殺。 「ユ、ユウちゃーん! 助けてくれー!」 「あっハイ只今ァー!!」  などと楽しいビートを刻んでいたら、いつの間にか今日の雇い主 荒木さんが極太の糸に絡め取られていた。手繰り寄せられつつある荒木さんの頭上の糸に向けて私は腰のナタを投擲。切断できた。荒木さんは落下してギャンと再び悲鳴を上げるが、四つん這いでなんとかこちらへ逃げてく

惑星サウナOE6Yの開発について(正式計画名は来年以降決定予定)【逆噴射プラクティス】

 私こと鎮守院征士郎は、庸の一環で課せられた定期系外探査の最中、全球水の惑星を発見した。皇帝は、それをサウナにすることにした。光栄にもその総監督に命ぜられたのが本件の端緒である。  今年、帝暦39621年は、今上陛下在位98年になる。  再来年の治世100年を記念するイベントの一つとして発案されたその史上最大のサウナ建設は、例によって惑星上の全動体総燼滅作業から始めることになり、それは順調に推移していた。しかし、その実行中にも問題の洗い出しと対策は鋭意進めなければならない。

10月!おねショタの季節!「それとも、トリック?」

←9月 11月→ 「トリック・オア・トリート!」 「帰れ!」  私こと神無月かなが玄関を開けて出会ったのは、吸血鬼っぽい姿をした従弟、天木平太の姿だった。  10月も終わる日、とある地方都市の一角、住宅地。  この数年で聞き馴染み始めたハロウィンは早速曲解され、お菓子と仮装という要素を祭りに再構成され、それはそれで盛り上がっていた。 「って、あれ? 他の子達は? というかお菓子用意するのは町内会だけじゃないの」 「そっちは終わったよ」  町内会により企画されたイベント

天の光で馬鹿なこと

カ ニ だ ! 圧 倒 的 カ ニ だ

9月!おねショタの季節!「月が綺麗ですね」

10月→ 「月、綺麗……」 「うん……」  煌々と輝く満月を前に、早乙女駆流が絞り出すようにそう言うと、長月ありさも同様に魅入られたように応じた。 ⭐🌕⭐  9月半ば、十五夜。少し時間は巻き戻り。  お月見をしよう。と、いつもながら突然言い出したありさに連れられ、山頂への遊歩道をお菓子とジュースが入ったリュックを背負って登りきった後、駆流は喘鳴を発しながらベンチに倒れ込んだ。 「ありさ姉《ねえ》も……手伝ってよ……」 「え~? 私レデ―だしい? レジャーシートくら

大巨獣エビオナンテのいる街

 東州連合の奉戴するタイラント、エビオナンテが通算300体目の巨獣襲来を退けた。決まり手はギロチン・ハサミ・カーニバルだった。 「うちの国のタイラントってチョー強いんだねえ」  テーブルに頬杖を突きながらビデオスクリーンを眺めていた僕のパートナー、薫子さんがそう呟く。彼女は朝食の片付けを終えて、寛いでいたところだった。画面には件のエビオナンテがマンモス型巨獣を縦横奥行き4*4*4で64分割にしたシーンが映っていた。 「うん。在位期間がもう30年にもなるからね。共鳴之御子様