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夢の話(イラスト短編小説)

あけましておめでとうございます。
投稿にだいぶ間が空いてしまいました。

私ごとではありますが、去年の9月に職場を変えましてバタバタしておりました。
それ故に、趣味のイラストもなかなか描けず。。。。

さて、今回は自分が見た夢の話を書いていきます。
今回描いたイラストは私の夢に出てきた見知らぬ女の子です。


10月下旬
仕事を終え0時過ぎに帰宅しました。
帰り道のコンビニで買ったビールを飲みながら、携帯を30分ほど眺めて
シャワーを浴び、着替えて一服して眠る。

それがいつもの流れ。
ほろ酔い気分でウトウトしていると、いつの間にか眠っていました。

夢の中で覚えているのは
場所が新宿だった事。
新宿駅のホームから周りの人をかき分けて改札を通る。
いつもの癖で南口に出て、そこから行く宛もないのにただ歩く。

バスタ新宿からエスカレーターで下に降り、喫煙所の前を通った時に見慣れない小道を見つけた。

小道というか路地だ。
喫煙所と横のビルの間にある、不気味な道。
通りの横には換気扇があり、ゴーっと音を立てている。
なぜか数秒その路地に魅せられてしまっていた。

そこから自然と右足が前に出る。
普段なら絶対に通らない道。
道に入ると不思議と周りの音がかなり遠くに感じた。
喧騒を抜けて誰もいない場所に来たみたいに。
心はなぜか穏やか。

そこでタバコに火をつけた。
タールは1ミリ。2年ほど前にタバコを辞めようとタールを1まで落として
結局そのまま吸い続けている。
カチッとライターの音が鳴り、胸いっぱいに煙を吸う。
まるで深呼吸をするみたいにたっぷり肺に含ませて、ゆっくりと煙を吐く。

上を見上げると建物の隙間を煙が綺麗に雲ひとつない空に漂って登っていく。
自分もこの煙みたいに漂って上手く生きていけないものかと思った。

そこで突然後ろから声をかけられた。
「ここ禁煙だよ」

驚いて振り向く。
そこには20代くらいの女の子がカーディガンを着て両腕を頭の上で組みながら
ジトっとした目でこっちを見て立っていた。

「あぁ、すみません」
携帯灰皿を持っていなかったからタバコを消して、どこに捨てるか迷ったが、
とりあえずポッケにしまった。

「どうやってここに来たの?」
彼女は見るからに自分より年下だが、やけに堂々とした態度で話しかけてきた。

「え、いや たまたま・・・」
年上のくせにオドオドと返す自分が情けなく感じた。
タバコを吸った罪悪感からだと信じたかった。

「あなたの事知ってるよ。仕事も、プライベートも、趣味も」
表情ひとつ変える事なく淡々と彼女は言った。

自分は彼女を知らない。見かけたこともない。
しかし、なぜか不気味とも思わず肩の力は抜けていて
さっきと変わらず心は穏やかだった。
頭の中を色々な言葉が走馬灯のようにかけ巡ったが、1周して
彼女が全て知っている事を信じたくなって、そのつもりで話かけた。

「自分はこうなるはずじゃなかった。周りには隠しているけど、
こんなに弱く生きるはずじゃなかった。」

「うん。知ってる。」

そうだよな。と心で思った。
普段の日常生活で強気で生きてきた。
メンタルだけは誰にも負けないと自分に言い聞かせて。
仕事も恋愛も強気な自分を演じていた。
それが自分の弱さだとも分かっていた。

インスタグラムでよく見る人がいる。
その人は自己紹介文の所に
世界で一番、弱くて無害な生き物です。
と書いている。
その人の投稿は日常を切りとったもののようだが、コメントがどこか
文学的でお洒落で憧れていた。

己の弱さを出しながら、こうもお洒落に生きれるものか。
どうして今その人を思い出しているのか自分でも分からない。
ただなんとなくその人みたいになりたいと思っていた。
しかし、他人を憧れと言ってそれに縋るのは弱いとも思っていた。

見かねたように彼女は聞いてきた。
「あなたにとって思い出ってなに?」

唐突にそう聞かれても驚かなかった。
ゆっくり考えて自分の頭に浮かんだ景色を言葉にした。
「それはあったかくて、懐かしくて、優しいものだよ」
今度はしっかり彼女の目を見て答えた。

すると、彼女はニコッと笑って
「それがあなたの強みだよ」
と言った。

そしてそこで目が覚めた。
瞬間的にあれが夢だったと分かった。

夢の中での会話。それは自分の脳内で作り上げられたもの。
なんの意味もない。と考えながら枕元の携帯で時間を確認した。

午前9時

そのまま起きた。
かなり長い時間眠ったみたいに、すっと起き上がって頭は冴えていた。
自分の中で作り上げた夢。
それでも夢の中で彼女に言われた事は、なぜか心の中に残っていた。

シャワーを浴びて、歯を磨いて。
新しく買って遊びに行く日に着ていこうと楽しみにとっておいたお気に入りのセーターを着て仕事に向かった。

足取りは軽く、電車の中で知らないお婆さんに席を譲った。

そしてその日は仕事を終えて恋人に会いに行った。


読んでいただきありがとうございました。
この夢を見てから頭の隅にあったシコリが取れた気がしました。

この話でなにを伝えたかったか自分でも分かりません。
ただ、ただ。自分はこれでいいんだと。このままの自分でいいんだと割り切る事が出来ました。

これを読んだ方に少しでも言い事が起こりますように。
明日はきっといい日になりますように。


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