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11月!おねショタの季節!「まだ、青い」

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「まだ、青いねえ」
「うん……」

 11月中旬。とある自然公園。駐車場。
 見頃と予想されていた遠くに眺める紅葉はまだ色づいておらず、せっかくの遠出をした霜月さおりと左曽利秀人しゅうとは落胆していた。

 年上の幼馴染であるさおりが免許を取得し、ようやく人が乗せられる心境になったので遠出をしよう。とのことで秀人が企画した計画だったが、初手から躓き凹んでいる。

「ネットとかで確認すればよかった……ごめんね、さおねえ……」
 と、今更手元のスマートフォンで確認してみれば、気の利いた情報サイトも有るもので一昨日金曜の時点の情報でまだこのあたりは紅葉していないと書いてあった。

 少年の手元のそれを見たさおりが、いたたまれない様子で口をつぐむ。
 もちろん、それは秀人に対して落胆したわけではない。何を言っても、彼の落ち込んだ気持ちは癒せないことが分かっているからだ。そして、少年もまたそれは分かっていた。

 だから、心がシュンとなって、つらい。

 中古の軽自動車のエアコン吹出口から、消臭剤っぽい香りの温風が吹き出す。
 あんなに長かった夏もいつの間にか過ぎ、山に近いここは秋を通り越して寒いくらいだ。

 エアコン稼働に伴ってエンジン音が響くと、その鈍い音は二人の間に流れる空気のようで……。

 ガチャッ!! ピーピーピー!!
「行こっか!」
 それを、さおりは断ち切った!

 エンジンを切り、ドアを開けて、肌寒い空気が流れ込むのと入れ替わりに彼女は外へと飛び出す。そして反対側の助手席を勢いよく開けると、少年の手を引いて外へと連れ出す……!

「紅葉なんて葉っぱが赤いだけでしょ! そんなことより良い空気吸おうゼ!!」
 後部座席に置いてあった二人それぞれの上着を取り出して、さおりは空中で袖通しをキめ、少年には頭からガボッと勢いよく着せる。

 ふんわりと彼女の香りが、少年の鼻をくすぐった。

「テンション、高いなあ」
 上着の袖を通し裾などを整えた秀人が、恥ずかしそうに微笑む。

「さあさあゴーゴー! 秋のお山が待ってるぜ」
 だからなんなのそのキャラ? と秀人は思わず笑みがこぼれ、わざとおどける……目の前の愛しい人が尚更愛おしくなる。

「あのね、ほんとにどうでもいいんだよ、秀人くん」
 そして、公園内部へ向けて前をどんどん歩むさおりが振り向くと、それこそが普段どおりの控えめな笑顔で、彼につぶやいた。

「二人で、出かけたかった。それだけで、私は楽しいよ。だから、元気だしてくれたほうが嬉しいな。ダーリン?」
「ダッ!?」

 それより紅葉狩りって何狩るの? もみじ饅頭?

 再びくるりと前を向いてそんな戯言を言い始めたさおりに何も言えず、少年の顔はもみじょのように、赤く、明く。


 ……中で食べようと思っていたお菓子などを取りに、半泣きでさおりが車に戻ってきたのは、その十分後だった。

【おわり】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。