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探偵になるまでの2,3のこと

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小学六年生の三加茂良真(みかもりょうま)の父・重彦が失踪。 重彦は、職場で問題行動をとっていた部下の豊田久巳とトラブルがあったという。 折しも、豊田久巳からストーキング被害を受け…
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記事一覧

探偵になるまでの2,3のこと ㉒

 先生たちが帰っても、母さんはまだ怒っていた。 「内気そうにしていて、あの畑中先生ってひ…

渡瀬水葉
1か月前
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探偵になるまでの2,3のこと ㉑

 ネットでのあおりがなくなり、『森部五色村ストーカー殺人事件』の三加茂重彦犯人説は消えて…

渡瀬水葉
1か月前
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探偵になるまでの2,3のこと ⑳

「永沢光江は死んだ母親の家や土地を売ってお金を独り占めしていたって聞いています」 宮本定…

渡瀬水葉
1か月前

探偵になるまでの2,3のこと ⑲ 

母さんが意識を取り戻した。白いベッドの上で手を伸ばし、ぼくの手に重ねた。 「よかった、無…

渡瀬水葉
1か月前
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探偵になるまでの2,3のこと ⑱

五 アンゴウ  子供たちが、一言の別辞を父に語ろうと祈っているその一念が、暗号の紙にこ…

渡瀬水葉
1か月前
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探偵になるまでの2,3のこと ⑰

「は! そうよねッ。あたしもどうかしてたわッ。このガキ、メメラン・チャンネルってさっき言…

渡瀬水葉
1か月前

探偵になるまでの2,3のこと ⑯

 ぼくの家族。ぼく自身をしんどい目に合わせた『敵』が憎い。カッターをサッと動かしてやりたい。どんなに憎んでいるのかを思い知らせてやりたい。 だけど、いまそんなことをすれば母さんはどうなる?  ハンドルを切り、右へ左へ車線を変更しながら黒田圭子を名乗っていた永沢光江が笑い出した。 のどをのけぞらせたヒステリックな笑いで、聞いているだけでイラついた。思わずのどにカッターを突っ込んでやりたくなる。外はどしゃぶりで、ひっきりなしに雷鳴が空を切り裂いている。たった一つの頼みの綱が

探偵になるまでの2,3のこと ⑮

やがて大きな銀行の建物やオフィスビルが建ち並んでいる通りへ出た。陸橋の上を走ると、海岸に…

渡瀬水葉
1か月前
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探偵になるまでの2,3のこと ⑭

四 イノチガケ 人にまことがないほどの恥辱がありませうか                …

渡瀬水葉
1か月前
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探偵になるまでの2,3のこと ⑬

ぼくは自分の傘を拾い上げた。 「じゃあ、緑川さんも帰った方がいいよ」 「……そうね」  …

渡瀬水葉
1か月前

探偵になるまでの2,3のこと ⑫

 ランドセルを背負って玄関を出て傘を差した。路地を渡って右に折れたとき 「おい……」  …

渡瀬水葉
1か月前
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探偵になるまでの2,3のこと ⑪

「わたしの家、良真くんチとは反対方角だよね。それに小学校とは一キロと離れてないの。でも、…

渡瀬水葉
1か月前
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探偵になるまでの2,3のこと ⑩

三 犯人 若い者のあほらしい色恋も、ばかにならぬと思い知る。             …

渡瀬水葉
1か月前
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探偵になるまでの2,3のこと ⑨

あまりに唐突だったせいで、背筋がびくっと震えた。ぼくも母さんも、思わず顔を見合わせた。 警察や勤務先の病院からであれば、母さんのスマートフォンにかけてくるだろう。ほとんど固定電話は使っていない。すぐ留守番電話に切り替わるように設定されている。 それでもスマートフォンを与えられていないぼくにとって、この白い固定電話は重要な連絡アイテムだ。以前は友だちとよくおしゃべりしたものだ。でもいまは、友だちがぼくに電話してくるとは思えない。 「きっとリフォームとかの電話だよ。もしくは