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眩しい

眩しいな、と思ったのはいつからだろうか。ライブハウスで弾け飛んで散らばってそれをひとつにするようなギラギラのビカビカのどデカいエネルギーを放つ後輩。対バン相手たちが次々に叫ぶ「最高の夜にしよう」「いちばんになりてえ」「ここに全部置いていけ」。それらの声が乱反射して屈折しないと届かない脳みそを持ち合わせたのはいつだったんだろうか。みんな眩しくて、光って輝いて、その光たちがすごい速さで向かってくる。俯かないと、自分が焼けてしまいそうで、腐って枯れてしまいそうで。息が詰まるから酸素を意識して吸わないといけないような。うまく泳げなくなったのはいつからなんだろう。

冷笑する気なんてまったくないのに、どうしたら良いのかわからないまま口角が上がっているような自分に気がつくと虚しくなる。そうやって生きる人間になりたくないのに、相手の本気を受け止められない人間だということすら露呈できないまま、小さく小さく縮んでいく。このまま誰にも気づかれずに出ていきたい。ライブハウスのドアというのはいつも、来るときは重たく、帰るときは一段と軽くなる。

まっすぐ前を見る人間になりたかった。少年少女のような瞳を持つ大人になりたかった。いつだって輝いて、それを自覚できないような人になりたかった。そういう生きづらさを引き受けたかった。いつからこうなったのか、生まれたときから決まっていたんだろうか。自己責任論と運命論の狭間に立ちつくすのはいつも通りだ。

わかってる。いつも怖いだけだ。まっすぐに光を見つめる勇気がないことを認められないだけだ。やる気がないことを隠して、性格を言い訳らしく着飾っているだけだ。誰にでもできると思いながら、誰にでもできるわけじゃないと言って、結局何もしていない。
わかってる。わかってる。


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