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「美術館女子」じゃないやり方を考えた

「美術館女子」がめちゃくちゃにトレンド入りしている。あんまり良くない方向で。

批判の理由を分析すると大まかにこんな感じだ。

・「発信」していない=主体性がない

「AKB48チーム8のメンバーが各地の美術館を訪れ、写真を通じて、アートの力を発信していく」

でも、記事の中身を見ると、全然「メンバーが発信」していない。
まず、写真を撮っているのが小栗さん本人ではない。全身が入ったカメラ目線の「他撮り」だった。そこが問題だ。小栗さんは作品の色と服の色を合わせるなど、「映え」るコツをたくさん使う映えのプロなのに、自分で写真を撮っていないの、めちゃくちゃもったいない。加えて普段撮影禁止だろう距離で撮っている写真もあって、映えの参考には全然ならない。
それに、文字の部分も、「他撮り」だった。
写真のキャプションは全てカギカッコつきで小栗さんのコメントが記されている。インタビュー形式みたいに「印象に残りました」「びっくりしました」という感想だけで、聞かれて答えているという印象が強い。作品はほぼ名前だけしか載っていなくて、アート自体のことは全然わからず、小栗さんの気持ちのことだけが詳しく分かった。

ここに「美術館に来ている女子を見る企画」みたいなきもちわるさを感じる人もいると思う。「美術館女子」と銘打っているけど、実際は「美術館に来ている女子を見る男子」のための企画みたいな感じがする。

・「女子」が無知の代名詞になっている

「これまでそんなに美術館に遊びに行ったこともなければ、美術に詳しいわけでもない」

と小栗さんはコメントしている。どの人にも絶対知らない領域があって、敷居が高く感じている分野があって、そして初心者向けの企画が絶対に必要だ。
でも、その初心者向けの記事タイトルが「美術館女子」なことが問題なんだと思う。
美術館初心者が、知識がなくても楽しめるようにするための企画。それならなんで、「はじめての美術館」としなかったのか。

・「映え」を求めて美術館に来るな

こういう意見もTwitterでよく見た。上の二つと一緒になって、「女子がみんな映えを求めて美術館に来ると思うな」「ただ作品を見に来ているだけだ」「私は作品のことがもっと知りたい」というようなものだ。
でも、上二つの理由で「女子」という名前がくっついているだけで、それを外せば「美術館で映え写真を撮る」というのはすごくいい企画だと私は思った。作品の楽しみ方を一つに決めてしまうのはもったいない。作家の背景を詳しく知ってその深みを味わう人もいれば、色使いの鮮やかさに目の保養を求めにくる人もいるし、あるいは美術館の静かな空気がただ落ち着くという人もいる。いろんな人のために美術館はある。デートで来たっていい。来ないのの100倍、美術館にとってもカップルにとってもいいことばかりだ。
だから美術館に「映え」を求めて写真を撮りにくる人がいても、それも素敵な楽しみかたのひとつだろう。

こうして問題点を並べてみると、誰に向けた記事なのかがよく分からないということが浮かび上がってくる。「映え」が好きな女子? 女性アイドルが好きな男子? 美術館初心者の女子? 女子と美術館でデートしたい男子? それとも、公立美術館に興味がある人?

そこでターゲットを明確にした上で、どんなタイトルにしたらいいか自分なりに考えてみた。

①インスタ好きの女子へー「映える美術館」

・メンバー本人が美術館で「自撮り」した写真をメインに使う
・作品の色と服の色を合わせるなど、自撮りのプロであるアイドルのテクニックを伝授
・作品は、撮影可能なものを中心に載せる
・とことん作品の「見た目」に着目した解説
・既に美術館の常連でも新しい視点として読める
・写真>作品

②美術館初心者の女子へー「はじめて美術館の楽しみ方」

・作品の説明を易しくわかりやすく、学芸員を交えて載せる
・敷居の低さとしての「映え写真」の提示
・写真は、作品単体の写真をメインに、作品を見るメンバー、学芸員に話を聞くメンバーなど「行動」を映す
・作品>写真

③アイドルのファンへー「もっと好きになる美術館デート」

・作品を見るメンバーの写真、カメラ目線のメンバーの写真
・恋人を「映え」させてあげられる写真スポット、テクニックの紹介
・作品の説明は「知るともっと楽しくなる」などと補足
・この男性アイドルverもあればもっと公平
・写真>作品

④美術好き女子へー「気軽に公立美術館」

・公立美術館ならではの設備、アクセスの気軽さ
・作品の解説をたっぷりと
・写真は作品単体をメインに、作品を見るメンバーの姿も
・作品>写真
・できればアイドル自身も、美術に興味がある人がいい。美大出身のアイドルもいる。(欅坂46の佐藤詩織さんとか)(これは趣味です)

しっかりターゲットを決めないで「美術館に普段来ない人を呼びたい」くらいの軽い気持ちでやると様々な問題が起こるのだな、と勉強になった。

美術館も大好きで、でも詳しくなくて、
女子だけど、でもアイドルは大好き。
そんな立場からも、こういう記事を自分では書きたくない。それでも、「女子をアイキャッチにしてないか?」「女子の方が無知だって思い込んでないか?」「わかりやすい言葉につられて多様性を簡単に捨象してないか?」と言われたらドキドキしてしまうくらいには未熟だ。

「女子」を応援する「女子」として、曖昧で簡単な方で妥協しないように。難しくてもリアルに近いものが書けるように。気を引き締めていきたい。

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