幻想の音楽通信 Vol 8〈年間ベスト1〉
毎年やめる事ができないベストリスト巡り。またその時期になりました。順不同のベストリストを作りたいと思い見当をつけずに書き出しています。今年も大量の聴き逃し作品があり、年々増える一方です。大量にあるので一言ずつ挙げていきます。シングルやEP、アルバム、コンピレーション、スプリットと形式の区分けはしていません。下に行けば行く程よく聴いた作品になっています。
ECCO2K - E
ストックホルムのミュージシャン兼デザイナーのECCO2Kのサード・アルバムは前作までのYung Leanの参加に見られる特色クラウド・ラップやトラップとしての要素が強かったのですが今作ではYves Tumorの参加(Sean Bowie名義でクレジットされています)により、実験性の高いポスト・インダストリアルな要素と平沢進を彷彿するテイストが加味された作品です。
DJ Seinfeld - Parallax EP
スウェーデンのエレクトロニック・アーティストDJ Seinfeldの一連の新作EP群の中でも「Please Slow Down」をよく聴きました。早い段階にBurialが進まなくなったフューチャー・ガレージと2010年代にグライムが大きな変容を遂げた事に連動してブレークビーツにもその余波(LoneやMachine Girlに顕著)がうかがえる一枚です。
Flying Lotus - Flamagra
最初期の特徴にあったウォンキー観は後退し、ニュージャズテイストで如何に短尺で実験的な作風で魅せるかという事に注力する事がFlying Lotusの課題かのようにどんどん曲が短くなっていきますがいつも内省的なコンセプトだったり叙事詩の中に高揚感を覚えます。
Project Pablo - Inside Unsolved
バンクーバーのアウトサイダー・ハウスアーティストのProject Pabloも新作EPを立て続けにリリースしてきました。2作目「Come to Canada You Will Like It」ではダウンテンポの要素を取り入れていましたが今作は1作目の「 I Want to Believe」のテイストに近いニュー・ディスコとバレアリック・ビートを平明な清涼感を伴った作風になっています。
Josin - In the Blank Space
ケルン出身のアーティスト。母は韓国系、父はドイツにルーツを持つJosinのサウンドはトム・ヨークを思わせるニュアンスに対してポップなアンビエンスを兼ねた作品です。
元ちとせ - 元唄 幽玄 〜元ちとせ 奄美シマ唄REMIX〜
異色すぎるリミックス。2018年にリリースした「元唄 ~元ちとせ 奄美シマ唄集~」からアーティストがそれぞれチョイスしたリミックス集です。Dorian Concept、Ras G、Chihei Hatakeyama、坂本慎太郎、Tim Hecker、Ryuichi Sakamoto、と凄いメンバーというだけでなくそれぞれの特色に合ったリミックスには驚きます。
Datassette - Existenzmaximum
ロイクソップのエレクトロポップや年々評価が上がる光田康典の手掛ける「クロノ・トリガー」を思わせるサウンドにブリープ・テクノやグリッチが点在する作品です。
Bunny Boy - Did the Angels Come to Kiss You
マサチューセッツ州出身のアーティストなんですが最もミステリアスな作風でローファイ/フォーク/アンビエント/ドリーム・ポップと種々の音が連立しながら短尺な楽曲と長尺な楽曲が入り組む素晴らしい怪作です。
Omodaka - Gujoh Bushi
寺田創一のもう一つのプロジェクト。2006年のアルバムを含めるとこれで4作目。 特に横田信一郎によるリミックス「Ryotsu Jinku」がとても良いです。柔和なビットポップと演歌の調合音。
Rory St John - Excommunication
アイルランド出身のインダストリアル/ダブ・テクノを核に据えるアーティスト。Andy Stottとは全く違う角度から貫かれたダブ・テクノで過去作Fran Hartnett によるリミックス「13 Bullet」の作風にも折り重なるEPです。
AAAMYYY - Body
長野県出身のトラックメイカー/シンガーソングライター。これがファーストアルバムというのが凄いです。前作のEP「MABOROSI WEEKEND」がシンセポップを主軸にしているのに比べてソフィスティーなテイストを加味したトラップサウンドの豊富さがOpus Innへの参加曲「 Lost Youth」からも窺えます。
Anamanaguchi - [USA]
Anamanaguchiをチップチューンとパワーポップの新しい型として呈示したサウンド性や認識がまたこのアルバムで変わったように思います。前作に比べて静的な部分が増えたように思いますが前作はビットミュージックを意識的に取り入れていたのが今作は16-bitよりグリッチ・ポップのテイストが際立っている作品だと思います。
Suss - High Line
ニューヨークのアーティスト。カントリーとアンビエントという自分にとって魅力的な組み合わせというだけでなくアメリカン・プリミティヴィスムとの組み合わせでもあるセカンド。前作よりも好みでよく聴きました。
AKUA - Them Spirits
カナダのアーティストAKUAのコンテンポラリー性が昨今のオルタナティブR&Bに対してどう変容するのかこれからの作風が気になります。
Monokle / АL-90 - Mindperfection
個人的にアウトサイダー・ハウスの認知を広げた一人にАL-90を挙げています。極寒のロシアから今年も2作品を聴く事ができました。その一枚は同じくロシア出身のMonokleとの共作。MonokleはドイツのKi Recordsかもリリースしています。
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