記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

公共の場のタブーなどから、幾つかの物語を扱う考察


https://note.com/meta13c/n/n7575b6c0826b

この記事の注意点などを記しました。

ご指摘があれば、
@hg1543io5
のツイッターのアカウントでも、よろしくお願いします。
https://twitter.com/search?lang=ja&q=hg1543io5




注意

これらの物語の重要な展開、及び様々なタブーに触れるための不快とも取れる説明があります。ご注意ください。

漫画

『キミのお金はどこに消えるのか』
『キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編』
『がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか』
『マンガで分かる心療内科』
『実はヤバい実験心理学』
『中国嫁日記』
『築地魚河岸三代目』
『不便ですてきな江戸の町』
『JIN-仁-』
『銀平飯科帳』
『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』

小説

『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』(web原作,書籍)
『マン・トラップ』(梅原克文)
『家に棲むもの』(小林泰三)
『玩具修理者』
『ウルトラマンF』
『二重螺旋の悪魔』
『テュポーンの楽園』

実写映画

『ALWAYS 三丁目の夕日』

はじめに

 私は職場などの公共の場において、政治や法律、貨幣や経済、性や生物学的な事情、宗教や趣味や友人関係やスポーツの4種類に、主に分けられるタブーがあると考えています。
 今回はそれらから、幾つかの物語を分類してみようと思い至りました。

『キミのお金はどこに消えるのか』、『マンガで分かる心療内科』、『実はヤバい実験心理学』の相互補完

 井上純一さんの漫画『中国嫁日記』では、国際的な結婚生活の中で、性、宗教、政治、貨幣のタブーにそれぞれ切り込むところがみられます。
 その井上さんの経済漫画『キミのお金はどこに消えるのか』などでは、消費増税や、円を増やさないなどの政治への強い不満がみられますが、『資本論』や『人口論』を扱いつつ、その宗教や性の問題に触れないようにしています。
 一方『マンガで分かる心療内科』シリーズでは、心療内科として性依存症やEDの問題を扱い、性のタブーには触れています。また、ニーチェの哲学やマインドフルネスの問題について、キリスト教や仏教にも触れています。
 しかし、政治や経済の問題には、触れているようで、その法律や税金への不満などが少なく、政治家や経営者などの社会的強者を縛る姿勢が『キミのお金はどこに消えるのか』に比べて弱い印象があります。
 日本とギリシャの夫婦の性生活の扱いの統計を比較して、「どっちも不況だから、景気と性は必ずしも関係はないのではないか」という指摘はみられますが。
 一方私がさらに気にしているのは、『実はヤバい実験心理学』です。
 こちらでは、人間心理を実験で調べるときに、かなり統計や数字を重視していますが、『マンガで分かる心療内科』と異なり、軍人による殺害行為、低賃金の労働が受け入れられる心理などの政治的な問題にも深く触れています。性の問題は共通して扱っていますが。
 しかし、実験科学を重視するためか、「日本人だけが空気を読むわけではない」など、国民の文化などのイメージと実験結果が必ずしも一致しないという記述で、いわゆる言霊による無言の美徳などの、宗教的なものにはあまり触れていません。
 政治と経済ならば『キミのお金はどこに消えるのか』シリーズ、性と宗教ならば『マンガで分かる心療内科』シリーズ、性と政治と経済ならば『実はヤバい実験心理学』の記述を参考にすべきかもしれません。

『ギフト無限ガチャ』の主人公に発生してしまっている可能性のある「敵との共通点」

 『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』(以下『ギフト無限ガチャ』)では、種族差別に反対する、弱小種族のヒューマンから強くなったライトが世界の変革や復讐を図ります。
 しかしライトは、復讐のためでも、復讐対象と同じ「裏切り」をしないことへの強い個人的な感情があり、自分に忠誠を誓うカードのヒューマンでも、仲間を特に大事にします。
 けれども、現在漫画化している、ドワーフのナーノへの復讐で、部分的にライトが相手と同じことをしていないか、という可能性に気付きました。「負担のかかる危険な武器を使う」ことです。
 ナーノは金銭よりも研究にこだわるドワーフ種らしいところがありますが、ドワーフ国王などと異なりヒューマンへの差別が強く、強い武器を作る目標のために、ヒューマンの体を材料とした呪いの武器製造に着手しました。この呪いの武器は、本人の精神を蝕む、周りを当たり構わず攻撃する可能性があるなどで、ヒューマン差別に関係なく他の種族が法律で厳しく禁じています。
 それでweb原作では通り魔までしており、ライトだけでなくドワーフ種からも敵視されて当然なのですが、ここでライトに問題がふりかかります。
 ライトの持つ最強の武器である「神葬グングニール」も、使う度に本人の腕などに負担がかかり長時間使えず、現時点でのweb原作の途中では、力の解放の程度によっては一度腕を切断して再生するほどの侵食があります。
 ライトに普段忠誠を誓い、ライトも望まないほど褒めているエリーですら、この使用は「いけません」と警告することがあります。しかしそれはライト自身への負担だけなのか、周りの味方や無関係な種族への危険も含むのかが、エリーの性格から曖昧になります。
 「呪い」の定義が曖昧で、ライトの詳細が他の種族やヒューマン王国の法律で裁かれないので、ライト自身も呪いの武器を使っているのではないか、その点だけはナーノと同じなのではないか、という疑いを考えています。
 web原作後半の攻撃や、書籍版や漫画版のソウルドラゴンはともかく、最初に使ったエルフ種相手には「オーバーキル」と認めており、それは呪いをみだりに使った可能性があります。
 ドワーフ種はヒューマン以外で、現時点でかなりまともに描かれているので、皮肉にもその中の悪役のナーノの自分の身を軽んじる行いは、ライトにも近いのかもしれません。
 ちなみに、「召喚」の定義も本作で少し曖昧で、ライトは自分の能力のカードから召喚したヒューマンを仲間とみなすものの、エリーのカシマール・サモンという特殊な召喚で暴れるだけのモンスターを倒して強くなることには「召喚しておいて倒すのか?」と疑問を呈しています。「呪い」の定義次第では、グングニールとナーノの武器にも通じるかもしれません。

『築地魚河岸三代目』へのアンチテーゼ

 生物学的なタブーとして、私は性と排泄の問題があると考えており、そこから比較したい作品があります。
 『ギフト無限ガチャ』と繋げれば、「主人公へのアンチテーゼ」とも言えるかもしれません。

 『築地魚河岸三代目』原作では、築地の魚問屋である仲卸に、銀行員から転職した主人公の赤木旬太郎が、味覚や経営の知識なども踏まえて仕事に取り組んでいます。
 いわゆる「江戸っ子の人情」などにも触れられ、「心意気」で無理な注文なども受け入れる仲卸の熱意や技術が重視されます。
 しかし、これへのアンチテーゼとも取れるのが、同じ作画者による『不便ですてきな江戸の町』です。
 江戸の長屋は汲み取り便所で不潔だった、病気になると保障もない、性病も蔓延していた、小学生の年齢の子供すら働いていたなど、「江戸っ子」の食文化などを扱っていた『築地魚河岸三代目』ではとうてい描けないような問題に直視しています。食欲がなくなるような描写も多いためか、逆に『不便ですてきな江戸の町』では食事の描写はあまりありません。
 特に、『魚河岸三代目』でもっとも「江戸っ子」然とした雅(まさ)に似た容姿の、『不便ですてきな江戸の町』の本物の江戸の人間が、打算的なところもあり、さらに短時間で病死してその娘が借金で苦しい生活をするのは、皮肉なところがあります。
 元々医療からはじまる『JIN-仁-』原作ならば、性や排泄の問題を扱っても落差が少なく、医学のための新しい食事の描写も重要だと分かりますが。
 このもとになったらしい書籍『本当はブラックな江戸時代』では、「現代日本から江戸にタイムスリップして刺身や寿司を食べれば、味に満足するかはともかく必ず下痢になるだろう」とあります。
 『銀平飯科帳』なども、かなり「幻想」の要素があるのかもしれません。
 識字率、リサイクル、武士の強さなど、かなり多くの江戸のイメージが幻想だったと、『本当はブラックな江戸時代』にはあります。
 私は江戸時代のリサイクルなども、環境問題において参考にしたかったので、これに触れて、かなり考えさせられました。
 

『築地魚河岸三代目』と『ALWAYS 三丁目の夕日』

 宇野常寛さんは、『ゼロ年代の想像力』で、『ALWAYS 三丁目の夕日』の高度成長期の「貧しくても幸せだった」というような描写を「当時の貧困や抑圧を覆い隠した薄ら寒いユートピア」と表現しています。それを批判する「悪役」の会社社長の方が正しいという趣旨の主張もあります。
 その意味で、「江戸っ子」の「人情」を扱う『魚河岸三代目』も、劇中の前半から登場する女子高生が卒業していないことから2、3年しか劇中で経過していないはずの描写で季節の魚や時事問題を扱う難しさ、従業員の結婚や出産の問題が多く描かれない、病気の人間が比較的簡単に治るなど、現実のうち不景気や環境問題は扱っても、少子高齢化や老化や病気や性の問題は「覆い隠したユートピア」かもしれません。

小林泰三作品と梅原克文作品

 ちなみに、私がこのnoteや小説を書こうと思い立ったきっかけは、梅原克文さんと小林泰三さんの小説に、自分に響くものを感じたためなのですが、両名の小説は、科学をもとにしたホラーという点では共通して、『憑き者』という短編集で取り上げられています。
 しかし、小林さんと梅原さんの差異として、『不便ですてきな江戸の町』にも通じる、性と排泄の問題の有無があります。
 小林さんは『玩具修理者』にはじまり、グロテスクな描写に排泄の描写が強く示されます。『ウルトラマンF』では、さすがに特撮をもとにするためか、グロテスクでも排泄には触れられないのですが。
 しかし梅原さんの場合は、グロテスクでも、なるべく排泄の問題が避けられているようです。負傷した人間の入院生活や、負傷して再生する技術などの描写が『二重螺旋の悪魔』にはありますが、その辺りは曖昧です。また、『テュポーンの楽園』では、動物の器官のうち、皮膚が脳や神経に近い機能を持つという実在の学説が重要になり、垢が剥がれ落ちるなどの生々しい描写はあります。しかし、実は皮膚は現実の書籍で「第三の脳」と呼ばれており、「第二の脳」である腸については、『テュポーンの楽園』では触れられませんでした。この作品で人間の手首や首が切断されるというような残酷さはありますが、排泄の問題は避けられているのです。
 これが梅原さんと小林さんの差異だとも言えます。
 

ファンタジー世界の扱い

 なお、『ギフト無限ガチャ』では、種族差別をもとにして、残酷な死も描かれますが、主人公のライトがまだ15歳(身体的には12歳)なので性の問題などにはあまり触れられません。
 しかし、排泄の最中に仲間を殺されるヒューマン、その犯人と同じエルフ種が主人公達によりヒューマンの奴隷を解放されて汚物処理が出来ず不潔な街に苦しむことになるなど、多少はファンタジー世界の過酷さも描かれています。
 ファンタジー世界での、性や排泄の問題も、生物学的なタブーとして重要かもしれません。

まとめ

 今回は予想外にまとまったようです。特に生物学的なタブーは、多くの物語で複雑に絡み合うようです。

参考にした物語

漫画

井上純一/著,飯田泰之/監修,2018,『キミのお金はどこに消えるのか』,KADOKAWA
井上純一/著,アル・シャード/企画協力,2019,『キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編』,KADOKAWA
井上純一(著),アル・シャード(監修),2021,『がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか』,KADOKAWA
ゆうきゆう(原作),ソウ(作画),2010-(発行期間,未完),『マンガで分かる心療内科』,少年画報社(出版社)
鍋島雅治/九和かずと(原作),はしもとみつお(作画),2000-2013(発表期間),『築地魚河岸三代目』,小学館(出版社)
井上純一,2015-(未完),『中国嫁日記』,KADOKAWA
作画/大前貴史,原作/明鏡シスイ,キャラクター原案/tef,2021-(未完),『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』,講談社
もぐら,2022,『実はヤバい実験心理学』,竹書房
村上もとか,2001-2010(発行期間),『JIN-仁-』,集英社(出版社)
永井義男(原作),はしもとみつお(作画),2023-(未完),『不便ですてきな江戸の町』,リイド社
河合単,2015-(未完),『銀平飯科帳』,小学館

小説

大多和伴彦/編,服部まゆみほか(著),2000,『憑き者』,東京アスキー(『マン・トラップ』、『家に棲むもの』)
小林泰三,1999,『玩具修理者』,角川ホラー文庫
小林泰三,2018,『ウルトラマンF』,ハヤカワ書房
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(上)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(下)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 上』,朝日ソノラマ
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 下』,朝日ソノラマ
梅原克文,2018,『テュポーンの楽園』,KADOKAWA
明鏡シスイ,『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』,小説家になろう(掲載サイト)
https://ncode.syosetu.com/n9584gd/
2023年7月30日閲覧
明鏡シスイ,tef,2021-(未完),『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』,ホビージャパン

実写映画

西岸良平(原作),山崎貴(監督),山崎貴ほか(脚本),2005,『ALWAYS 三丁目の夕日』,東宝

参考文献

宇野常寛,2011,『ゼロ年代の想像力』,ハヤカワ書房
永井義男,2019,『本当はブラックな江戸時代』,朝日新聞出版
傳田光洋,2007,『第三の脳 皮膚から考える命、こころ、世界』,朝日新聞社

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?