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やってみてわかったオンラインインタビューの利点と欠点

こんにちは、Rettyで分析チームに所属している飯田(@i_dayu_to)です!

Rettyでは今年に入り、以前までメインでしてきた定量分析だけでなく、定性分析にも力を入れ始めています。定量分析が得意とする、目に見える行動の足跡(ログ)だけではわからない、その行動を起こした背景を知る上では、ユーザーさんの価値観や考えなどの定性情報を得る必要があります。それらを得るための手法として、Rettyではユーザーインタビューを実施しています。Rettyが定性分析を取り入れた背景や方法について気になる方は、是非以下の記事をご覧ください!

新型コロナウイルスの影響により、Rettyではこれまで対面で行なってきたユーザーインタビューをオンラインへ移行しました。始めて3ヶ月弱とまだまだ日は浅いですが、少しずつオンラインとオフラインでの性質の違いが見えてきました。

本記事では、オンラインインタビューの利点と欠点をそれぞれ3点ずつお伝えしたいと思います。主にオンラインインタビュー実施時のことについて触れるため、実施以前の目的や質問の設計について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

Rettyでのオンラインインタビューの進め方

利点や難点をお伝えする前に、Rettyでのオンラインインタビューの進め方について簡単にご紹介します。

① リクルーティング
まず、アンケート等で得た情報を元に、インタビュー対象者をサンプリングします。その後サンプリングした方々へ連絡をし、インタビュー日程の調整をして当日を迎えます。

② インタビュー実施

インタビューへは事前の共有したビデオ通話用のURLからご参加いただきます。RettyではZoomやWherebyを活用することが多いです。合意が取れればお互い顔を出してインタビューを行います。インタビュー時間は60分で行うことがほとんどです。

③ インタビュー内容のまとめ

各インタビューが終わった直後に約30分の時間を取り、プロジェクトメンバー同士で話し合い、どんな特徴を持つ方だったのかを言語化しておきます。インタビュー情報などの一次情報は新鮮さが命です。もちろんインタビューの様子は録画や録音などで記録しておくことは可能です。しかし、この時だから思いつくこともあります。時間が経つと情報が削ぎ落ちてしまう危険性があるので、このような時間を毎回とっておくのがベターです。

④ インタビュー分析
目標とするインタビューのサンプル数が集まってきた段階で、KA法などを用いてインタビューで得た内容を知見化していきます。このステップについてはまたの機会に詳しく書きたいと思います。

以上が大まかなインタビューの1サイクルとなります。ここからは、実際にオンラインインタビューを行うことでわかった利点と欠点について述べていきます。

利点①:地理的制約を受けづらい

まず大きな利点として挙げられるのが、どこに住んでいる方であってもインタビュー対象になる点です。オフラインを前提にしたインタビューの場合、コスト等を踏まえるとインタビュー対象者のサンプリングの時点で、実施場所近くに限定しがちです。しかし、住んでいる場所によって生活環境や習慣は異なり、得られる情報も変わってくるため、無闇に限定したくありません。

Rettyが対象とする外食産業では、地理的要因を大きく受けやすいです。都心に比べて飲食店が少ない地方では、お店と消費者との距離が近かったり、移動手段が違ったりするなど、そもそも外食に対しての捉え方や利用習慣が異なる可能性があります。

インタビューの目的に立ち返ったときに、都心部だけでなく地方のユーザーさんからもお話を伺いたいケースでは、こうした地理的制約を受けづらいことは大きなメリットと言えます。

利点②:リラックスした状態を作りやすい

インタビュイーは、基本的にご自宅から参加されます。当初不慣れなオンライン形式でのインタビューだと、インタビュイーが過度に緊張してしまうのではと不安でした。しかしそれ以上に慣れた環境であることが大きく、比較的リラックスした状態でご回答いただけることがわかりました。緊張した状態よりもリラックスした状態の方が、考えていることをありのままに話していただけるメリットがあります。

自宅でのインタビューで不安な点としては、通信環境でのトラブルが挙げられます。Rettyでは今のところ30名ほどオンラインでインタビューを実施していますが、それほど大きなトラブルになったことはありません。オンライン通話ツールの高度化や、在宅勤務の広がりによってオンライン会議などが一般的になる中で、社会全体としてオンライン通話への慣れが促進されてきているのかもしれません。

利点③:普段の生活情報を得やすい

上でも述べたように、インタビュイーはご自宅でインタビューを受けられる方がほとんどです。そのため、質問で聞く内容だけでなく、ビデオに映るお部屋の様子からも、生活環境に関する様々な情報を得ることができます。住んでいる環境や所有しているものは、その人の価値観が反映されやすいです。もちろんオフラインでも所有しているものや服装などの情報を得られますが、オンラインではオフモードの情報を得やすくなります。

そうした情報があることにより、その方がどんなことを大切にしているのか、普段どんなことを考えながら過ごしているのかなど、想像を膨らませながらインタビューができます。こうした情報を得られるのは、オンラインならではの利点だと言えます。


このように、オンラインでのユーザーインタビューでは、広く対象者を集められ、オフラインでは難しいリラックス状態を実現できたり、得られる情報の種類を広げられる利点があります。

<オンラインインタビューの利点まとめ>
① 地理的制約を受けづらい
② リラックスした状態を作りやすい
③ 普段の生活情報を得やすい

ここからは、オンラインでは難しい点について3点述べていきます。

欠点①:インタビュイー自身から得られる視覚情報が減る

先ほどの利点では、得られる情報が増えるとお伝えしましたが、それはあくまで生活環境に関する情報です。ここでは、質問にご回答されるインタビュイー自身から得られる情報を対象としています。

ユーザーインタビューを行う中では、インタビュイーが話す内容だけでなく、表情や仕草などの視覚情報も参考にしながら、その方が本当に思っていること、考えていることは何かに迫っていきます。しかし、オンラインでのユーザーインタビューでは、二次元の四角い枠の中に視覚情報が限定されてしまいます。このような制約上、表情を捉えづらかったり、手元や足下の動きなどのちょっとした動きに気付きにくくなってしまいます。

これによる弊害の一つに、インタビューの発言を誘導してしまっていないかを確認しづらい点が挙げられます。当たり前ですが、インタビューはインタビューを受ける側の思考を探っていく時間であって、インタビューする側の言って欲しいことを言わせる場ではありません。しかし、インタビューで情報を得ながら自分の頭の中で仮説を立てようとしすぎてしまうと、誘導尋問をしやすくなってしまいます(僕自身この課題にはかなり苦労していて絶賛改善中です...)。

質問の仕方を変えることで誘導を回避できることもありますが、誘導していないかどうかを確認するためには、インタビューを受ける方の表情を見るのが一番だと思っています。自分が思っていないことや納得していないことに対して、快く「Yes」と答える方はほぼいないため、そのような場合に表情に現れやすいからです。このように、視覚的情報が減ってしまうと、インタビュイーが考えていることを把握しづらくしてしまうことにつながります。

欠点②:インタビュー以外の余白の時間が減る

オフラインでの対面インタビューの際には、会議室へ向かう際などのインタビュー時間以外にもインタビュイーとコミュニケーションをとる機会があります。それに、そうした時間にはインタビューをされないことが明確な状態です。

オンラインでのインタビューでは、接続が完了した時点で形としてはすぐにインタビューを開始できる状態になります。そのため、雑談を行う機会が比較的作りづらく、もしかしたらいきなりインタビューが始まるのではという不安をインタビュイーの方が持ってしまい、必要以上に緊張してしまう可能性もあります。もちろんオンラインでも最初に雑談を取ることは可能ですが、この不安や緊張をどこまで軽減できているのか難しさを感じています。

欠点③:インタビュイーの気が散る可能性が上がる

利点②③では、ご自宅でインタビューを受けていただくメリットを中心にお伝えしましたが、逆に難しいと感じることもあります。インタビュイーの気が散る可能性が上がることです。オフィスなどでのオフライン開催とは違い、オンラインではインタビュイー側の環境をこちら側がコントロールできません。そのため、想定外の様々なことがインタビューを阻害する要因となります。

具体的なエピソードとして、質問を投げかけている最中にインタビュイーの飼われている猫が画面の目の前を横切ってしまったことがありました。どうにかしようと思っても、どうにかできることではないですよね。w その時には一度質問を中断して、再度質問を最初からお伝えすることになりました。一度中断されてしまうと、思考も中断してしまうので、インタビューへ気持ちが入らなくなってしまう可能性があります。

もちろんこうしたケースは頻繁に起こることではないですし、自宅でのインタビューだからこそ得られる情報(ご自宅の様子など)もあります。ただ、集中を阻害する要因が増えてしまうというのは事実なので、そこは難しい点だなと思います。


以上みてきたように、オンラインだとどうしても削ぎ落ちてしまう情報があります。また、インタビューの雰囲気作りや環境のコントロールなどの難易度も上がってしまいます。

<オンラインインタビューの欠点まとめ>
① インタビュイー自身から得られる視覚情報が減る
② インタビュー以外の余白の時間が減る
③ インタビュイーの気が散る可能性が上がる

最後に

冒頭で述べたように、Rettyでは今年からインタビューなどを本格的に進めてきましたが、始めた当初はプロジェクト主要メンバー数人のみの参加がほとんどでした。しかし最近では毎回10人を超えるメンバーが遠隔で一緒に聞いています。一次情報と二次情報とでは、考えを膨らませられる余地が大きく違います。常にメンバーそれぞれが最終的に価値を届けるユーザーさんへの解像度を上げた状態を作っていきたいと思っています。

最後にはなりますが、ここまでRettyとしても個人としても定性分析への理解を深められたのは、インタビュー設計や実施内容へのフィードバックをしてくださるなどたくさんご協力いただいた松園さんのおかげです。まだまだ始めて日も浅く課題ばかりですが、少しでも成長した姿をお見せできるように、これからも頑張っていきたいと思います。

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