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シラミが教えてくれる人が服を着た時期

人類が最初に手にした道具は服(被る革布)か」で服の起源を考察したが、この段階ではまだ単なる革布で、人の服のように常時身に着けるものではなかった。それではいつ頃から、人の服が出現したのだろうか。シラミの進化を使って、服の出現時間を算定した試みがある。

人類二足歩行への道、中編」の(蛋白質、アミノ酸、及びDNAについて)でも説明したが、DNAが複製される時、塩基配列が一定の確率で間違いを起こす。勿論、この間違いは放射線、紫外線、その他の刺激でも起こる。そして、それが遺伝子に定着すると、新しい形質や能力を獲得し生物の進化が起こる。現在では、進化が起こる時間をDNAの変化から、ある程度算出できる。

ドイツ・マックスプランク進化人類学研究所の研究グループは、シラミに注目して人類が服を着た時期を算定した。シラミの仲間には、ころもジラミと言う服にのみ付くシラミがいるが、これは肌の毛に付く毛ジラミ(俗称)から進化したものだ。人類が毛むくじゃらだった頃は、シラミは体中に安住の地があった。しかし、人類が毛を失いツル肌になると、頭や局部にしか住めなくなったが、同時に、人類は服を身に着けるようになった。

毛ジラミは服に住めるように進化し、衣ジラミとなった。上述の研究所は、二つのシラミのDNA変化から、変異は7万年前に起こったと算定した。この時期は人類がアフリカから欧州に移動し始めた頃と同じだ。寒冷地への移動は厚い服を着ることになり、衣ジラミの進化に即する事となる。

服を着始めた時期は算定できたが、この話は簡単には終わらない。全人類が一斉に着始めた訳ではないし、ど言う服かも分からない。「人類が最初に手にした道具は服(被る革布)か」で考察したが、太古の昔は何かが突然始まることは無い、必ず前段階の起源がある。服の起源を考えると、それは何十万年も前に、類人猿の時代から革の断片として、利用されていた物と思われる。その革の断片はどのように、服に変わっていったのだろうか。謎はまだまだある。

以上。

次回は「人は踊って賢くなった

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