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永久少年と妖怪姫 地底の大怨霊編

僕はメル、最近妖怪と暮らすのが楽しくなってきた不老不死の高校生。いやー、慣れって恐ろしいよね。最初は見ただけでビビってたのに…今は普通に仲良く話してるんだもの。まあ、そんなことはいいとして…
今日はサラがこの妖怪の里の変わったところを紹介してくれるという。
「この妖怪の里にはあまり妖怪が近づかない、怪しげな場所がいっぱいあるのよね。」
以前にそう言われた僕は、逆に興味が湧いてきた。
「妖怪があまり近づかない…ってことはあまり手入れがされてないところってことだよね?」
「ええ、そうよ。中には危険区域に指定されてるものもあるからうっかり迷い込んじゃったらダメだしね、そこら辺は危ないって分かっておけば近づくこともないし。あ、あと、そこに水竜刀持ってきてね、危ないから。」
ということで、僕はサラと一緒にそこに行くことになった。
目的地に向かって歩いていると、
「…あれ?サラ、普通に歩いてるじゃん、どうして?」
サラが以前みたいにフワフワ浮かずに、しっかりと地に足をつけて歩いていたのだ。
「ああ、これ?長老に治してもらったのよ。あれは呪いみたいなものがかかってただけだから。」
「なんでも出来るね、長老は…。」
長老の凄さに少し感心しながら話していると、
「着いたわ、ここよ。」
サラが不意に足を止めた。
「ここが…。」
妖怪の里の外れにある大きい建物、これ全体が危険区域に指定されていると言う。
「なんでこの建物は危険区域になったの?」
「それは中に入れば分かるはずよ、さあ、入るわよ。」
僕はサラに促され、重い木製の扉を開けた。
ギィィィィィ…
軋む音を立てて、開いたドアの先は何やら禍々しい雰囲気だった。
「うっ…ゴホッゴホッ…さすがに手入れされてないだけあって、ホコリが凄いね…。」
「ええ、そうね…。」
僕らは舞い散るホコリに気をつけながら、奥へと進んでいった。
しばらくして、
「ねえ、さっき水竜刀が必要って言ってたけどどうして一一」
と話しかけた瞬間、
シャァァァァァ!
横からいきなり大蛇が飛び出してきた!
「こんな所に大蛇がいるのか!?」
「ええ、そうなの!それが水竜刀を持ってくるように行った理由!」
まさか、こんな大物がいるなんて!
しかし、体はでかいが、動きは単純。
「はぁっ!」
蛇眼を的確に突いてやった。
キシャァァァァァ!
蛇は眼を失った苦しみで暴れ始め、辺り構わず、物を壊し始めた。
「やばいっ!それは…」
その時、衝撃により、棚から花瓶が落ちてきて、
パリィィィィン!
シャァァァァァ…
大蛇は倒れてしまった。
「な、なんか、あっけない最後だったね…。」
「そうね、ふー…メルがいてよかったわ…私たちはこの大蛇に手を焼いてたの。いつの間にかここがこいつの住処になってたっぽいのよね…。」
それはなんと迷惑な話だ。
「ふー…とりあえずこれでここは終わり?」
「いや、まだよ。この建物は地下があってね、そこの最深部もかなりやばいらしいわ。」
「わかった、じゃあ行こうか。」
そうして、僕たちはその建物のエレベーターを使って地底へと降りていった。
「こ、こんな妖怪の里に、エレベーターなんてあったんだね…」
「里の者が時々調査に来てるからね、それ用よ。」
人間の現代の技術が使われてることに驚いていた間に最深部まで着いた。
「さあ、着いたわ。先に言っとくわね。…ここは間欠泉が大量にあるの。どれも100~120℃の熱湯を噴き出すものがね。」
「え!それってかなりやばいんじゃ…?」
「そう、だからこその危険区域よ。」
(そもそも、建物自体禁止だったらここには来ないんじゃ…)
そんなことを思いつつ、周りを調査してみたが、特に変わったところはない。
「ここの間欠泉にはある一定の周期で一斉に噴き出すから注意してね。」
「わ、分かった…。」
そう言っていた矢先、
ブシャァァァァァ!
「う、うわー!」
最悪なことが起きてしまった!
「ふー、あ、危なかった…って、サラ!?」
なんと間欠泉の真横にサラがいたんだ!
「あ、ああ…!」
サラは恐怖で足が動いていない!
「くそっ!」
僕は一目散に駆け出した。
「うおおおおお!間に合えぇぇえええ!」
そう叫んだと同時に、間欠泉の水は地面に一斉に降りかかる!
ジャァァァァ!

「ふう…な、何とか間に合った…」
何とか、僕はサラの救出に間に合い、助け出すことが出来た。
「危ないところだった…って、サラ?」
気がつくと、サラは、泣いていた。
「う…うわぁぁぁん!怖かった!怖かったよぉぉ!」
そう泣きじゃくりながら、サラは僕に抱きついてきた。
「ちょちょ、サラ、危ないって!?どこでも抱きつくのはやめようよ!?」
何とか僕はサラを引き剥がし、安全な所へ逃げた。
「こ、怖くて足がすくんじゃってたの…本当にごめんなさい…」
「いやいや、いいよ…助かったんだしさ、それにしても良かったよ…サラに実体があって…ほんとに長老には感謝しかないな…」
僕は心の中で長老に感謝しながらサラを慰めていた。と、その時、
オォォォォン…
不気味な声が聞こえたんだ。
「何だこの声…?」
オォォォォン…
この嫌な予感がする声はだんだんこっちに近づいてくる。
「何かやばそうだな…」
そう思い、サラと一緒に逃げようとした時、
オォォォォン!
「こ、これは!?」
なんと、数十匹の怨霊がこちらに襲いかかってきた!
「ふっ!ていっ!とりゃあ!」
幸い、一匹の強さはそこまでだ。冷静に対処すれば問題ない。
「はあっ!」
サラもここぞとばかりに魔法で十匹程、怨霊を氷漬けにしていた。
「ふふん、どうよ!」
「サラ、ナイス!おりゃあ!」
そうして、僕は最後の一匹を斬り倒した。
「ふー…恐らく、サラの声に反応したんだろうね…
いやー、よかった。…サラ?」
振り返ると、サラは訝しむような表情をしていた。
「おかしいわ…怨霊は普段まとまって行動せずに、自由気ままにフワフワ飛んでるはず…それが集団を作り、襲いかかってきたってことは…何者かが怨霊たちを指揮してるんじゃないかしら…?」
と、その時、
「!!」
不意に殺気を感じ、その場を飛び退いた直後、
ブォンっ!
巨大な鎌がさっきまで僕がいた空間を斬った!
「誰だ!」
ウォォォォォ!
そこには、その問いかけに応じるように、こちらを威嚇してくる大怨霊の姿が!しかも、
「くそっ!ほぼ体が透けて見えない!どこに体があるんだ!?」
大怨霊だからか、体がほとんどなく、目だけ光っているのだ。これでは刀の狙いが定まらない。
ウォォォォォ!
そうボヤいている瞬間に、大怨霊は距離を詰めてくる!
「うっ!くそっ!」
何とか巨大鎌を躱しつつ、
「ふっ!」
キンっ!
大怨霊に刀を振り下ろした。一応実体はあるようだ。
「しかし、どうすれば分かりやすくなる…?このままではこっちがやられてしまうぞ!……そうだ!サラ!」
「何!?」
「確か、サラって辺りを暗くする魔法、使えたよな!それ、やってくれないか!」
「え、ええ!闇よ、この世界を黒に染めろ!」
そうサラが魔法を唱えると、当たりが真っ暗になった。
「やはりそうか…!」
僕の読み通りだ。
案の定、大怨霊は僕らの姿が見えなくなって、混乱してる。しかし、ずっと光っている目は大怨霊の居場所を教えてくれているから、こっちからはバレバレだ。
「サラ、そのままずっと魔法をかけといてくれ!」
そう言った瞬間、
ブォンっ!
鎌が振り下ろされるが、
「そんな攻撃、当たるかっての!」
俺は避けながら刀の力を解放した。
「水竜刀よ、水のように流れろ!!」
僕は流れるような動きで一瞬で大怨霊との距離を詰め、
「はああっっ!」
ザシュッ!
ウォォォォォン!
そのまま、一刀を振り下ろした。
いつの間にかサラの魔法は消え、辺りの禍々しい雰囲気は無くなっていた。
「やったわ!今回もナイスね!メル!」
「ああ、良かったよ!」
僕達はハイタッチして、撃退できた喜びを分かちあった。
地上に戻ると、すっかり夜明けの時間になっていた。
「こりゃあ、寝たら昼に起きちゃうかなぁ…」
「まあ、今日はゆっくり寝ましょ…人間界とここは時間軸が違うから大丈夫よ。」
「それもそうだね。よし、せっかくだから日の出でも見て帰ろうか。」
「久しぶりね、日の出を見るなんて。」
「よし、狐竜山の上まで競走だ!」
「あ、待ってよー!」
僕らはそんな会話をしながら、駆け出したのだった。


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