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ネーミングは引っかかりが大切(後編)

少し時間が空いてしまいましたが、今度は良いネーミングについて語ってみたいと思います。

ネーミングの手順

まずは最初に、どんな風にネーミングって考えるの?と言うプロセスからお話ししましょう。良いネーミングの条件にもつながります。

商品を開発したり、お店を開く、会社を起業する場合でも、まずはそのネーミングを考えますね。その時、何を取っかかりに考え始めるでしょうか。一番はコンセプトではないでしょうか。企業でいうと理念やパーパス。

商品や活動を通して社会に提供したい価値は何なのか?これが端的に伝わるネーミングは強いです。ネーミングが一人歩きしてもそのままで活動内容が伝わり、広告宣伝になるからです。

しかし、この段階で良いものが思いつかなかったとしても、がっかりすることはありません。レイヤーを一つ落として商品特徴とか、使った時の気持ちを表現してみるとか、見つけた言葉の語源を見るとか、とにかくいろんな角度から案出しをしていきます。ある意味この時点では、数打ちゃ当たるくらいのおおらかさで、否定せずに沢山の案を出していきます。プロっぽく言うと、アイディエーションと言います。

ここで一つ注意点といいますか、過去の反省を兼ねてお伝えしたいことは、決して論理的に考えようと思わないことです。縦軸に何なに、横軸に何なにを取ってこの4象限からそれぞれ発想しました…てなことは、最初のとっかかりとしてはあってもいいのですが、発想が限定されてしまい、膨らまなくなってしまいます。

プレゼン上はその方がカッコがつくのですが、大抵なし崩しになって後にその象限から飛び出さざるを得なくなります、笑

私は、最初は上記のようにスタートすることもあるのですが、そこからは完全に連想ゲームのようにどんどん、どんどん広げて考えていきます。その時に利用するのは、英語辞典(英辞郎 Pro https://eowp.alc.co.jp/ など)や翻訳ツール(DeepL https://www.deepl.com/translator など)、類義語辞典(weblioシソーラス https://thesaurus.weblio.jp/ など)を縦横無尽に行ったり来たりし、没入しながらピンと来るワードを探っていきます。

最近は和なネーミングが流行っているようなので、もちろん和方向も探ります。こちらは漢字の由来なども参照して、できるだけWミーニングなど深みのある字を探ったりします。まだ研究できていないのですが、一文字一文字に意味があると言う日本最古の文字、カタカムナを入れたネーミングにもいつか挑戦してみたいと思っています。 

こんな感じで良さそうだと思ったネーミングに、込めた意味などの説明文をつけて、1st roundでは5〜10案ほど提案します。クライアントの好みや企業風土によって「ここあたりは良いね」といった方向性が絞られ、そこからまた 2nd round、3rd roundと何度か提案を繰り返していきます。いいものがあれば一発で決まる場合もあります。

こうやって、作り方は意外といい意味で行き当たりバッタリというか、極限まで遠くに行ったり近くに戻ったりを繰り返しながら開発をしていきます。これは私の場合ですので、実際には人それぞれでしょう。

良いネーミングの条件

一番良いのは、名前を見ただけでその特徴や強みが端的に伝わるネーミングです。私は所属していた会社で国籍も多様性があるネーミングチームがあったり、コピーライターと一緒に開発したりする中で、私も一緒に開発して混ぜこぜで提案することが多かったのですが、不思議なことに私の案が残ることが多かったのです。

あれ、自分ネーミングセンスあるのかな?と勘違いしかかったのですが、それは違くて、コンセプトを考えている張本人だからそれは強いよね、ってことでした。考えた名前に説得力があるようです。ですので、自分センスがないからと諦めず、想いが強ければ良いネーミングは生み出せますので、担当者の方、これから社長になる方、マーケターの方、ここは執着と愛着を持って粘ってくださいね。

ここから、良いネーミングの条件をポンポンと挙げていきます。

物語れる

ネーミングそのものを見ただけで内容が分かるか、もしくはその意味を説明することが事業案内・商品案内になるような、その名前だけで5分程話が持つくらいの物語性があると良いですね。

独自性がある

前編に記した良くないネーミング条件の反転でもありますので、そちらも参照いただけると有り難いですが、独自性は必須条件です。商標を取る上でも重要です。一般用語ではない、アブリビエーション(SNSなど)ではない、どこかで聞いたようなサウンドではない、といった要件も加味しつつ。

ただ、ものすごい数のネーミングが日々生まれ続ける中で、新しいものを考え出すのは至難の技なのも事実です。そのため、最近は何かと何かをかけ合わせて新しく言葉を作る「造語」形式が自然と多くなっている気がします。

程よい長さ

3〜5文字が良いと言われていますが、韻を踏んでいればそれ以上でも行けるでしょう。人の五感の中で最も記憶に残るのが音と言われているので、音が耳に残ることが重要なのです。余談ですが、ブランドネーム&ロゴを作るとき、ジングルも一緒に作るのオススメですよ。ジングルとは森永の「ピポパポ」みたいなオリジナルの音です。

引っかかりとは

ここで、ようやく本題に入ります。上記の条件は踏まえた上で最も重要だと思うことは「引っかかり」なのです。まずは音的テクニックとして、意識して以下を入れ込むよう工夫します。

破裂音

引っかかりを作る基本中のキは、「破裂音」です。厳密に言うと定義が難しいのですが、簡単に言うと「パピプペポ」などの音だと思っても良いでしょう。詳細にはこちらのサイトにあるような「破裂音」「摩擦音」「破擦(はさつ)音」「弾き音」などもほぼ同じで、全て音に引っかかりがあるグループになります。

濁音

こちらは「バビブベボ」「ダヂヅデド」のような濁った音です。

伸ばす音

長音符というらしいですが、「ラーメン」など「ー」が入った伸ばす音です。

つまる音

正式には「促音(そくおん)」と言うらしいですが、小さな「っ」です。「やっぱり」「すらっと」など、日本語ではカ行・サ行・タ行・パ行の文字の前でのみ使われるそうですから、破裂音との組み合わせでクセが強くなるわけですね。

意味での引っかかり

上記は音のテクニック的な引っかかりの話でしたが、意味合いでの引っかかりも意外といい働きをしてくれます。よく言われるのは、音的意味的に綺麗なネーミングよりも、「え、何これ?」「どういう意味?」と引っかかったものの方が後々記憶に残り、覚えてもらいやすいと言うことです。前編で取り上げたツァイガルニク効果ですね。

形状での引っかかり

ここまで言葉的な工夫を述べてきたものの、どうしてもこのネーミングがいいけれどイマイチ引っかかりが作れない、どうしようと言う場合も確かにあるのです。他の候補は商標取れないしとか、社長が気に入っちゃったからとか…。こんな時は、ロゴ形状で個性を出してあげることも可能ですよ。最後の手段としたいですが。

以上、思いつくままにネーミングについて語ってみました。昔は物理的な辞書をいくつもデスクにバァーッと広げて作業していたのを懐かしく思い出しましたが、今は何でもオンラインで解決。便利になりました。けど、こんなネーミング辞典も眺めながら発想が広がって良いですよ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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