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こんな世の中で貴方は何と鳴く




窓の外から「パオーン」という音が聞こえた。




子象でもいるのかな?と再度目を閉じかけた。

がいやいやまて、私は恐れ多くも日本に住んでいる。ジャパンだ。子象が街を彷徨(うろつ)く国ではない。


眠気まなこを擦りながらカーテンを両脇に開いた。窓の外は青々と光る快晴。先程までの陰気じみた室内を一変するその眩しさに目がくらんだが、徐々にぼんやりと外の風景が視界に映り込んできた。

窓下の道にはおじさん一人と首輪が繋がった犬一匹。







結論からいう、パオーンの正体はわからない。




珍しい泣き声の犬かもしれないし私の空耳だったかもしれない。



ただ私の見解としてはおじさんの泣き声だったと思っている。






一番可能性が低いだって?そんな貴方は幸せものに違いない。


この究極のストレス社会に変貌を遂げた今、50年前より確実にパオーンと鳴くおじさんは増えている。


あなたもそうは思わないか。



増えているわけないだろと言い切れないのではないか。その潜在意識こそがこの国の正体、ジャパンの現状だ。




誰かのためを感じられない業務、役職、熟年離婚、老後の年金不安。


ストレスフルな状況の中真っ当に涙を流せるおじさんはそれほど多くない。と私は感じている。







「パオーン!」






いきなりそんな泣き声があがる社会を私はこの数年で何度も目の当たりにしてきた。


ここは平和の国。ジャパンのはずだ。


子象が街を彷徨(うろつ)くことはないが、同じ鳴き声で彷徨(さまよ)うおじさんはたくさんいる。



それが恐れ多くも我らが愛する国、日本。ジャパンだ。








カーテンを開け日光を浴びた勢いでそのままテレビの電源を入れる。


有名女優の突然の死が報道されていた。


メンタルヘルスに関してジャパンは後進国である。


ストレスなど感じていないと思うなかれ、精神的な死は昔よりも確実に近くに潜んでいる。


安倍元総理の退任のきっかけになった持病である潰瘍性大腸炎もストレスが大きなファクターになっている。


愛すべき国民を、ジャパンを守るため、

新内閣には早急な対応を切に願うばかりだ。


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