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アートの行方



師走。

ちかごろ政治経済に興味が沸くという私史上未だかつて無い状況にある。
それだけでなんとなく自分がまた一段と成長したような気になり、とても気分が良い。

まったく興味が持てなかった分野に踏み出せたのは、大好きなアートのお蔭と言っても過言では無い。アートは今も昔も私の人生に寄り添ってくれている。

ひとえに“アート”といっても色んな在り方があるだろう。
定義されるものではない、触れることのできない哲学的なものであり、ビッグマネーを動かす換金性の高いものでもある。
捉えどころがなく、常に変動する、アート。

そんなアートを色んな方面から見てみたい、名だたる学者たちは、一体アートをどの様に観察するのだろう。ましてや全ての物事が激動する時代ーーー。

ここに選んだ2冊は、アートについて論じられた本の中でも最もタイムリーな著書ではなかろうか。

(以下ちょいちょいネタバレです。ネタバレしても面白さが減っちゃうような本でもないと思うけど、嫌な方はここまで。)




1. 「新型コロナはアートをどう変えるか」

ど直球なタイトルに本屋さんでタイトルが見えた瞬間「教えてください!!」と心が叫んでいた。

新型コロナはアートをどう変えるか?この問いに対して、ムチムチの無知の私はせいぜい、「コロナで美術館とかアートフェアとか経済的に打撃受けてて大変そう。人々が外出を控えるようになったし、回復までに時間かかりそう。でもバーチャルとかオンラインとかが打開策になりそう!」ぐらいの答えしか返せない。


まず全体的な感想としては、全世界の情勢を確認ながら考察/予想していくので、最初読むのに結構時間はかかったし難しかった。アメリカと中国との「貿易戦争」の件とか、習近平の「中華統一(?)」、コロナになってから石油が余ったこととか、詳しく知らなかった。中国と香港の関係とか、イギリスがEU離脱する件とか…
中沢新一さんの「非対称の知性」という言葉が引用されている部分は一番難解でした。読んで私が理解した限りでは、まあ大雑把に言えば、自分以外の全てを理解し、受け入れよう、共存しよう、というもの多分。
アンパンマンにおけるバイキンマン、みたいなね。

自分の無知無知具合にヘキエキするけど。

でもそんなむちむちな私にも理解できるよう分かりやすく書いてくださっておりました!

また、美術館や芸術祭の今ある姿にも触れらている。
コロナにより甚大な被害を被ったことは事実で、乗り越えていこうと様々な楽しいアイデアが打ち出されるも、まだまだ残る課題…

それに対する著者なりの解決策も明快だし、もやもやしたものが残らないとてもスッキリした読後感でした。


☕️


2. 「脳から見るミュージアム」
美術館のことがもっと好きになる本。

はっとさせられたのが、「企画展がなければ美術館に行かない人が多い」ということ。

確かに…‼︎と思った。

私もその一人だ。
関西の美術館(関西在住なので)でどんな企画展がされているか調べて、興味が湧かなければ行かない。

それが別に悪いっていう内容ではなく、常設展こそ面白いのに、勿体ない!!という気持ちにさせられる。

美術館に保管される作品たちには作品たちが“生き抜いてきた”時間というものがあり、
様々な経緯や理由からその美術館に買い取られ、
また、選ばれた上で展示されている。

「なぜこの絵がここにあるのか?」

「なぜこの展示会が開催されるのか?」


なぜ?なぜ???という視点で見ると美術館のコレクションは一層面白いものになる。




そしてこれはとても大事なことだと思ったのだけど、


すでに述べたように、
コロナ禍で美術館は非常に厳しい状況に追い込まれた。
営業自粛や入館規制をしたりして、来館者数は落ち込んだことでしょう。

大勢の人に来てもらうことも大事。

でも美術館のもっとも重要な使命は、
今まで生き残ってきた作品たちを、後世にも残して行くこと。保存・修復していくこと。
今私たちが生きている時代のものを、100年後、200年後の人々が見られるようにすること。

たびたび展覧会などで論争を巻き起こす作品がある。

そんな“問題児”たちでさえ、私たちが生きた時代の“記録”なのである。

時代の流れや人々の価値観の変化で受け入れられ方も変化するアート。

そんな素晴らしくも脆いアートたちを、美術館は保護してくれる場所なのだということを気付かされた。


私はアートが大好きだし、500年も前の作品を目の当たりに出来ることに感動するし、これがこの後何年も、可能な限り残っていって欲しいと思う。


〈おわりに〉
この2冊を読んで共通して抱いた感想は、
アートとはただの娯楽や趣味ではなく、“記録”
なのだということ。
世界共通の記録。
そしてこんなに長い年月の中生き残ってきた作品があるということは、守ってきた人々の努力もあるだろうが、私たちが共通してアートに対して何らかの親しみや愛を感じているからでは無いだろうか。
勿論失われてきた作品も数えきれないほどある。
それでも、アート作品の“価値”はオークションにおいて上昇し続けて、コロナにも負けないかもしれない。海外の有名な美術館から来た有名な作品を「破壊してやろう」と思って展覧会に行く人はいるだろうか?

「死ぬまでに一目見たい」

そんな気持ちの人の方が多いのでは?


そんな風に思う理由を明確に説明出来る人は稀だと思う。
これは人間が共通して無意識・無条件に持っているアートへの“愛”じゃないだろうか。


そんなロマンチックな個人的感想で、この長い長い長すぎる読書レビューを締めくくりたいと思う。


ご静読、ありがとうございました!!

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