死んじゃったら、どうなるの?

※以下、私「」あかり(4歳)『』

~祖母の通夜の日の朝~
「じゃーん!今日は新しいお洋服ダヨーン」
『わあ!かわいい~!ママが買ってくれたと?』
「今日は黒い服を着る日だからねえ」
『なんで?』
「今日はひいおばあちゃんのお通夜だからね」
『ん?なに?』
「……えーっとね。ひいおばあちゃんのお別れ会」
『お別れ会?』
「ひいおばあちゃん、死んじゃったから」

『……え?おうじさまは?』
「ん?……あぁ、王子様は来んよ」
『おうじさまがヨシヨシしたらいきかえるんじゃないの?』
「いや、生き返らんよ。生き返るのは白雪姫くらいなもんよ」
『え…?』
「死んだらおしまい。いなくなるの。」

『ごはんたべたらげんきになるんじゃない?』
「ごはんはもう食べられんよ。死んだら食べられん」
『びょういんは?びょういん行ったらいいんじゃない?』
「何なら病院で死んだよ」
『え…?なおらんやったと?なんで?』
「ん~……。めっちゃおばあちゃんだから」

『めっちゃおばあちゃん……?おばあちゃんがしんだの?』
「死んだのはひいおばあちゃん。じいじのママ」
『じいじのママが、しんじゃったの?』

『しんじゃったら、どうなるの?』
「んー。いなくなるね。会えなくなる。ずっと。」
『ママにあえないの?あかりかなしい(目に涙をためる)』
「いやいや、あかりちゃんのママはおるよ。大丈夫」
『そっか。あかりかなしくない』

『……でもなんかママはかなしい感じがするけど』
「…うん。ママはかなしい。ママのばあばだからね」

「でもね、ママよりじいじの方がめっちゃかなしいよ」
『じいじのママいなくなるから?』
「そう。」
『じいじ、ないちゃうかもしれんね』
「うん。じいじ泣いちゃうかもしれん」
『エーン!エーン!ってなくかもしれんね』
「うん、泣くかもしれんね」
『よしよしってしてあげんとね。
 あかりちゃんがいるから大丈夫だよ~って言ってあげんと』

『いなくなるって、どこにいっちゃうの?』
「ん~とね。燃やすんだよね」
『……もやす?ってなに?』
「火をつけるんだよ」
『しをつけるって、なに?』
(エグいことを言ってしまったが、意味が伝わらず安心する私)

「ん~とね。一説によれば空に帰るとか言うね」
『おそらにいくの?』
「そう、星になって上から見てる説もあるね。」
『そうなんだぁ』
「いや、ママも死んだことないけわからん。諸説ある」

『どうやっておそらにいくの?』
「どうやって行くと思う?どうやって行くか見てみよう」
『うん。そうだね。みてみよう』

~~~~~~~~

あかりが死に触れるのは二回目。

一回目は、先月の白雪姫の劇。
あかりはピンクの小人役で、もらった台詞のうちのひとつは『死んでるよ!!!』という、白雪姫の死亡報告だった。げんきいっぱい、かわいい死亡報告だった。

そして今回。
白雪姫の経験から、死んだらいなくなる、が理解しにくい。でも、めちゃくちゃ時間をかけて説明して、何となくわかったようだった。

あかりは『じいじのママがいなくなってもう会えない。だからじいじはめっちゃ悲しくて泣いちゃうかもしれない。』ということは何とか理解できたようだった。

葬儀場に着くなり、あかりはじいじに話しかけていた。

『あかりは4人できたよ。ママとパパとあかりけんちゃん。じいじは3人できたでしょ。じいじと、ばあばと、じいじのママ。3人。』

『じいじはママいなくなるんでしょ。あかりのママはおるよ。だからあかりはかなしくないよ。でも、じいじはママいなくなるからかなしいでしよ』

あかりなりに、じいじの気持ちに寄り添っていた。

死ぬということは、まだわからない。
でも“ママがいなくなる寂しさ”はわかる。
ママがいなくて寂しい時に、どうしてほしいかもわかる。

連休明けの保育園の登園時、あかりは『ママがいい』と泣くことがある。それは他のおともだちもおんなじ。連休明けの保育園は、ママとお別れする寂しさを叫ぶ、ママとおうちに帰りたいと叫ぶ、こどもたちの泣き声の大合唱だ。

“死”はあかりからは遠いけど、
“ママがいなくなる”はとっても身近。

葬儀の日の朝、あかりは5時半に目が覚めた。
『じいじのところにいく』
と、じいじのところへパタパタと駆けていく。

『あかり、いちばんにおきたよ』
じいじ「いーや。じいじがいちばん。3時間前に起きとった」

父はあまり寝ていなかった。

『おわかれかいのあと、じいじのママはいなくなるんでしょ。おそらにいくんでしょ。どうやっていくとおもう?あかりはね、ロケットにのって、びゅーんっていくとおもうよ。じいじはどうおもう??』

父は、とっても優しい顔をして、目を細めて笑った。

出棺の時、父は泣いた。

あかりはそれを真剣な眼差しでじっと見ていた。
泣いたじいじを見るのはびっくりするかな、と思い、私はあかりの背丈にしゃがみこむ。
あかりはそんな私を気にもとめず、ただ、じっと見ていた。

火葬を待っている間、あかりはじいじのところに言って
『じいじないてたね。かなしいね』
と小さい声で話しかけていたと、父が教えてくれた。

ありがとうね、あかりちゃん。

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