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愛す、あいす、アイス…

ある初夏のこと。
目が覚めると、枕は汗で濡れていた。
暑い、と小さな声で呟き、私はカーテンを開けた。

カーテンを開けるとそこにはギラギラとした太陽がまだ7時だと言うのに世界を熱く照らしていた。

朝から元気いいですね。もう少しテンション下げていいですよ、太陽様。

もちろん、そんな言葉など届くはずがなく、私は朝からげんなりとしながら、支度を済ませた。

家を出ると起きた時よりも強い日差しがさしていた。
天気予報によると今日のピークは11時だそうだ。
これでまだ最高潮に達してないと考えると熱いのに寒気がした。
流石に今日からクーラーつくだろう。あと、アイスが食べたいな。


学校に着き、クーラーが付いている(と思われる)教室へ意気揚々と向かった。
この角を曲がると教室d…

あっ!

私は嫌な光景を見てしまった。教室のドアが開いているのだ。もしかして…。いや、馬鹿な、あり得ない。ただドアを閉め忘れてるだけだろう。

恐る恐る教室へ近づくと、予想は見事に外れ、蒸し蒸しとした空気が私を襲った。朝立てたフラグはしっかりと回収する羽目となった。

嘘だろ、こんな部屋で1日を過ごさなきゃなのか?
いや、まだだ。先生がHRでクーラーを付けてくれるはずだ。

あっ…また、私はフラグを立ててしまった。


HRの時間になり、先生がやってきt…

はっ!!

またしても私は絶望した。そう、リモコンを持っていないのだ。目の前が真っ白になった。本当に真っ白になって少し感動をした。

先生からクーラーは7月からだと言われた。
まだ7月まで半月も残っているので、当然教室はブーイングの嵐だ。

今日は暑くなったり寒くなったり、嵐が起きたり異常気象だな。

もう、こんなふざけたことしか考えられなくなっていた。

「代わりに扇風機つくから我慢して」

先生が言った。

…先生、それは火に油ですよ。

私の思った通りブーイングはさらに大きくなった。
しかし、時間が経つとみんなは諦め、静かになった。


さて、嵐が過ぎ去ったあとは授業だ。
なんだったっけな。んー?

はい、最悪ですね。数学Ⅲだ。

私は、はーっとため息をつきながら忌まわしき数Ⅲの準備をした。


先生がやってきて授業が始まった。
相変わらず部屋は暑い。周りでは下敷きで、服でパタパタしながら暑さを凌いでる。無論、私もその一人だ。

そして、授業が難しく、イライラしてくる。
そのイライラは私を色々な意味でヒートアップさせた。
隣では暑さからか、貧乏揺すりをしている。無理もないが少しうざい。

その貧乏揺すり男の隣の女子はどうだろうか。
チラッと見てみた。


えっ…なんだと…。

私は驚愕した。彼女は窓際に座っているのに関わらず、眉一つ動かさない綺麗な顔で、黒板を見つめては、ノートを取り、問題に取り組んでいる。

私はチラ見をするだけだったのに、数秒間その姿に魅入ってしまった。
いかんいかん、授業に集中しなければ。

しかし、私は気がつくと見てしまっていた。

そう、私は一目惚れしてしまった。


私はその授業の後から彼女の虜になってしまった。
それは、今日の地獄の業火をも忘れるほどであった。
他の授業でも彼女のことで頭がいっぱいになり、軽く混乱をした。

ハッとすると、1日を終えるチャイムが鳴っていた。
体感だと20分で1日が終わった気分だった。

恋ってすごいな

そんなことを考えながら帰った。


私は帰り道でも悶々としていた。

彼女と話してみたい。
彼女の好きな食べ物を知りたい。
誕生日、趣味,男のタイプ…なんでも知りたい。

そう思っていた。恋は盲目とはよく言ったものだ。
今思い出すと気持ちが悪い。

しかし、好きになってしまったものは仕方ない。
私は,その彼女を愛すことを決めた。

けど,愛すって簡単に言えるけど、行動は大変だよな。その人の人生に支障がない程度で深く、広く愛することは非常に難しい。


愛す、あいす、アイス…。

あっ,アイス食べる予定でいたんだった。あの頃はアイスを買わずに帰っちゃったもんな。

今日は甘酸っぱいレモン味のサクレを買おう。


もちろん,家で待ってる彼女の分もね。