#9 独り言

僕はよく“独り言”を言ってしまう事に最近になって気が付いた。つい先日買い物をしにショッピングセンターに行き、服を見ていると「あーこれのカーキ色があればいいのになぁ、、」と無意識に小声で呟いていた。「ん?今心の声をオンで言った、、の、、か??いやいやいや!!そんな訳ないよぉ〜!」と特に気にも止めずまた服を見る。デザインが可愛いロンTを見つけ、手に取りながら「可愛いなぁ〜これ」とまた小声で呟いていた。また心の声をオンで言ってしまった事に少し動揺してしまい一度ササーッと静かに服屋を出る。だってボソボソと呟いている人が店内をうろちょろしているとそこに居るお客さんは僕の事を怖がって100%買い物に集中できないだろうし、店員さんからしたら接客と営業の邪魔でしかない。
一度店を出て心の中で決意表明をする。「心の声を口で言わない!言わない!」と掲げた事もまたもや小声で呟いてしまっている事にゾッとしてしまい、意識的にキュッと口を閉じてまた別の服屋に入る。店内をぶらぶらしてると意識してしまったからなのか分からないが沸沸と心の声が出てきて、口に出したい欲が湧き上がってくる。でも頑なにキュッと口を閉じながら店を回っていると途端に息が苦しくなってプハーっと大量の息を吐いた。どうやら独り言を言わないように意識しすぎて息を吐くのすら忘れていたらしい。その瞬間独り言を言う事は意識していなかったが僕の中で当たり前の習慣になっていた事に気付いたのだ。

一度気が付いたら不思議なもんで、家で1人テレビでバラエティ番組を見ながら「んな、アホな!」とかドラマや映画を見ながら「え、こっからの展開どーなんのよ?!」と言っていたり、街中でカップルが手を繋ぎながら幸せそうに笑っているのを見て「いいなぁ〜」とか美味しそうなお店があれば「美味しそうだなぁ〜。でも店内人あんま居ないから入りずらいなぁ〜。でもお腹空いてるから入りたいなぁ〜。でもなぁ〜。」とかいう長尺の独り言を言っている事が急にフラッシュバックしてきた。どうやらだいぶ前から僕はなにかと心の声を口に出していて生活していたらしい。うん。凄い恥ずかしい。誰か友達に指摘される前に気付けたのが不幸中の幸いと思ったが、多分友達も僕がボソボソと独り言呟いてる事に気付いたとしても気持ち悪がって指摘できないか。どっちみち恥ずかしい事には変わりない。

果たしていつから独り言を言っていたのだろう?小学生の頃、野球部に入部しており、たまに練習中の態度や試合内容があまりにも酷かったら、罰で部員全員でグラウンドの端から端までコーチが「終わり!」と言うまでダッシュしなければいけない地獄ダッシュがあった。とある日、理由は忘れたがコーチの怒りを買い、またいつもの地獄ダッシュをしていた時にコーチが「誰だ!今折り返しの地点で『何の意味があんだよ。。』って呟いたやつは!誰だ!」と凄い剣幕で怒ってきた。ただ部員達で顔を見合わせ「いや、俺言ってないよ、誰が言ったの?」という感じでなかなか呟いた犯人が出てこないので、痺れを切らしたコーチが「もう10本ダッシュ追加!!ほら!走れ!!」と地獄ダッシュが追加された事があった。今思えばその時の「何の意味があんだよ。。」と呟いたのはもしかしたら僕なのかもしれないと思い始めてきた。まぁ確かに何の意味があるのだろうとは思っていたし。走ったところで「シャー!!やったろー!!」とはならないじゃん。シンプルに疲れるし。でも僕の無意識に出る独り言のせいで罰を重くしていたなんて。。当時の部員の皆様大変申し訳ありませんでした。そう考えると無意識独り言デビューが小学生なら自ずと中学生や高校生、大学生の頃も運良く皆んなに気づかれていないだけで、ずーっと無意識に独り言を言っていた事になる。年月にして約10年以上か!無意識というのは本当に怖いなと改めて思うし、僕が把握していないだけで、僕から発せられる“無意識な独り言”のせいで誰かに迷惑をかけたり、傷つけている可能性があると思うと本当申し訳なさで一杯になる。

こりゃー治さないといけんと思い、インターネットで「独り言 治し方」と検索してみた。ネットの情報だが、独り言を無意識で多く言ってしまう時はストレスを溜め込んでいるプラス会話する頻度が少なくなってきているかららしい。なんとも切ない原因なのよ。でも割と話す機会は多い方なのに独り言を言ってしまうという事は、体がまだ話し足りないと思っているという事になる。つまり僕は自分が思っている以上におしゃべりが好きということになる。そんな結果、昔の自分が知ると多分びっくらするだろうなぁー。

小さい頃、少しの期間ではあるが虐められていた事があった。そのトラウマがあるからなのか物心ついた時から人に嫌われないように行動していた。虐められたって事は周りに比べて劣っているからなんだ、こんな劣ってる奴の話は誰も興味なんか無いだろうと思い自分の事をあまり話さなくなっていった。自分からはあまり話さず、出来るだけ相手から話しかけてくれるのを待ち、話を聞く事に徹した。その人に対して興味が出てきてただ単に趣味とか聞こうと思っても、なぜか聞いちゃったら嫌われるのではないか?という思考になってしまい聞けなかった。それをつい最近まで拗らせてきたので、てっきり自分は人と話すのが“苦手”、というよりかは億劫に感じていた。

でもこの歳になってまで拗らせているのは如何なものかと思いこの自己連載を初め、勇気を振り絞り本当少しずつだが自分の事を書いたり周りに話していく内に、「変なのー!」と指摘される事は偶にあるが、自分自身を完全に否定する人は現れなかった。それがとても嬉しくて、不器用ながらではあるが積極的に人と会話するようになった。まだ話すのが少し怖くなりサブイボが出る時はあるけれど、でも少しずつではあるが人と会話するのが楽しいと思えるようになってきた。お互いの共通点を見つければ嬉しくもなるし、相違点を知れば何でそういう物が好きだったり、考え方になったのかを聞くのも楽しい。人と話すのってこんなに面白いのか!身体が知ってしまった分、もっと話したい話したい!というちょっとしたハイモードになっているから最近独り言が多くなったのか。となればもっと話さなければ!身体が求めてるのだからな!なのでこの先、私儀間朝建はすこぉーしばかりうるさくなるかもしれませんが、「あぁ、会話を楽しんでるんだなぁー」という優しい目で見守ってくださいまし。だって隣でボソボソと独り言呟くよりかは100倍いいでしょ?


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