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『イコール』創刊1号にご協力いただいた皆様への手紙


(1)『イコール』とは何か?

 参加型メディア一筋の橘川幸夫が最後の雑誌として『イコール』を立ち上げました。いつものように時代の変換期のエネルギーを感じて、直感的に走って創刊しました。そして、いつものように、創刊してから『イコール』の意味を考えています。

 ChatGPTの登場は、具体的な機能としてというより、時代の大きな変節点になるだろうという直感がありました。それは近代が蒸気タービンという装置を開発して肉体労働から人類を解放しようとしたように、ChatGPTは精神労働から人類を解放しようとするものだと思います。

 近代の産業革命が人類から肉体労働を解放し、その結果で獲得した「余暇」の中で人類は、新しい表現活動の時代を開始し、個人の文学やアート、スポーツ、旅行、恋愛などという近代の文化を発展させました。近代は個人を産み、個人がさまざまに学び、経験し、情報を個人の中に蓄積して、近代的自我を発展させていきました。

 それは、素晴らしい出来事だっと思いますが、判明、個人の孤立化と、競争社会による個人と個人の対立化を進行させたと思います。

 ChatGPTは、「個人の中に情報を蓄積する」という近代の方法を解放します。個人の情報や経験を共有して、人間の精神労働を解放していくと思います。そうした環境の中で、人類は近代の次のステージに向かうのだと思います。近代が近代的自我(コギト)を生んだように、次の時代はコギトの共有化・相互利用化による超コギトの時代がやってくるのだと思います。

 それこそが、橘川が長年追求してきた「参加型社会」の具体的な実現に向かっているのだと思います。近代人のまま、どれだけ大量の人間を集めても参加型にはなりません。一人ひとりが自立しながら、相互に協力し共有する精神こそが、次の時代の超コギトになると思ってきました。

『イコール』は、そうした時代認識の上で、橘川が信頼出来る仲間・友人たちと一緒に作った超コギトです。少し怪しい(笑)

(2)新しい世界の気配

 さて、精神労働から解放された人間は何をするのか。もともとデジタル革命というのは「機械がやるべきことは機械にやらせて、機械に出来ないことだけを人間が追求すべきだ」というコンセプトで、単調な業務や肉体労働をコンピューにやってもらう革命でした。その究極のところにデータベースとAIが登場しました。

 これからの人間は「機械に出来ないこと」を追求するのだと思います。直感で思ったことですが、人間にしか出来ないのは「反省」だと思いました。AIは「言い訳」はするが「反省」はしない(笑)。反省とは、これまでの計算式を全否定して、最初からやりなおすということだと思います。それには「文学」が最適だと思います。自分をかっこよく見せたり、コンプレックスを肯定するためにではなく、根本から考えなおすような文学の登場を感じています。

 次に「交流」です。交流そのものの喜びと同時に、男女の交流のように、そこには、個人と個人を超えた「第三者的なるもの」を産み出します。いわば社会的な交流により、次の時代の新生児としての価値観やライフスタイルを生み出すのだと思います。それは、これまでの知識を与えて近代的自我を完成させる工場のような学校とは違う、新しい教育の場が生まれると思います。

 新しい文学は新しい出版文化を産み、新しい教育は新しいコミュニティを育てると考えています。

(3)『イコール』は儲からない。

『イコール』は近代のビジネスモデルとは少し違っています。まず原価計算と収益計画がめちゃくちゃ(笑)。雑誌を出すためには、編集費やデザイン費というソフト費用と、印刷費や配送費というハード費用があります。ソフト費用については、通常のビジネスの関係ではない友人たちにKitCoinという偽札(笑)で対応しました。ハード費用は、クラウドファンディングで集まった金額で部数を決めるという方式になります。つまり、「儲からないけど、損はしない」というモデルです。でも書く人も作る人も読む人も楽しんでもらえたら最高です。

 インターネットが登場した時、橘川は「インターネットは儲からない」(日経BP社)という本を出しました。これは、別に儲からないことを自慢したり揶揄したりするのではなく、「インターネットは近代を超えた構造なので、近代的ビジネスは成立しない」ということを書きました。実際に儲けているのは、インターネットの中身ではなく、構造を支える現実の側のビジネスです。それはパソコン作ったりサーバーを管理したり、情報を配信したり、コミュニティを管理したりと。インターネットの本質は「シェア」であり「リンク」であり「CGM」であり「発信者負担」など、近代を超えた個人と個人のつながりが最大の価値となっていると思います。

 実は、その本の次に「インターネットでボロ儲け」という本を書きたいと思っていました(笑)。インターネットは未来なので、そこでは近代的ビジネスは成立しないが、未来のノウハウを現実に移せば近代的ビジネスになる、という考え方です。インターネット上の「シェア」という考え方を現実に持ってくれば「シェア書店」というビジネスモデルが考えられる、というような感じです。「インターネット・ビジネスモデル」から「インターネット・モデルビジネス」へという副題も考えたのですが、出ませんでした(笑)。

(4)『イコール』でボロ儲け

 さて、『イコール』は通常の雑誌とは違い、コミュニティ生成型の未来型の雑誌です。この雑誌がビジネスになるかどうかは、やってみないと分かりません。「ロッキング・オン」も最初、こんな感じでビジネスになるとは思わなかったので私は写植屋になりました(笑)。天才経営者が現れればビジネスになるでしょう。

 私は、むしろ『イコール』が未来型のメディア構造であるなら、ここで経験したことや開發したメソッドや、多様な人間関係を、現実社会に提案することで、現実のビジネスが成立すると思っています。イコール・モデルビジネスですね。

 例えばですが、『イコール』では「著者のいる読書会」というのを実施しています。通常の読書会だと、自由に語れると言いながら、本と関係ない持論を語ったり、都合よく誤解した話を語る人がいます。しかし、著者が一緒にいると、勝手なことは話せません。読書会は、自分が読んだ本が自分なりの理解でよいのか不安になっている人にとっては、多様な読み方を教えてくれるので、シェアの時代の読書方法だと思います。こうしたメソッドを、企業に提案して、社内の活性化や問題意識の向上のためのサービスとしてありうるのではないか。

『イコール』は大量販売は出来ないので、通常の広告効果は期待出来ませんが、
企業などと協同することは無数にあります。メディアを使うのではなく、メディアと一緒に次の時代を追求する関係を企業や大学などの既存組織に提案していきたいと思います。

 この辺の動きは、既存ビジネスに強い仲間たちと相談を続けています。関心のある方は、橘川まで連絡を。

(5)『イコール』の展開

 現在の『イコール』は橘川幸夫責任編集です。橘川のワンマンで企画内容や原稿依頼をします。通常の雑誌ではないので(笑)正式な企画の提案は受付ません。友人とメシしながら「こんなことやりたい」と言われれば相談にのります。そのノリを大切にしたい。

 橘川に提案するような企画があれば、ぜひ、自分でやってみることをおすすめします。現在、田原真人くん、久恒啓一さんが、責任編集する『イコール』を準備中です。橘川の『イコール』は年に4回ですが、その間に、他の人の『イコール』が出ます。やがて月刊になり、週刊になっていく増殖イメージです。

 深呼吸学部の塾生は、「ロコール」というミニコミを作りました。やがて「ハコール」「ニコール」と続き、いつか成長したら正式な『イコール』になっていきます。さまざまなテーマで部活を行っていて、調査・研究テーマをまとめて冊子にしたり、『イコール』の記事として採用したりしていきます。

 つまり『イコール』は橘川の作品ではなく、これからの出版活動のムーブメントの雛形を作っていると思っています。

 橘川も来年は後期高齢者。出来るところまで走り抜けますので、今後ともよろしくお願いいたします。

橘川幸夫
『イコール』編集部(info@equal-mag.jp)


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2024年5月、橘川幸夫責任編集の『イコール』が創刊されました。 著者(仲間)と読者(これから仲間に…

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