平均年齢70歳の、男の料理サークルの講師をしています。⑧

お料理セミプロな方何人かに、シニアの男性料理サークルの講師ってどう思う?って聞いてみたところ、
尋ねたみんなが口を揃えて言っていたのが「シニアの男性は難しい」。
主婦だったらサラッと言えば通じることが、一から教えないとできないからほんと大変、無理無理むりむり、と首を横に振ります。

男性のサークルは難しいと、市民センターの人も言っていました。
市内各地の市民センターでも折角サークルを立ち上げても講師が見つからない。
見つかっても馬が合わずやめられてしまったり、メンバー同士が仲良くなれずに一人二人とやめていったり。
講師がいないからメンバー当番制でレシピを探してきて料理しているサークルもあったりして、どこでも苦労しているらしい。
それでも市民センターがサークル化を望んでいたのは、
男子厨房に入らずでいきてきた今のシニア世代、急に伴侶に先立たれたとしたら自分ひとりではどうにも生活していけない。助け合おうにも特にこの地域は集合住宅が少なく戸建てで交流もしづらい。
だからサークル活動を通じて自分で生活する力を養うとともに人との交流をしてほしいのだそうです。


・・・・・・・・・・・・



無事に講座が終わって市民センターに行くこともなくなり、
私は仕事に追われた毎日を過ごして秋の終わりに、
市民センターから電話がきました。

「ご無沙汰しています〜先生お元気ですか?
あの、夏にやっていただいた講座の件ですが、
先生が決まって準備を進めていたんですよ〜」

「あー、それは良かったです〜〜」

「いえ、そしたらですねー、その先生がご病気になられて講師できなくなっちゃったんですよ〜〜」

・・・・・

(絶対うそだ)

「それでー、次の先生が見つかるまで先生にお願いできないかと思ってお電話させていただいたんですーー」

(うそでしょ〜〜〜〜)

「こちらで頑張って探しますので半年くらいでいいんです〜 決まったらすぐ辞めていただいて構いませんので、無理は承知ですがお願いしたいんです〜〜」

(最初からそういうつもりだったでしょ?)


「あの、私シニア向けのレシピには自信がなくて、講座の時もかなり悩んだんです。レシピを作るにも時間がかかりますし負担が大きいんです」

「あーそれならみなさんもお料理慣れてなくて高度なことはできませんし、1品2品軽く作って終わりでもきっと精一杯だと思うんですー。レシピが大変だということはみなさんにもお話ししておきますので負担のない程度でやっていただければー」


声を荒げることはありませんが、
やられた!という気持ちがいっぱいでした。
できないって言ったのに!
ここでちゃんと断らないと!

「なんかね、参加したみなさんの感想を聞いたら先生がよかったっておっしゃってるんですよー。先生、怒らずに根気よく教えてくれたって。だから本当はみなさん先生からまた教わりたいって思ってるんですよー」

「せっかく教わる気になったみなさんなのに、講師がいないともったいないと思うんですよー。講師は必ず探しますので、もし半年経って見つからなかくても終わりにして頂いてもいいので、なんとか半年やって頂けませんか?
講師料はちゃんとお支払いするようにお伝えしますので。本当に半年で大丈夫です」

・・・・・・

「半年、半年で必ずやめていいですか?」

「はい、もちろんです。ご迷惑はおかけしませんので!お忙しいのにどうもありがとうございます!わがまま言ってすみません!では来月からお願いしますねー。みなさんで運営する体制は整えていらっしゃいますので、よろしくお願いします!」


やられた。
断れないのを見透かされていたようで悔しいんだけど、
あの年齢の男性たちが「サークル」をやろうという気持ちになったのがすごいことなのがわかっているから、それを断ち切るわけにはいかない。
とにかく私も次の先生を探しながら、半年だけやってあげよう。


そんな気持ちで引き受けた、男の料理サークルが始まりました。







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