アーカイブプロジェクト|ホームビデオ鑑賞会
そのなかの活動のひとつ「アーカイブプロジェクト」では、「手話から生まれる自然な生活文化の保存」をテーマに、手話やろう者の生活文化の新たなアーカイブ手法とその活用についてリサーチやディスカッションを重ねています。そのはじまりとして、まずはろう者の家庭で撮影された「ホームビデオ」の鑑賞会を行い、ろう者の自然な姿や会話のやりとりの様子を見ながら、めとてラボメンバーと語り合う会を開きました。今回は、その鑑賞会の様子をめとてラボメンバー・岩泉穂がお届けします。
ホームビデオを通して見えてくる文化と工夫
今回、私、岩泉穂の母の実家である“井岡さん家のホームビデオ”鑑賞会を行いました。この鑑賞会のきっかけは、ある時、「移動する中心|GAYA」の活動や、8ミリフィルムをデータ化して上映するアーカイブプロジェクト「世田谷クロニクル」の存在を聞き、興味を持ちはじめた頃、「私の祖母の家にちょうど8ミリフィルムが見つかった!」というのがはじまりです。
めとてラボメンバーで話し合い、まずはメンバー間で一度、“井岡さん家のホームビデオ”鑑賞会をやってみようか、ということになりました。
私の母の家族は全員ろう者です。
母からよく幼少期の思い出話を聴いていました。その話を聴く度に、そんな面白いやり取りを実際に観ることができたらいいのに!とずっと思っていたので、その8ミリフィルムのホームビデオを実際に観た時は、とても嬉しくて温かくて言葉には言い表せないのですが全身がゾクゾクしていました。
母の幼少期の思い出話を聴いた上でそのホームビデオを観ると、ビデオの奥にある目には見えない文化だったり、暮らしのなかの工夫が浮かび上がってきます。
めとてラボの「アーカイブプロジェクト」は、さまざまなろう者のホームビデオを収集し、いろいろな人と一緒に鑑賞していくことで、今まで気づかなかったところに文化や工夫が繰り広げられていたことに出会えるのではないか、という仮説と期待からはじまっています。
“井岡さん家のホームビデオ”鑑賞会
今回、ホームビデオに映っている私の母や叔父をお招きして、ふたりの幼少期のエピソードトークとともにホームビデオを鑑賞しました。
小学校の運動会です。
いつもかけっこで1番の叔父、いつもかけっこでビリの母。
叔父はリレー選手になって、いつもアンカーでした。
母や叔父の幼少期は口話教育が推奨されていました。私にとって、口話教育とはすごく辛く苦しくて嫌なイメージです。実際に苦しんでいたろう者がたくさんいたからです。
しかし、ホームビデオを見てみるとゲーム感覚で楽しく練習しています。
初めてのホームビデオ鑑賞会を終えて
今回、ホームビデオ鑑賞会を経て、めとてラボメンバーだけでなく、私の母や叔父にも変化がありました。
母や叔父の感想を聴いて、アーカイブプロジェクトを行うことで、生活文化を模索して新たな発見をしていくだけでなく、こうしたプロジェクトに携わった人たちに良い変化をもたらす力があるのだと思いました。
最後に、娘として、姪として、この企画に携わってくださった皆様に感謝申し上げます。