医学部入試の特異性
先日の大学入学共通テストの実施により、いよいよ本格化した2021年度入試ですが、その中でも一段と特異性を放つのが<医学部入試>です。
その<医学部入試の特異性>についていくつかの観点からまとめてみたい。
まず、全国に医学部がある大学がいくつあるでしょう?
国公立大が約50校 私立大が約30校で 合計約80校です。
各大学の定員はいずれも100名強程度ですので、毎年全国で
約1万名の受験生がめでたく「医学部」に入学します。
この1万個の「席」をめぐる競争は年を追うごとに激しさを増すばかり。
医学部受験熱は衰えを見せることなくヒートアップを続けています。
何故、ここまで医学部が人気を集めるのか?
その答えは言うまでもなく医学部合格=将来の医師となり高いステイタスや
高収入が高確率で実現できる。という点にあるのは事実だと思います。
その<超人気>の医学部入試の特異性を以下にまとめてみます。
【医学部入試の特異性その①】
<何処も驚異的な高倍率と出願料の高さ>
国公立の医学部入試の倍率は他の学部のそれよりも高く、毎年4~5倍で
推移しています。
驚くべきは私立大医学部では2 桁は当たり前で実質ベースでも10倍以
となるところも多数あります。
例年1月20日頃から2月初旬まで 全国の私立医学部の1次試験が五反田
などの貸会場にて東京会場受験として連日実施されます。
受験生はその後の試験結果の状況次第で全ては受験しないことを覚悟の
上、出願だけは多くの大学にしておくのが一般的です。
少ない人で3校程度、中には10校以上の私大に出願する受験生も珍しく
ありません。
私立医大の出願料(受検料)は殆どの大学で6万円ですので、受検料だ
けでも50万円以上の出費となることも珍しくありません。
【医学部入試の特異性その②】
<国公立と私立での学費のギャップ>
医学部は入学してから6年間通いますが6年間でかかる学費の総額は
国公立大では他の理系学部と同様で約350万円。
親元を離れ地方で一人暮らしをする場合はさらに家賃・生活費がかかり
ますが、本人のアルバイト代なども加味すれば親からの月々の仕送りは
常識的な金額で賄えます。
一方、私立大は学校が公表している金額でも6年間の学費総額は
最も安い国際医療福祉大で約1900万円。
以下、順天堂・慶應・自治医大・慈恵医大・日本医大などが公表ベース
で2000万円台の前半で学費の安い大学となります。
(比較的に偏差値の高いところは学費は安い傾向にあります)
逆に学費の高い大学は川崎医科大や東京女子医大で公表ベースでも
4000万円台の後半です。
他の大学でも4000万円近いところがかなりあります。
上記金額は、大学側が公表している6年間の総学費ですから、その他の
費用を考えると実際はその2倍程度の費用が掛かると言われています。
つまり子供を1人医学部へ通わせる場合、卒業までの6年間で
国公立であれば500~700万円ですが
私立となると4000~8000万円必要となります。
私立の金額は一般的なサラリーマンが何十年もかけて返済してやっと
マイホームを手に入れる住宅ローンの金額以上です。
つまり、いわゆる<普通の家庭>ではわが子を私立医学部へ通わせる
ことは不可能であると言えます。
【医学部入試の特異性その③】
<職業選択決定要素が非常に強い入試である>
医学部受験に合格するとかなり高い確率で医師になることが約束されます。
つまり、18歳時点で将来の自身の職業を決定する特異な入試なのです。
いうまでもなく医師という職業は人々の<命>を直接預かる・左右する
非常に責任の重い職業です。
その為、医学部入試では多くの大学で面接試験が行われ、その適性を判断
されることとなっていますが果たしてそれで十分か?と考えると大きな
疑問を感じます。
又、医学部受験生の<志望動機>を聞いてみても自分が将来この受験生に
大事な命を預けようとはとても思えないと不安になるような医学部志望生
も多数いるという話を耳にすることがしばしばあります。
是非とも大学側には、医学部受験においては高い学力と同時に人間の命を
預かるに足る資質をより強く測る入試制度の導入を望みます。
さらに、「医師国家試験」の合格率の高さにも疑問を抱きます。
医学部生は6 年卒業時に「医師国家試験」を受けます。
毎年、約1万人が受験し約9千人が合格します。
合格率90%の国家試験です
同じ土俵で考えることはできないでしょうが法学部卒業生が
司法試験を受けて90%合格したら?と考えると・・・・・・
ここにも医学部入試の特異性とその延長線上に大きな問題があるように
考えるのは私だけではないと思います。
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